「ゴジラ−1.0」の絶賛しない感想 | 文化の海をのろのろと進む

文化の海をのろのろと進む

本、映画、演劇、美術、音楽など、ジャンルを越えて扱う雑食文化系ブログです。更新はマイペースです。雑誌を読む様な気持ちで楽しんで頂ければ幸いです。

 ご訪問ありがとうございます。

 

 うしずのです。

 

 今回は「ゴジラ−1.0」の感想を書かせて頂きます。なるべくネタバレの無い様に書きますが、先入観無しに観たい方は読むのは控えて下さい。

 知り合いの友人のゴジラファンが絶賛していたと聞き、また他の知り合い(特撮ファン)からおすすめされ、期待を胸に映画館に行きました。期待し過ぎたせいかも知れませんが正直絶賛する程では無かったかと。もちろん良かった点も書きます。



端折り過ぎの人間ドラマ

 主人公の浩一と、赤の他人の赤ん坊を連れた典子が出会い、一緒に暮らし始めるのですが、何故赤ん坊と典子を受け入れたのか理由が描かれないままなんとなく共同生活が始まるのがモヤモヤしました。

 典子は出会った時は言葉づかいも荒く、生き抜くために闇市で売っている食べ物を盗むなど、ガラの悪い、良く言えばたくましい少女でした。それが浩一と暮らし始めると、浩一に対して敬語で話しだし良妻賢母の様なキャラクターになっていました。やがて銀座で働き始めるとお洒落で自立した女性へと変貌を遂げます。

 これは昭和を生きる女性(一部)のライフスタイルの変容を象徴的に表したともとれるでしょうし、戦争を引きずり続ける主人公との対比としての表現かも知れませんが、一人の人間として見るとキャラクターがコロコロ変わり過ぎで何だこりゃとなってしまいます。

 人間は変化するものなので、それはいいのですが、変化のきっかけとか過程が描かれず、いきなり変化だけ見せられるから唐突感は否めませんでした。



ベタ過ぎるクライマックス

 クライマックスは観客をエンターテインメントしたいというよりは、エンターテインメントってこういうのでいいんだろの盛り合わせ。心の籠もっていない、レシピ通りに作られた料理をワンプレートに詰め込んで出された感じでした。ベタな展開のてんこ盛りで先が読めてしまいました。



良かった点

 命を大事にというメッセージ、そして自己犠牲を美化しない点が良かったです。

 ゴジラの見せ方が巧くて観ていて怖かったです。洋上に顔を出し、船を追いかけるシーンは特に凄かったです。

 ゴジラが銀座に現れた時、ビルの屋上から実況中継したリポーター役の役者さん、口調が昭和のアナウンサーらしくて良かったです。

 堀田辰雄役の役者さん、昭和を生きる大物の貫禄がありました。

 主人公がいい奴じゃないのが、必ずしもゴジラが悪で人間が正義という訳では無い事を表わしていて良かったと思います。



総評

 これは「ゴジラ映画」というジャンルで、ゴジラが怖くて強くてカッコ良ければいいと割り切って観れば充分合格点の映画なのかも知れません。比較して申し訳無いけど、政治家が会議をダラダラやってばかりの「シン・ゴジラ」よりは、はるかに楽しめました。

 しかしバランスが良い作品とは言えないと私は思います。作家性もエンターテインメント性も中途半端な印象でした。

 

 

 

 

 

 最後まで読んで下さり、ありがとうございました。