リオ五輪〜"世界王者"瀬戸vs"日本王者"萩野 | わっぺんのスポーツ日記

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フェルプス・ロクテの時代から
萩野・瀬戸の時代へ...

バタフライ・背泳ぎ・平泳ぎ・自由形。
全ての泳法において高いレベルが求められ、競泳の数ある種目の中でも最も過酷と言われる400m個人メドレー。
この種目の頂点に立つ者には、「KING OF SWIM」の称号が与えられ、実に16年もの間その称号を"独占"して来たのは、水泳王国アメリカである。21世紀のオリンピックにおいて、男子400m個人メドレーのタイトルは全てアメリカが獲得していることをご存知だろうか。そしてその頂点に君臨し続けてきたのがマイケル・フェルプス、ライアン・ロクテの2人のスイマーであることは、言うまでもないだろう。
2004年アテネ五輪、2008年北京五輪、2012年ロンドン五輪。彼らが黄金期を迎えたこの数年間は、世界中が彼らの最高峰のライバル対決に魅了され、熱狂した。(2000年シドニー五輪では、トム・ドーラン(米)が優勝)

圧倒的な強さで数々の世界記録を破り、現在まで実に18個もの五輪の金メダルを獲得したマイケル・フェルプス。かつてはアメリカのNo.2と呼ばれるものの、ロンドン五輪400m個人メドレーで見事マイケル・フェルプスを破り、優勝。現在の200m個人メドレーの世界記録保持者でもあるライアン・ロクテ。
そんな彼らの"時代"も、そして「KING OF SWIM」の称号も、このリオデジャネイロオリンピックで終焉を迎えようとしている。
先月行われたアメリカオリンピック選考会において、マイケルフェルプスは400m個人メドレーの出場を見送り、ライアンロクテは3位となり出場権を逃した。
"支配者"のいない新たな時代の幕開けと供に、次なる「KING OF SWIM」になるべく名乗りを上げるのは、日本の2人のスイマー...
萩野公介と、瀬戸大也である。
彼らの今季の世界ランキングは1位と2位。オリンピックのエントリータイムでも1位と2位はこの日本人選手2人である。

萩野公介といえば、2012年のロンドン五輪400m個人メドレーでマイケルフェルプスを破り、17歳にして銅メダルに輝いたのは記憶に新しい。
2013年の世界選手権では8種目に出場し、2つの銀メダルを獲得。更に、翌年のパンパシフィック選手権では個人メドレー2冠、アジア大会ではリレーを含む4冠(メダル7個)を達成し、この大会では大会MVPにも輝いた。
類い稀なセンスの持ち主であると供に、誰もが認めるハードワーカー。現在は東洋大学進学後、北島公介氏を指導した平井伯昌監督の指導のもとでトレーニングを積んでいる。
彼のベスト記録の4分07秒55(日本記録)は、フェルプス・ロクテの両雄のいない今、世界の中でも頭1つ、2つ抜けている。彼が最も得意とする背泳ぎから抜け出しレースを引っ張るのが彼のスタイルだが、自由形の強さも世界トップレベルだ。
2014年のアジア大会200m自由形では、朴泰桓・孫陽のオリンピック金メダリスト2人をラスト50mで抜き返し優勝。400m自由形の日本記録保持者でもある。400m個人メドレーにおいて、平泳ぎを終える前に最低でも彼と並んでいなければ(自由形が強い前提であるが)、余程のことがない限りもはや誰にも勝ち目は無いだろう。
2013年の世界選手権では300mまで独泳しつつもラスト100mで失速し5位となったが、あの時は8日間で20レースという超過酷な日程の最終日ということもあり、彼の能力ではそれをカバー仕切れなかった。しかし、今回は200m個人メドレー、400m個人メドレー、200m自由形、800mフリーリレーの4種目に種目を絞り、個人メドレーでの2冠を狙うべく最高の日程でオリンピックに臨むこととなる。2013年のようなラスト100mは、もはや考えられない。"日本王者"萩野は、"世界王者"萩野となるのか。彼が最も金メダルに近い存在であることは、言うまでもないだろう。


そしてその2013年の世界選手権で萩野公介を躱し、見事世界王者となったのがもう1人の日本人スイマー、瀬戸大也である。
「世界王者・瀬戸」「夏男・瀬戸」
2012年オリンピック以降、フェルプス・ロクテの時代に引導を渡すべく世界の400m個人メドレーをリードし、アメリカの両雄の"支配"に萩野と共にこの五輪でピリオドを打とうとしているのは、彼である。
2012年、14年の世界短水路選手権、2013年、15年の世界選手権、この4つの世界大会で瀬戸はいずれも金メダルを獲得している。
日本の大会では多くのレースにおいて萩野公介に後塵を排しているため、どうしても瀬戸よりも萩野、というイメージを持つが、夏の大会、とりわけ世界選手権レベルの大会になると彼の勝負強さは一級品である。
萩野公介の欠場とディフェンディングチャンピオンとして、金メダルのプレッシャーがのしかかる中臨んだ2015年世界選手権では、200mバタフライ、200m個人メドレーでの不調を見事に大会期間中に修正し、再び夏の王者に返り咲いた。
今回のオリンピックが彼にとっては初めてのオリンピックとなるが、彼持ち前の勝負強さを発揮すれば、もちろん金メダルは十分に射程圏内である。
瀬戸はバタフライを得意とするが、萩野が得意とする背泳ぎを苦手とするため、平泳ぎに入る時点での萩野との差が一つのキーポイントとなる。
平泳ぎも瀬戸の得意種目であり、2013年、15年の世界選手権では正に平泳ぎで順位をあげ、優勝に繋げた。
ロンドン五輪以降、世界をリードしてきた瀬戸が、五輪のチャンピオンとなることで新たな時代の真の"支配者"となるのか。オリンピックの経験という点では萩野に遅れを取るが、2大会連続世界王者としての経験とプライドは誰にも負けないだろう。瀬戸が「夏男」の本領を発揮すれば、彼が「KING OF SWIM」の称号を手にすることも、想像に難く無い...。


この種目における世界のレベルを見てみると、実力ではやはりこの2人が抜けている。
先日行われたアメリカ五輪選考会でC.カリシュが4分9秒54というタイムで優勝した。昨季の世界選手権以降4分10秒の壁を破ったのは彼を含め3人だけであるが、萩野・瀬戸とカリシュのレベルの差はやはりあると言えるだろう。
しかし、舞台は五輪。「勝負」の五輪である。
世界ランキングも、ベストタイムも、決勝のスタート台に立てば関係ない。誰が勝つかは、誰にも予想できない。何が起きるか分からないのが五輪の最大の醍醐味でもある。
ただ彼らが実力通りの泳ぎをすれば、間違いなく決勝に進出し、決勝レースでは1.2位争いを繰り広げどちらかが「KING OF SWIM」の称号を手にすることになるだろう。
そしてそれはまた、日本人の手によって新しい時代の扉が開かれることも意味する。
この競泳界において歴史的な瞬間のはじまりの主人公が、2人の日本人スイマーであるということを正直まだ実感するにまでは至っていないが、オリンピック競泳初日をテレビで観戦すれば、その歴史的瞬間に立ち会えるかもしれない。
日本の競泳界は、今まさに、「水泳王国」アメリカの時代から、新たな1歩を踏み出そうとしてしているのだ。


では。