小説「遠ざかる家」の感想 | 文化の海をのろのろと進む

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 私、この夏の酷暑のせいか、軽い鬱状態になってブログを休ませてもらっていました。心配されていた方々どうもすみませんでした。もう大丈夫なのでご安心下さい。


 さて、今回の記事はイタリアの作家イタロ・カルヴィーノの小説「遠ざかる家」の感想を書かせて頂きます。何年も積読本の山に置き去りにしていた一冊を救い出しました。



「遠ざかる家」イタロ・カルヴィーノ著 和田忠彦訳 松籟社

 




 原題は簡単に訳すと「建築登記」なんだそうですが、訳者の方が小説的なタイトルにしようと「遠ざかる家」という邦題にしたそうです。上手いですね。「建築登記」というタイトルだったら、私はこの本を手に取っていなかったでしょう。


 実家の家を壊し、その土地に新しくアパートを建てる計画を進めるだけの物語なのですが、とても面白く読めました。主人公のクイントが不動産業者と契約するまでの展開では「何やってんだクイント。カイゾッティみたいな胡散臭くて周りからも評判が悪い男と契約しようとするなんて、どう考えても悪手だろー」とヤキモキしながら読んでいました。


 主人公のクイントも一癖ありますが、何を考えているか分からないクイントの弟、怪しい不動産業者のカイゾッティと、その秘書なのか身内の者なのか分からない少女など、クセのあるミステリアスな登場人物達に振り回される主人公がおかしかったです。


 また、この作品が書かれた当時のイタリアの世相や政治が物語に自然に溶け込んでいて、巧い作家さんだなと思いました。


 訳者の方のあとがきも良かったです。知る事が生きがいの一つである私としては、まだ知らない事が沢山あり、まだ読んでいない本が沢山あると再実感させてもらえたのが嬉しかったです。


 娯楽小説ではありませんが読みやすく、面白く読めた本でした。イタリアの歴史や文学についてもっと知っていたら、違う読み方も出来たかも知れませんが、私の現時点での感想はこんな感じです。

 

 

 

 

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 最後まで読んで下さり、ありがとうございました。