奇跡の98歳、その生き方のレシピ | 黒瀬友里

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美しく老いるとは、どういうことなのでしょう。

表現の世界に身を置く者として、私はずっとその答えを探してきました。

でも、私の目の前には
どんな教本よりも雄弁に「生」を体現している女性がいました。
私の祖母、98歳。



この写真は、祖母が旅立つわずか3ヶ月前の姿です。
コメダ珈琲店にて。
祖母が選んだのは、熱々のグラタンと、サンドイッチとたっぷりサイズのミルク珈琲。

98歳という年齢を忘れさせるようなその見事な食べっぷりに、私はただ、見惚れてしまいました。

お出かけの前、祖母には欠かせない儀式がありました。
鏡に向かい、ケープで丁寧に髪を整え、仕上げにそっと口紅をひく。
それは、誰に見せるためでもなく、自分自身を凛と保つための、「誇り」のようにも見えました。

祖母の人生には、不思議なほど「余計なもの」がありませんでした。

98年という長い歳月を歩みながら、
耳はどこまでも健やかに音を拾い、その足は一度も杖を頼ることなく、
心は曇ることなく、いつも「おほほ」と穏やかな微笑みを湛えて。

「私はね、お酒は一切いただかないけれど、甘いものは大好きなの」
そう言ってミルク珈琲を口にする顔は、すべてを悟ったような気品に満ちていました。


好きなものを美味しくいただき、大切な人たちと笑い合う。 

そんな当たり前の「日常」を、最後まで自分の足で、自分の意思で完遂したのです。

そこには、老いへの抗いも、長生きへの執着もありませんでした。
ただ、与えられた寿命を、一滴も残さず美しく使い切る。
その潔い幕引きは、私に「本当の豊かさ」を教えてくれた気がします。

おばあちゃん。
あなたが残してくれた「おほほ」という笑い声と
紅をさした凛とした顔。

私も、あなたのような品格を持って
自分の人を最後まで美しく味わい切りたいと思います。