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大丈夫。気付けばそこにいる。
そう、いなくていいわお前なぞ、
と言われぬ限りきっとあなたのそばにいる。
そんな人に私はなりたい...とは思わない。
私がなりたいのではなく人のそばには
必ずそういう人が付いている。
それに気付くか気付かないか、ただそれだけ。

 

郁葉陽介は

トップリフトで赤土を

ガリガリ削ってた

 

枝垂いすゞは

登下校中に落っこちてる

小枝をいつも集めては

なんでもかんでも火を点けてた

 

橋本美沙子は

岩だとか木々だとか

新芽とか小川だとか

天然物を見るや否や

とりあえず分度器で角度を測ってた

 

こいつら一体何をやってんだと

冷静に感じ取ることの出来る僕は

玄関先に戸板で人間小屋を作ってた

日中そこに寝転んで遊んでた

 

答えを知らない

行方を知らない

試したことに対し

どんな態度が返ってくるかを知らない

命の冒険譚

 

あいつらも僕も

それを叙述する能力を

持ち合わせちゃいなかったけど

 

あれらは無知空手を”起”に置いた

物語の第一章であったのだと思う

 

多くを持ち合わせていないことでなる

多くを持ち合わせていないが為にこと起こし

対価として受け取った

体験と収得感覚

発見とひらめき

 

既に世界で答えが

導き出されているかどうかの有無を度外視した

個人のみで完結する充足感

 

そこには

「答えが出ているのなら

 その解答だけ分針一つ動く前に

 調べて把握し終わりでいい

 やる必要など何処にもない

 時間の無駄で非効率」

という考えなど露となく

世界をまるで度外視し執拗に執着し

同じことを繰り返し続けてた

 

 

飯田功太は

タンデム自転車の後部ペダルと

前部ペダルをゴムバンドで

がちがちに結び付けて

馬力統合一人力で二人力よと

あちこちタンデム漕いでいた

 

山下淳作は

中に乗客がいようがいまいが

いっつもチンチン電車に向かって手を振っていた

「家族の為生きる為にそれは何処かへ消え

 家族の許いるべき場所に帰る為に

 それは何処かからやって来る

 この電車を使ってそれは行われているが

 この電車そのものもその一部として

 あちらに消えたりあちらから帰ってきたりしている

 

 自分はここで頑張って生きている

 人を何処か遠くへ運び消し

 人を何処か遠くから運び戻し

 そうやって生きていると健気に訴え

 居場所を探しているように見える

 

 歴史という家の中にいつか入居する時

 自分の運んだ人らとともに自分も

 そこに一緒に住めるようにと

 そう懸命に働きかけているように見える」

そう呟きながら頬についた

てりやきバーガーのソースを舐め取っていた

 

そして

橋本美沙子はやっぱり

岩だとか木々だとか

新芽とか小川だとか

天然物を見るや否や

とりあえず分度器や水平器で角度を測ってた

 

こいつら一体何を言ってんだと

冷静に感じ取り達観していた君は

夕方頭上飛び交う蝙蝠らの傍らに

淡々とバドミントンのシャトルを打ち上げ続け

持ち去ることを期待していた

 

答えを知らない

行方を知らない

試したこと思ったことに対し

どんな態度が返ってくるかを知らない

命の冒険譚

 

あれらは知らず知らず

条件を満たしていたと思われる

 

多くを持ち合わせていないことでなっていた

多くを持ち合わせていないが為にこと起こし

結果として受け取った

体験と収得感覚

発見とひらめき

 

個人が手にする充足感に

既に世界で答えが導き出されているかどうかなど

関係がないということ

 

自分で見つける結論と間違い

その正誤がどちらであれ

自ら到達したということに

自尊心の幾らかは満たされる

 

答えを持っているのはいいこと

全知全能に近い程

幅広く素早く把握していくのは素晴らしいこと

 

ただそれで何を満たす気なのか

己が何を満たす気なのか

自力無くして

自問無くして

自答無くして

 

答えが出るまで満たしてみる

という感覚を度外視して

「答えが出ているのなら

 その解答だけ分針一つ動く前に

 調べて把握し終わりでいい

 やる必要など何処にもない

 時間の無駄で非効率」と言った時

自分無くして自分をどうして満たすのか

自分を満たせる項目が一体どれ程残るのか

 

無知である内にしか

多くを持ち合わせていない時にしか

世界の答えを度外視している刻にしか

いや

その時期だからこそ

やっておきたい行為がもしもあるのなら

そこにはきっと入ってくるのだと思う

 

あれらのそれが

やつらのような間抜けなそれが

 

自分なりの答えは自分で見つける

その正誤がどちらであれ

絶賛や反省も追々するとして

自ら到達したということが

その自尊心を満たしてくれる

 

個人が手にする充足感に

既に世界で答えが導き出されているかどうかなど

関係がないんだ

 

 

見てごらんよ

こんなにもまだ

充足感自尊心を満たしてくれるものが

周りには転がっている

答えの知らないことが転がっている

 

知りたいかどうか

知ってるかどうかの満足なんて

ほんの一瞬さ

 

どうせすぐに知ってることは当たり前になり

なんとも思わなくなるさ

 

受け取っただけの情報には

自分を満たし続けるだけの力がないことに

いや

おそらくそのことに気付くことすらないだろう

 

でも見てごらんよ

こんなにもまだ

心を満たしてくれるものが

周りには転がっている

答えを把握できていないことがまだ転がっている

 

幸運だったね

幸運だったなぁ

世界の答えを度外視し

世界に二つとない答えを抱いていこうよ

 

 

 

郁葉陽介は

トップリフトで赤土を

ガリガリ削ってた

 

枝垂いすゞは

登下校中に落っこちてる

小枝をいつも集めては

なんでもかんでも火を点けてた

 

橋本美沙子は

岩だとか木々だとか

新芽とか小川だとか

天然物を見るや否や

とりあえず分度器で角度を測ってた

 

こいつら一体何をやってんだと

冷静に感じ取ることの出来る僕は

玄関先に戸板で人間小屋を作ってた

日中そこに寝転んで遊んでた

 

答えを知らない

行方を知らない

試したことに対し

どんな態度が返ってくるかを知らない内に

深みと中身が輝き増してく

それが命の冒険譚