「ちらん-特攻兵の幸福食堂-」第1巻の感想 | 文化の海をのろのろと進む

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 今回はマンガ「ちらん-特攻兵の幸福食堂-」第1巻の感想を書かせて頂きます。

 

 

 

「ちらん-特攻兵の幸福食堂-」第1巻 魚乃目三太 

 

[監修・取材協力]大島隆之 [取材協力]薩摩おごじょ・赤羽潤  [方言指導]東織絵

 

ヤングチャンピオン・コミックス 秋田書店

 

 

 

 

あらすじ

 この物語は鹿児島県南九州市知覧に実在した「富家食堂」をモデルに、特攻兵達の手紙などからインスパイアを得て紡がれたそうです。

 

 幸福食堂は味の良さと、店を切り盛りする嶋田一家の人柄の良さから地元の客から愛され、いつもにぎわっていました。

 その幸福食堂がある知覧に昭和16年(1941年)8月、陸軍大刀洗飛行学校が建設され、翌年開校します。そして幸福食堂は「陸軍指定食堂」となり、飛行訓練生達との交流が始まります。

 

 

 

戦争と食?!

 書店で平積みにされている、このマンガを見た時、最初に思ったのは特攻隊と食というのが珍しい切り口だという事でした。

 

 今、食をテーマにしたマンガが多い事は、あまりマンガを読まない私でも知っていまして、とにかく色んなメシマンガがあり、ネタ切れなのか、差別化するためなのか、異世界物まであるという。

 

 とは言え、違和感も覚えたのです。なぜなら戦前生まれの親戚などから戦中は食料が無く、サツマイモばかり食べていて、やがてそのイモも無くなり、イモのツルや葉っぱを食べていたと聞いていたからです。ですので、私の中では戦争中は食べるのがやっとで、食を楽しむ事を描くメシマンガにはなり得ないのではないかと思ったのです。どんなマンガなのか興味を引かれ、購入しました。

 

 

 

人と人

 幸福食堂の人達とご近所の方々、飛行学校の訓練生達との温かい交流が描かれていて、ほっこりした気持ちになります。だからこそ悲しい別れもあり、近づいてくる戦争の足音、死の影が恐ろしく感じられもします。

 

 

 

作画のここが良い

 このマンガ家さん、正直に言って絵が上手いとは言えないと思います。ただ、登場人物達の表情は豊かで繊細です。登場人物達の複雑な想いが絡み合った胸のうちを、シンプルな線で見事に表現しきってていると、私は思います。

 

 

 

食について

 幸福食堂の名物料理はトンコツと呼ばれる豚のあばら骨を醤油で炊いた物と、卵どんぶりです。戦前て意外と動物性たんぱく質を摂っていたんだなと、思ってしまいました。

 この1巻では物語は戦前から戦中を描いています。戦争の影響で食料不足になっている描写は少ししかありません。幸福食堂は陸軍指定食堂だから配給があるようです。

 

 食事シーンで印象に残るのは、登場人物達の表情です。皆、実に美味そうに喰うのです。大げさに言えば、生きる喜びを謳歌するかの如く幸せそうな顔で喰っています。

 

 

 

ここが足りてないかな?

 今の若者が読んだ時に、特攻兵の若者と時代背景や受けてきた教育があまりに違うので、理解出来るのか?と思ってしまいました。特攻兵達の背景にあるものが、もっと描かれていた方が特攻隊を知ってもらうのには、良かったのではないかなと思います。

 

 

 

強い想いを感じるマンガ

 作者のあとがきに「ちらん」を描いたのは一人でも多くの人に特攻を知ってもらいたいからと書いてありました。その言葉を読むまでもなく、作者の並々ならぬ使命感、描かなければという想いがページから伝わってきます。こんなに強い想いが込められた作品に久しぶりに出会った気がします。

 

 

 

 今回の記事(いつもの事ですが)仕事の疲れで書くのに時間がかかってしまい、たまたまUPが終戦記念日になってしまいました。これもご縁ですかね。このマンガに興味を持って頂けたら嬉しいです。

 

 

 

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 最後まで読んで下さり、ありがとうございました。