歌を歌うかのように女が言うので、
その通りの事をしてみる事にした。
靴をはき、いざ出陣!
小さく叫ぶと、
ありったけの力で重たい鉄の扉を押したのだった。
その時、手元に何かしらの手応えを感じたが、
何も見えなかったので直ぐに気のせいだったと納得したが、
あの瞬間、
直に身体に受けた感覚と、それに対する反省は、
後にも先にも忘れられない出来事となってしまった。
時は経ち、
女の何気無い一言のおかげで、
すっかり身体も心も軽くなって自宅に戻ってきた訳だが、
自宅の玄関が見えた時、
思わぬ光景が拡がっていたことに、
我が眼と神経の行く先を案じずにはいられなかった。
どうしよう?
このまま何も見なかった事にして来た道を戻るか?
しかしもう終電も開いてる店もない。
だったら裏口から自宅の中に入るか?
いずれも目先の決断をするときは良い結果を求めない事。
そう思った時から数分後。
おかえり!
ちょっと待ってて。先に珈琲入れるから。
今いれたばかりなのよ!
今日は何故か裏口から部屋に戻ったの。
とりあえずあなた珈琲が好きじゃない?!
女の顔を見ないで言う。
どうもありがとう。
でも夜眠れなくなっちゃうからやめとくわ。
それに今刺激物は、、、。
この時、女はそうは言ってくれたものの、
直ぐには女の顔を見る事が出来なかった。
何故ならば、さっきまで玄関の前で失神し、
鼻血をだして倒れていたのだから。
おっかない時間の始まりはじまり。
完。