「中年の危機」に陥った、ごく普通の50代男性が、3日・2週間・1ヶ月の3段階で人生をやり直す、潜在意識活用システム 真「幸せの時間」 -19ページ目

「中年の危機」に陥った、ごく普通の50代男性が、3日・2週間・1ヶ月の3段階で人生をやり直す、潜在意識活用システム 真「幸せの時間」

潜在意識の働きで、あなたは「スーパーなあなた」になるのです。そのための素材・方法も実はあなたの手元にすでに多くあります。ここでは、あなたがそれを見出し、活用するお手伝いをいたします。胎児(あなた)は、胎児(あなた)の夢により進化します。

懐中温泉です、

 

歴史シミュレーションその25

 

 

丹羽が問いを重ねる。

 

「これまでの道筋と、これからの道筋
 

どのように違うものとお考えで

ございましょう」

 

信長は、琵琶湖の方角に一度目を

やってから、地図へ視線を戻した。

 

「これまでは、『攻め勝ち続けることで

天下を取る』と考えていた。

 

 これからは、『守るべきところを固め、
 

攻めるべきところを選ぶことで

天下を保つ』と考える」

 

光秀は、その言葉の中に、
「

攻める織田」から「守りもできる織田」

への転換を感じ取っていた。

 

「守り、でございますか」

 

「そうだ」

 

信長は、まず近江に指を置いた。

 

「近江は、天下の要だ。


 安土を置き、京を押さえ、
 

東西南北の道がここに集まる。

 

 ここを固めずに、北陸も中国も東国も

見られぬ」

 

次に、美濃と尾張。

 

「美濃・尾張は、我が根だ。


 根が腐れば、枝葉はいくら広がって

いても倒れる。

 

 ここに城を整え、兵を常に置き、
 

農と商の流れを乱さぬよう見張る

必要がある」

 

さらに、伊勢・山城・大和・河内・和泉・摂津。

 

「伊勢は東国との境。


 山城・大和・河内・和泉・摂津は、京と堺

とを包む地。

 

 ここを固めておけば、
 上杉が北陸から、

毛利が中国から、
本願寺が摂津から何をしようとも、
 

畿内そのものが一度に崩れることはない」

 

丹羽は、静かに頷いた。

 

「すなわち、殿は……
 “天下を広げる”

よりも先に、“天下の芯を

固める”ことを、
今の織田家の仕事とお定めになった、

ということでございましょうか」

 

「そういうことだ」

 

信長は、短く答えた。

 

「九頭竜川で、我は初めて『天下が一度に

我が手からこぼれ得る』ことを知った。

 

 ならば、こぼれ落ちぬように、
 

器の底を厚くするしかない」

 

光秀が、慎重に言葉を選びながら問う。

 

「では、上杉謙信は、殿にとっていかなる

存在とお考えに」

 

信長は、少しだけ口の端を上げた。

 

「謙信は、『天下を二つに割る男』だ」

 

広間の空気が、わずかに強張る。

 

「東国・北陸を押さえ、
 

関東・東北に義の旗を立て、
 

毛利・本願寺と手を組み、
 

九頭竜川で我を押し返した。

 

 あの男がいる限り、
 天下は自然と

一つにはまとまらぬ」

 

光秀の胸の奥で、何かが音もなく動いた。

 

「しかし――」

 

信長の声が、少し低くなる。

 

「天下が二つに割れたままでいることを、
 

天がいつまでも許すとも思えぬ。

 

 いずれ、どこかで、
 

『どちらか一つに収束させる戦』が来る」

 

丹羽が小さく息を呑んだ。

 

「それは、再び謙信と激突する戦――

にございますか」

 

「そうだ。


 ただし、九頭竜川のように、
 

“どちらが押し返すか”だけを競う戦では

足りぬ」

 

信長は、地図から指を離し、膝に置いた。

 

「これまでは、『織田の政』と『信長の夢』は

ほぼ同じだった。


 天下布武の旗の下に、
 寺社の特権を削り、
 

楽市楽座を広げ、
 国ごとの古い秩序を

壊して新しい秩序を作る

 

 それが『織田政権』そのものだと、誰もが

思っておった」

 

光秀は、黙って聞いている。

 

「しかし、九頭竜川後は違う。

 

 織田家としては、『畿内と東海を守る政』が

必要になる。

 


 信長個人としては、『天下を一つにまとめる夢』

がまだある。

 

 この二つを、
 いつまで同じ器に入れておけるか」

 

それは、信長自身の胸の内からこぼれた

問いにも聞こえた。

 

丹羽は、それ以上踏み込まなかった。

 

「我ら家臣は、まず『織田政権』を支え、
 

畿内・東海の秩序を固めることを、
 

務めと心得るべきにございますな」

 

「そうだ」

 

信長は、短く肯定した。

 

「織田が『天下の半分』をしっかり押さえて

おればこそ、残る半分をどうするか、
 

上杉といかに決着をつけるかを、
 

いつか選ぶことができる」

 

 

ご精読ありがとうございました。

 

懐中温泉