別ルートで戻る | 「中年の危機」に陥った、ごく普通の50代男性が、3日・2週間・1ヶ月の3段階で人生をやり直す、潜在意識活用システム 真「幸せの時間」

「中年の危機」に陥った、ごく普通の50代男性が、3日・2週間・1ヶ月の3段階で人生をやり直す、潜在意識活用システム 真「幸せの時間」

潜在意識の働きで、あなたは「スーパーなあなた」になるのです。そのための素材・方法も実はあなたの手元にすでに多くあります。ここでは、あなたがそれを見出し、活用するお手伝いをいたします。胎児(あなた)は、胎児(あなた)の夢により進化します。

懐中温泉です、

 

有馬湯治第二十日後半

 

 

「・・・昭和期に入ると、別府に九州大学温泉

治療学研究所が設立されるなど、温泉医学の

研究体制も整っていった。」

 

書き終えると、結はペンを置き、少しだけ

笑いました。

 

「こうしてみると、湯治は“医療から追い

出されながら、別のルートで医療に戻って

きた”ようにも見える。」

 

夕方、金泉へ向かう前に、結は佐和と短く

言葉を交わしました。

 

「明治以降の湯治って、結局どうなった

んでしょうね」と佐和が尋ねました。

 

結は、「公式には“医療ではない”とされつつ、

ベルツや陸軍、大学の研究所などを通じて、

“予防医療・補完医療”としての位置づけを

獲得していったのだと思います」と答えました。

 

「いま私たちが三週間も湯治をしているのは、

その“補完医療としての湯治”の延長線上

にいる、という感覚ですね」

と佐和が言いました。

 

「病院に行かない代わりではなくて、病院や

医師の存在を前提にしながら、身体と心の

調整のために湯に入る。」

 

結は、「近世と近代の『湯治』の意味を

両方意識しながら、有馬で二十日間過ごして

きたのだ、と言えるかもしれません」と

応じました。

 

「江戸の湯治客と同じように湯に入り、明治

以降の温泉医学の視点も頭の隅に置きながら、

自分の身体を観察する。

 

それが、今回の三回りの“もう一つの目的”

だったのかもしれない。」

 

夜、簡素な膳をとったあと、結は二十日目

の頁の最後に、一文を書き添えました。

 

「二十日目=三回り目第六日。


 西洋医学導入後、湯治は“正規の医療”

から外されつつも、

 

行政による成分分析と衛生管理

ベルツらによる温泉医学の提唱

軍や大学の温泉療養制度

 

を通じて、“予防医療・補完医療・保養”として

新たな役割を与えられていった。


 現代の自分の湯治は、その延長線上に

位置することを意識しながら過ごす一日。」

 

ペンを置き、窓の外に目をやると、夜の有馬

の湯けむりの向こうに、近世から近代、現代

へと続く“湯と医療”の長い線が、うっすらと

重なって見えるような気がしました。

 

二十日目の有馬は、その線の上に自分の

三週間の時間をそっと重ねるための、一つの

節目のように思えました。

 

湯治から現代温泉観光への流れは、

「治す場」から「癒やし+娯楽の場」へ、

目的と滞在スタイルが段階的にずれて

いったプロセスとして整理できます。

 

江戸期:治療中心だが観光の芽

 

近世の湯治は、3週間前後の長期滞在で

病気治療・養生を目的とするのが基本でした。


 

ただし江戸後期になると、寺社参詣や

物見遊山と組み合わさった「湯治旅」が

庶民にも広まり、温泉はすでに部分的に

観光地としても機能し始めます。


 

東海道沿いの箱根では、道中奉行が

一時「宿場以外での宿泊禁止」を

打ち出したものの、湯本・塔之沢への

立ち寄りがあまりに盛んでした。

 

これが、一泊程度の「短期温泉観光」の嚆矢

とされます。


 

明治〜戦前:保養・観光へのシフト

 

1874年の「医制」で、西洋医学に基づく

医師だけが「医療」と認められ、温泉療法は

正式には医療の外=民間療法扱いになります。

政府は温泉の成分分析・衛生規則を整備

しつつ、「効能書き」よりも禁忌や利用方法を

定める方向に転換しました。


 

一方で、鉄道・道路整備が進むと、熱海・

箱根・別府などへのアクセスが飛躍的に向上し、

温泉は「保養・行楽」を兼ねた旅行先

として人気を高めていきます。


 

別府や熱海では近代的な都市インフラと

観光開発が進み、市制施行に至る

「温泉観光都市」として成長しました。


 

戦後〜高度成長期:観光・宴会型温泉へ

戦後の復興と高度経済成長により、

団体旅行・社員旅行・慰安旅行が急増し、

「一泊二食+宴会」の温泉旅館スタイル

 

これが全国に定着します。


 

この時期の温泉は、病気治療よりも「会社・

家族のレジャー」としての色彩が強まり、

歓楽要素や大規模旅館が前面に出る

ようになります。


 

しかし一方で、「昔ながらの自炊湯治」や、

連泊して仕事・読書をしながら身体を

整える「現代湯治」を掲げる宿も各地に

再び現れています。

 

治療と観光の中間にある滞在スタイルが

模索されているということなのでしょう。

 

 

ご精読ありがとうございました。

 

懐中温泉