小西は、再び立岡の家を出ようとしたが立岡は・・・・・・・・。
「ちょっと待って下さいよ。小西さん今夜はどうせホテルも予約してないやろし、ここに泊まって行ったらどうや、それともホテルでも予約してると言うんやったら別やけどな」「それじゃー、今夜は遠慮なくこの家に泊めて貰おうかな。でも、やっぱり明日の朝
一番で僕、広島に行って杉田に会ってきます。ご心配なく、僕は最初から杉田はシロだと信じています。だから余程のことがない限り悪いようにはしません。」
  実は小西は一度  広島まで足を伸ばした事があったが、その時は何も知らぬままの捜査だったので、まさか卓とひろみが広島にいるとは思わず、仕方なく熱海への帰り道に
倉敷の立岡の家に立ち寄ったのである。
  立岡は、その夜、小西が眠ってからも暫くは小西の言葉と卓の事が気になり、いろんな思いが頭の中を賭け巡り、なかなか寝付けなかった。
「小西さん、あんな事言っていたけど、ホンマに大丈夫やろか警官とか刑事という職種の人には最近、以外と嘘をつく人が多いと聞くが、小西さんは俺の見た感じでは、そんなに簡単に嘘をつけるような悪い人には思えんけど、卓たちの事も気になるし、明日の朝、
小西さんが起きたら何とか護摩化して広島行きを止めて貰おう」と考えたりして、結局
立岡が自分のベットに入り、寝付いたのは夜中の二時を回ったころだった、
  午前四時過ぎ小西は、そっとベットから抜け出して眠っている立岡の枕元に手紙を書き残して、まだ暗く冷え切った空を見ながら、立岡の家を出て足早に駅に向かった。
「今からなら始発の広島行きに間に合うぞ、ただ杉田の奴が一体、広島の何処にいるかが判らないのか厄介だけど、こうなったら広島中をシラミつふしに捜すしかないか」
  小西はそう思いながら、五時十分の始発に間に合う様に倉敷の駅に向かった。
  小西の書き残した走り書きの手紙には、次の様な事が書いてあったのである。
(立岡さん、僕はやっぱり、広島に杉田を捜しに行ってきます。杉田の事は決して悪いようにはしませんから僕を信用して下さい、)と記されているのであった。
  立岡が起きたのは、七時頃だった。もちろん、部屋に立岡の姿はなく、枕元には小西の書いた手紙が無造作に置いてあった。  その手紙を読んだとき・・・・・・・
「やっぱり、誰が何と言っても俺は小西さんを信用しよう。卓たちの事が少し気になるけれど、あの人ならきっと滅多な事はないやろう」と心の中で、立岡は思っていた、