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SHARP MZ-2000

 

MZ-80Kから始まる、SHARPのオールインワン路線の集大成と言える製品が本機、MZ-2000である。
このシリーズは、キーボード・小型ディスプレイおよびデータレコーダを本体と一体化することで利便性とトータルコストパフォーマンスを高め、高速なCPUと大容量メモリを搭載し、反面ビジュアル・サウンドは最低限の実装とする方向性で一貫しており、源流を辿ると米国のマイコン黎明期の名機・コモドールPET2001、更にはIBMの高級小型コンピュータ・IBM5100の面影をそこに見ることができる。
これに対し、日本のパソコン市場の本流を築いたPC-8001(NEC)は同じく米国黎明期のヒット作・APPLE-IIを参考にしたと思われる性能設計となっており、基本設計は標準的なレベルに留めるかわり、カラー表示、高精細なグラフィックスを可能としていた。


基本性能が高くホームユースに必要な機器がワンボックス化されたMZシリーズは初期において多くのユーザを獲得し、後続のシリーズにおいても同様の設計方針が継承されていくが、本機MZ-2000の世代になると、パーソナルコンピュータの所有目的が体験・学習から実用本位へと次第に変容し、ホビーユースはビジュアル・サウンドが重視されるゲームプレイ、ビジネスユースはFDDによる高速記録と高精細な日本語表示が中心となるに至り、そのいずれにも適合しないMZ-2000は次第にシェアを失うこととなる。
カラー表示・FDDの利用拡大に対応するため、後継機MZ-2200においてオールインワンを捨て、コンポーネント化によりユーザの自由選択を可能としたが、システムの中核であるMZ-2000相当の本体が持つ表現力ではもはや他社製品に対抗できず、PC-8801(NEC)、FM-7(富士通)、X1(SHARPテレビ事業部)による市場の3極化からはじき出される格好となり、事実上の最後のMZシリーズとなる高性能機・MZ-2500の登場前に、MZシリーズを支える基礎的なユーザ層を失う結果となってしまった。

結果論となるが、MZ-2000が登場した時点では前身機であるMZ-80Bが発売からまだ1年というサイクルの中で好調に展開されており、これに対してオプション装備によるカラー表示以外は大きな改良点がないMZ-2000の投入は拙速だったと言わざるを得ない。MZ-80Bについてはこの時期PC-8801、FM-8(富士通)という競合機に対する表現力の低さが弱点になり始めていたのは事実だが、MZ-80BをMZ-2000相当の表現力に強化するパーツが実際にサードパーティから発売されているとおり、ポテンシャルとしてはMZ-2000を代替できる機体だったことを考えると、オプション装備の投入で機能の充実を図った上で、このMZ-80Bによって市場動向をあと1年見極めた上でMZ-2000の設計開発を行うということもできたはずだ。そうなっていれば、X1シリーズのようにPCG/PSGを備え、内蔵モニタは縦400ラインの単色ハイレゾ表示、内蔵も外付けもできるデータレコーダユニット(標準)とFDDユニット(オプション)を選択・ユニット交換できる内蔵デバイス、こういった夢のオールインワンが登場していた可能性はある。

 

もう一つの、そして最後の逆転の機会が16ビットボードキット(MZ-1M01)の投入時だったのだが、それについては別稿に譲る。

 

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