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大丈夫。気付けばそこにいる。
そう、いなくていいわお前なぞ、
と言われぬ限りきっとあなたのそばにいる。
そんな人に私はなりたい...とは思わない。
私がなりたいのではなく人のそばには
必ずそういう人が付いている。
それに気付くか気付かないか、ただそれだけ。

 

 

人の子ソウがそこにいる

家族で旅行に出かけた先で

壮大優雅な大自然の川を見る

 

人の子ソウはそこにいる

お父さんとお母さんに

あるがままを感じてごらんと

心がスッと晴れるでしょと

そう言われながら川を見る

 

ソウは決して捻くれてはいなかった

ソウの性格はちっとも悪くなかった

でもソウは

その時あることを思った

 

 

人の子ソウはそこにいる

隣人の飼い犬パウロに

家族で旅行に行った時のことをお話しする

 

隣家の飼い犬パウロはそこにいる

いつも一緒に遊んでくれる

近所の子どもが今日もこそっとやってきて

頭を撫でては何かを語りかけてくる

この雰囲気の時は何か思うことがある時だ

 

「ねぇパウロ

 旅行先ですごい大きな川を見たんだ

 本当に大きかった

 

 でねパウロ

 その時父さんと母さんに

 あるがままを感じることは

 とても大事なことって教わったんだ

 

 でもパウロ

 あるがままを感じるって

 僕にはどういうことかよく分からなかったんだ 

 

 だって感じるってことは

 目や耳や鼻や肌とかきもちで受け取るってことでしょ

 だけど見るも聞くも感じるも何も

 身体がほとんど勝手にやってることじゃん

 

 そう思ったらなんだか

 父さんも母さんも不思議なことを

 言っているなぁって思えてきちゃったんだよ

 パウロ

 

 そこにあるあるがままをあるがまま感じたって

 それだって身体が思いたいように受け取っただけで

 それそのもののあるがままを受け取ったわけじゃない

 身体の思うがままを受け取っただけじゃん

 って

 

 ねぇパウロはどう思う?

 あるがままは思うがまま

 あるがまま感じては

 思うがまま受け取れってことなのかなぁ

 

 身体の思うがまま受け取ることが

 あるがままを感じるってことなのかなぁ

 

 感じたところでもうそれは

 あるがままではないような

 

 ねぇパウロ

 あるがままってどうしたら

 受け取れるものなのかなぁ」

 

隣人の飼い犬パウロはそこにいる

人の子ソウに家族旅行の時のお話をされて

その難しさに耳と目を垂れ下げながら頭を悩ます

 

 

隣人の飼い犬パウロはそこにいる

たまに顔を出しに来る

野良猫のサネにソウからされたお話をする

 

野良猫のサネはここにいる

いつも呑気に昼寝をしてる

大きいワンころパウロが

今日ももふもふのそのそ近寄ってきて

匂いを嗅いでは横にコテンと転がった

この雰囲気の時は何か言いたいことがある時だ

 

「おぉサネ

 不躾で悪いんだけれど

 いきなりで悪いんだけれど

 おいら今悩みを抱えているんだ

 

 ちょっと相談に乗ってくれないか 

 サネ

 

 ほらいつも

 おいら達が呑気してる時に

 遊びに来てくれるあの子

 ソウが話したことなんだけれど

 

 あるがまま感じるって

 どういうことだと思う 

 サネ

 

 サネもないかい?

 サネもあるだろう

 

 雨の後に大きな虹が架かってるのをぼーっと見た時とか 

 

 大嵐の後

 からっからに晴れた空と

 ほんの僅かな嫌味もない風と

 澄み切った水面を視界に入れて立ち止まった時とか

 

 何も特に考えることもなく

 そこにあるものを綺麗だとか

 心地いいだとか

 そんな風に感じたことあるだろう

 

 おいらは

 あるがままを感じるって

 そんなことなんだろうって

 思っていたんだけれど

 ソウが言うんだ

 

 それは目や耳や鼻や肌やきもちが

 思いたいように受け取りたいように

 受け取っただけのことで

 あるがままをそのまま感じたわけじゃない

 そんな気がするって

 

 そう言われたらサネ

 おいらも分からなくなっちゃって

 

 目の前にある

 すぐそこで起きた

 あるがままってどうやったら

 あるがまま感じ取れるのかな

 

 うぅうぅサネ

 どう思う

 サネは一体どう思う」

 

野良猫のサネはそこにいる

大きいワンころパウロから相談を受け

その難しさに髭と尻尾を萎れさせながら頭を悩ます

 

 

野良猫のサネはそこにいる

年に数度顔を合わせるかどうかの

名前も知らない海鳥のヨカフと

偶然桟橋の上で会い

パウロからされたお話をする

 

海鳥のヨカフはここにいる

たまに海沿いで鉢合わせるサネが

いつになく随分ちんまりと

弱弱しいちょっかいをかけてきた

この雰囲気の時は何かしら不満がある時だ

 

「なぁなぁヨカフ

 少し聞いてほしいのです

 

 いやぁ飛ばないで

 本当にちょっと悩んでいるのです 

 

 君も空から何度か見たことがある

 あの大きいワンころパウロから

 聞かされた話なんです

 

 あまり時間をかけさせるのも悪いから

 手っ取り早く伺いますね

 いきなり本題に入ってしまって

 申し訳ないのですけど

 

 ヨカフ

 君はさヨカフ

 あるがまま感じるって

 どういうことだと思いますか 

 

 ヨカフもありますよね?

 ヨカフだものないはずありませんよね

  

 雨の後に大きな虹が架かってるのをぼーっと見た時とか 

 

 大嵐の後

 からっからに晴れた空と

 ほんの僅かな嫌味もない風と

 澄み切った水面を視界に入れて立ち止まった時とか

 

 友達が突如目の前から居なくなった時とか 

 

 それが何かは分からないけれど

 それが何であるにしろ何かを感じ取る時とか

 

 特に深く考えることもなく

 そこに漠然とある不穏や不安だとか

 ただただいい日だとか

 そんなこと感じたことありますよね

 

 私は

 あるがままを感じるって

 そんなものなのでしょうって

 思っていたのだけれど

 パウロが言うのです

 

 それは目や耳や鼻や肌やきもちが

 思いたいように受け取りたいように

 受け取っただけのことで

 あるがままをそのまま感じ取ったわけじゃないって

 それはあるがままじゃないって

 思うがままだって

 

 そう言われたらヨカフ

 私も分からなくなってしまって

 

 目の前にある

 すぐそこで起きた

 あるがままってどうやったら

 あるがまま感じ取れるのでしょう

 

 なぁなぁヨカフ

 どう思います

 ヨカフは一体どう思うのです」

 

海鳥のヨカフはそこにいる

野良猫のサネから尋ねられ

その難しさに頭を悩ませ

友達皆に話を広めて

群れ全体でお手上げと翼を広げて首を振る

 

 

海鳥のヨカフはそこにいる

このままじゃあ

埒が明かん

どうにもならんと友達皆と大海に出て

大海原にこれまでのお話をする

 

大海はそこにいる

いつもより大きな声でないている

海鳥のヨカフ達の言葉に耳を傾ける

この雰囲気の時は何かしら不満がある時だ

 

だけれど

特に何もない

ヨカフ達の声に対して

返事は何も返さない

 

あるがいる

あるだけだ

あるがままがそこにある

 

何も思うことなかれ

決して感ずることなかれ

その身で受け取ることなかれ

あるがままはあるがまま

何も侍らすこともなく

何も寄せることもなく

何も残すこともなく

 

あるがままはそこにある

あるがいる

あるだけだ

 

うねる波

戦ぐ風

青い全て

照る日差し

 

そんなことを大海が

言っているのかも分からない

そんなことを

もし大海が本当に思っていたのだとしても

それが皆に伝わる日が来るのかも分からない