こんばんは! うしころ🐄です。
7話目になりました。本日もご覧くださり、ありがとうございます。
前回の話はこちらからどうぞ!
元季は、ふと助手席を覗き込んだ。
ついさっきまで、元気いっぱいにしゃべり倒していた佐江佳の話がパタッと止まってしまったのだ。
さっき書店で買った、名前辞典を手に持ったまま、佐江佳はすやすやと寝息をたてて眠っていた。
子どものように振る舞う佐江佳を愛しく思いながらも、少し頼りなさも感じる元季だった。
佐江佳自身も、自分自身に子供っぽいところがあることや、自分を受け入れられていないことが時々あるのもあって、
子育てなんて出来るのかなとこぼしていたことがあった。
それでも、いやそれだからこそ、やってみる価値があるのかなとも佐江佳は思うようになったとも言っていた。
結婚してからしばらくは、佐江佳の自分自身に対する自己否定がかなり深刻だったので、
改善してほしいことを伝えるとき、元季はかなり苦労していた。
そんな佐江佳も少しずつ、少しずつ、変わってきて、佐江佳を思うからこそ、元季は必要であれば伝えてくれているのだと分かるようになってきた。
それがどんなに言いにくいことであったとしても。
今からショッピングモールに行くのだが、ふいに出会った当初、2人で服を買いにユニクロに行ったことを元季は思い出した。
店内で服を選んでいるとき、元季からのちょっとした一言で、佐江佳は傷ついたようだったが、何が原因か元季にはさっぱり分からなかったという出来事があった。
佐江佳は、元季から「赤い色の服は、佐江のイメージには合わない気がする」と言われ、
その瞬間とても不快感を覚えたのだが、なぜ自分がそう思うのかすらも分からず、そのショッピングのあとは一日上の空だった。
元季にもどうしたのかと心配されていたが、何でもないよと言って、佐江佳はごまかしていた。どうしてそう思うのか、考えてみたいと思ったからだった。
佐江佳は、元季と別れて、自宅に帰ってからどうしてそう思うのか考えて、その気持ちを手紙にしたためて、次に元季に会うときにお土産をつけてから渡した。
元季は、今でもその手紙を持っているのだが、思った以上の長文で書かれていて、少し驚いたのを覚えている。
私は、数年前に店員さんにも見てもらいながら赤い色の服を選んで買ったことがある。その服をとても気に入って着ていたから、
赤色は私のイメージには合わないと言われてショックを受けた。
だけど、元さんは私を傷つけようと思って、私にそう言ったわけじゃないことは分かってる。
その一方で、私は自分を否定された気持ちがして少し辛かったけど、訳も分からず感情をぶつけることはしたくないと思って、少し時間を取りたかったの。
2人で一緒にいたらこんなことはまたあると思うけど、上手くかわせるようにしていきたいから、協力してほしい。私も嫌だなと思ったら、元さんに伝わるように話すから。
人は思いもかけないことで傷つくんだなと元季は思ったが、受け取り方次第でもあるので、佐江佳を傷つけたことを必要以上には気にしないことにした。
佐江佳には、手紙をもらった後に会った際、謝った。
手紙をその場で読めたら読んでいたが、佐江佳から家に帰って一人で読んでほしいと言われていたからだった。