「中年の危機」に陥った、ごく普通の50代男性が、3日・2週間・1ヶ月の3段階で人生をやり直す、潜在意識活用システム 真「幸せの時間」 -27ページ目

「中年の危機」に陥った、ごく普通の50代男性が、3日・2週間・1ヶ月の3段階で人生をやり直す、潜在意識活用システム 真「幸せの時間」

潜在意識の働きで、あなたは「スーパーなあなた」になるのです。そのための素材・方法も実はあなたの手元にすでに多くあります。ここでは、あなたがそれを見出し、活用するお手伝いをいたします。胎児(あなた)は、胎児(あなた)の夢により進化します。

懐中温泉です、

 

第八話 丹波の霧、二つの天下

 

歴史シミュレーションその18

 

 

丹波国の山道には、朝霧がゆっくりと降りて

いました。

 


木々の間を白い煙のような靄が漂い、遠くの

稜線を柔らかく隠している。

 


その中を、二騎の馬が並んで進んでいました。

 

一騎は、明智光秀。


もう一騎は、細川藤孝。

 

いずれも、丹波平定の任を負い、京畿を織田

の手に確かにするための戦を進めてきた

武将である。

 

「九頭竜川にて、上杉に押され給うた、との

ことにござるか」

 

藤孝が、霧の向こうを眺めながら口を開いた。

 

「左様。
柴田殿の陣は苦戦の末に退き、


信長公自らも、その戦場にて退却を選ばれた

と聞く」

 

光秀の声は静かであった。

 

九頭竜川の敗戦は、丹波の山間にも伝わって

いた。

 


ただし、その報せは「壊滅」ではなく、「退却」

として届いている。

 

「信長公ほどの御方が、退くことを選ばれた。


それ自体、天下の形が一度揺れた、という

ことでござるな」

 

藤孝の言葉に、光秀はわずかに頷いた。

 

「九頭竜川は、“天下を一度二つに割った川”

になるやもしれぬ」

 

霧の中を進む馬の歩みが、少しだけゆるむ。

 

「二つに、でござるか」

 

「東の上杉、西の織田。


 上杉は、越後を本国として関東・東北・北陸

十一か国を押さえ、毛利・本願寺と連携して

信長公を挟む態勢を整えつつある。

 


一度その包囲が九頭竜川で形を取り、


信長公がそこで退却を選ばれた

 

それは、
“天下の半分をいったん上杉に認める”

という意味合いも持とう」

 

光秀の言葉は、慎重に選ばれていた。

 

「しかし、信長公がそのまま東を上杉、
 

西を織田と認めて、天下を二つに分ける

つもりであろうとは思えぬ」

 

藤孝がそう言うと、光秀も静かに続けた。

 

「無論。
 信長公は、天下布武を掲げておられる。


 畿内を押さえ、近江・美濃・尾張・伊勢を抱え、
 

京の政を動かしておられる御方じゃ。

 


 天下を二つに割ったまま、安んじて座して

おられる性ではない」

 

霧の切れ間から、遠くに京の方角が見えた。


まだ薄い影でしかないが、その向こうには

朝廷の屋根、寺社の塔が重なっている。

 

「されど――九頭竜川で一度退かれたことで、
 

朝廷や公家、寺社の見る天下像も揺らぎ

始めよう」

 

光秀、馬を止めぬまま、言葉を続けた。

 

「京の人々にとって、 『織田の天下』

というものは、信長公が常に勝ち続け、


上杉も武田も北条も、皆押し返される

姿の上に築かれてきた。

 

そこへ、
 『上杉に逢うては織田も九頭竜川、

はねる謙信、逃げる信長』
 という噂が重なれば、


 “織田に任せれば乱はおさまる”という信頼は、
 

少しずつ形を変えていく」

 

藤孝は、霧を吸い込むように深く息をした。

「朝廷は、どちらに重心を置くか

 

でござるな」

 

「さよう。
 上杉は足利幕府再興を掲げておる。
 

仏法・正法を中心とする中世的秩序、

『美しき流れ』の復権を口にしておる。

 


 それは、公家や寺社にとって魅力ある

言葉に聞こえよう」

 

光秀の眼差しは、京へ向けられていた。

 

「信長公は、天下布武を唱え、
 

寺社の特権を削り、楽市楽座を広げ、
 

戦のない秩序を作ろうとしておられる。

 

上杉は、古き秩序を蘇らせようとしている。

 


毛利は、その間を揺れながらも、
 

西国の旧来の秩序を守ろうとしている。

 

朝廷は、その三つの手のうち、
 

どこに自らの印章を預けるべきかを、
 

今まさに考え始めておろう」

 

藤孝は、光秀の横顔を見た。


そこには不安よりも、静かな緊張があった。

 

「光秀殿は、どこに重心を置くべきとお考えか」

 

「……難しい問いでござるな」

 

光秀は、少しだけ微笑みを浮かべた。

 

「我らは織田の家臣じゃ。


 信長公の下にあり、
 

その天下布武の一端を担う立場である。

 

 しかし、京の公家や寺社と接すること

の多い我らは、 彼らが『古き秩序』にも

『新しき秩序』にも揺れている様を、
 

日々目にしている」

 

 

ご精読ありがとうございました。

 

懐中温泉