食事の基本 | 「中年の危機」に陥った、ごく普通の50代男性が、3日・2週間・1ヶ月の3段階で人生をやり直す、潜在意識活用システム 真「幸せの時間」

「中年の危機」に陥った、ごく普通の50代男性が、3日・2週間・1ヶ月の3段階で人生をやり直す、潜在意識活用システム 真「幸せの時間」

潜在意識の働きで、あなたは「スーパーなあなた」になるのです。そのための素材・方法も実はあなたの手元にすでに多くあります。ここでは、あなたがそれを見出し、活用するお手伝いをいたします。胎児(あなた)は、胎児(あなた)の夢により進化します。

懐中温泉です、

 

「癒しと労働の列島」篇第百二話

 

 

 

結(ゆい)は、伊香保の湯治宿の共同台所に

腰をおろしながら、「ここでの食事は、ちゃんと

江戸の湯治作法にならってみよう」と考えました。

 

草津までは、ビュッフェ形式の朝食やカフェの

コーヒーに流されてしまった日もありました。

 

が、伊香保では、一次資料に出てくる「湯治の

食べ方」を自分の身体で試してみたい

と思ったのです。

 

彼女がまず開いたのは、新潟・栃尾又温泉の

様子を記した眼科医・竹山亨の『竹山日記』

でした。

 

文化文政期の湯治記録として知られるこの

日記には、「湯治場は自炊が基本」である

としました。

 

湯治客たちがそれぞれ持参した米や味噌を

炊き、時には互いの料理や菓子を交換して

いたことが、かなり具体的に書かれています。


「一回の湯治を一巡り七日間とし、三巡して

二十一日間の湯治が基本」であること、

 

「大食・大酒は大毒ゆえ慎むべし」

 

といった注意も、同じ日記の中に見えます。

 

結は、ノートに「伊香保・食事の基本」と題して、

まず三つの原則を書きました。


一つ目は、「米と味噌を中心にすること」です。

 

江戸の庶民の湯治では、米は客が自分で

持参し、宿の竈で炊いていました。

 

おかずは、近在の朝市や行商から手に

入れる山菜、野菜、干物などが中心で、

「米+味噌汁+少量の魚と野菜」という形

 

この形が、多くの湯治場で共通していたと、

竹山日記や他の記録から読み取れます。


二つ目は、「大食・大酒をしないこと」です。

 

貝原益軒の『養生訓』も、「湯治の間、熱性

の物を食ふべからず。大酒大食すべからず」

と戒めています。

 

温泉の効能書や養生書でも、食べすぎ・

飲みすぎが湯治の効果を損なうことが

繰り返し指摘されるところです。


三つ目は、「冷たいものと脂っこいものを

避けること」です。

 

近世の養生論や温泉医学の史料を見れば、

冷水や氷、油気の多い料理は、血の巡り

を乱し、せっかく温泉で温まった身体を

内側から冷やしてしまうと考えられていました。

 

伊香保の黄金の湯が「冷え性・婦人病・神経痛」

に効くとされてきたことを思い出しながら、

結は、自分用にもう少し具体的な献立案を

書き加えていきます。

 

朝は、「米一膳・味噌汁・漬物少し」。

 

味噌汁の具は、豆腐や大根、葱、季節の青菜

など、消化にやさしいものを選びます。

 

江戸の料理書や豆腐料理の記録を見ても、

豆腐と味噌の組み合わせは、当時から

庶民の食卓を支える「軽くて腹持ちのよい」

一品でした。

 

昼は、「朝と同じ米と汁に、小さな魚か山菜の

おかずを一品」。

 

竹山日記には、湯治客同士が菓子やおかずを

差し入れ合う様子が出てきますが、その多くは

焼き魚、煮物、素朴な菓子などで、油を多く使う

料理はほとんどありません。

 


結は、これにならい、揚げ物や肉料理は避け、

焼き魚か煮魚を少量、あとは山菜や野菜の

煮びたしを一皿だけ、と決めました。

 

夜は、「昼とほぼ同じ量か、それより少なめ」。

 

湯治関連の医史学の研究によれば、湯治中

の食事は一日二回+軽い夜食という

パターンも多く、夜に腹一杯食べないことが

重視されていました。


結は、自分の習慣に合わせて一日三回の

食事は維持しつつ、夕食は昼より少し控えめに

することにします。

 

酒は一合も飲まない、甘い菓子も「いただき

ものだけ、少しだけ」にする、とノートに

書き添えました。

 

また、結は、食材の調達先も一次資料から

なぞってみることにしました。

 

『竹山日記』では、湯治客が近くの村の行商や

朝市から山菜や野菜、豆、漬物などを買い

求めていたことがわかります。


伊香保にも、石段街の麓や周辺に地元の

野菜や豆腐を売る店があるはずだと考え、

彼女は「朝は米と味噌を炊き、昼前か午後

早めに“おかずの仕入れ”の散歩に出る」

 

このようにスケジュールに書き込みました。

 

こうして、「米と味噌+野菜と少量の魚」と

いう江戸の湯治食の骨格を踏まえながら、

結は伊香保での自分の食卓を組み立てて

いきます。

 

そこには、観光ガイドにあるような「ご当地

グルメ」の派手さはありませんが、一次資料に

残る言葉

 

「湯治場は自炊が基本」

「大食・大酒は大毒」

 

に、静かに寄り添うような形が見えてきます。

 

湯に浸かる回数だけでなく、「何をどれだけ

食べるか」を自分の手で決めること。

 

それが、伊香保で過ごす七日間に、結が

与えようとしている「湯治らしさ」でした。

 

 

ご精読ありがとうございました。

 

懐中温泉