一回りは終わった | 「中年の危機」に陥った、ごく普通の50代男性が、3日・2週間・1ヶ月の3段階で人生をやり直す、潜在意識活用システム 真「幸せの時間」

「中年の危機」に陥った、ごく普通の50代男性が、3日・2週間・1ヶ月の3段階で人生をやり直す、潜在意識活用システム 真「幸せの時間」

潜在意識の働きで、あなたは「スーパーなあなた」になるのです。そのための素材・方法も実はあなたの手元にすでに多くあります。ここでは、あなたがそれを見出し、活用するお手伝いをいたします。胎児(あなた)は、胎児(あなた)の夢により進化します。

懐中温泉です、

 

道後湯治第七日目後半

 

 

書き終えたとき、結は静かにペンを置きました。

 

「これで、一回りは終わったんだな。」

 

そう心の中で言葉にすると、七日間の細かい

記憶が、湯気のようにふっと立ち上っては

消えていきます。

 

初日の駅前の足湯、二日目の鏡の前、

三日目の椿の湯、四日目の湯なしの朝と

本館の休憩室、五日目の足湯と顔の観察、

六日目の“最後の本気の湯”。

 

そのすべてが、いま「一回り七日」という

ひとまとまりの時間として、ノートの中と

身体の中に静かに収まっていきました。

 

その後はどうするのか

 

チェックアウトの時間が近づき、二人は荷物を

持って玄関に向かいました。

 

「七日間、お世話になりました。」

 

宿の人に頭を下げて外に出ると、道後の

坂道と商店街、そして本館の屋根が、

いつものようにそこにありました。

 

「このあと、どうする?」

 

駅へ向かう途中で、佐和が尋ねました。

 

「いま?」

 

「うん。いま、じゃなくてもいいけど、“このあと

の何年か”くらいのスパンで。」

 

結は少し歩いてから、答えました。

 

「有馬には、また“三回り”か、それに近い

単位で行くと思う。あそこは、“人生の節目”

みたいなときに行く場所として、これからも

とっておきたい。」

 

「道後は?」

 

「道後は、“節目”じゃなくて、“途中”に来る場所

かな。」

 

結は足元の石畳を見下ろしながら言葉を続けました。

 

「一年に一度か二度、一回り七日か、それが

難しければ、二泊三日や三泊四日でもいい。

 

ここに来て、湯に浸かって、顔と脚の状態を

確認して、“ああ、まだ大丈夫だな”って思えたら、

その先の何ヶ月かをまたやっていける気がする。」

 

「“人生の定期点検”みたいなものね。」

 

「そうかもしれない。」

 

道後温泉駅前の足湯まで戻ってくると、七日前と

同じように観光客が足を浸し、からくり時計の前で

写真を撮っていました。

 

結は足湯の縁に手を置き、湯面を一度だけ覗き

込みました。

 

「次にここに来るときも、“湯治”という言葉を使う

のかどうかはわからないけど。」

 

「でも、やっていることはきっと同じでしょ。」

 

佐和が笑います。

 

「湯に浸かって、少し食べて、よく寝て、ちょっとだけ

自分の身体と顔の様子をノートに書く。」

 

「そうだね。」

 

結は笑って頷きました。

 

「有馬で、“身体の平常の厚み”を作り、道後で、

“その平常を日常の中で保つ方法”を覚える。

 

その往復を、しばらく続けてみたい。」

 

そう言葉にしてみると、「その後」の道筋が、

自分でも驚くほど自然に見えてきました。

 

電車の時間が近づき、二人は駅舎へと歩き出します。

 

七日間の道後一回り湯治は、こうして

いったんの区切りを迎えました。

 

でも結の中では、それは「終わり」ではなく、

「これから何度も重ねていく七日間の最初の

一枚」にすぎないのだ、と静かに理解されて

いました。

 

 
ご精読ありがとうございました。
 
懐中温泉