殺された側の論理 犯罪被害者遺族が望む「罰」と「権利」 / 藤井誠二/著

藤井氏はまえがきにおいて、長きにわたりマスコミでは加害者の代弁者は多くいたが、

被害者の声を伝えることは敬遠されてきたと述べている。

だから自分は被害者の側に寄り添うんだということだろうと思うが、

ジャーナリストとしてはずるい仕事の仕方だと思う。

被害者の声で心を動かされない人はいない。

そういう意味で被害者の声を集めるのは非常に楽な仕事だと思う。

しかし、必要な仕事であることは間違いない。だからこそ、私も本書を手に取った。

本書を読んで率直に思ったのは、

あとほんの少し一人ひとりの人間が人として当たり前の優しさを持ち合わせていたならば、

こんなにも悲しい悲惨な事件は起こらなかったのではないかということだ。

第7章で犯罪被害者に必要な支援について触れているが、

ここで触れられているような支援がさらに拡充していくことが重要だと思う。

最後に、本書もそうだし、最近のマスコミ報道においても顕著だが、

近年、加害者側弁護士への敵意が世の中に溢れている。

しかし、私はそれは違うと思う。

確かに、本書にもあるとおり、本村氏の側に立てば安田弁護士ら被告側弁護人のしていることは、

極悪非道な非人間的な行為だろうし、死刑廃止という活動のために事件を歪めていると映る。

しかし、それは一方的な見方だ。だから複数の視点が必要なのだ。

私が藤井氏に全面的には賛同できないのは、被害者の視点の重要性を訴える彼の主張が、

どちらの側に立つべきかという単純な二者択一の思考に収斂してしまっているからだ。

彼のしていることは逆の立場とはいえ彼が嫌う「マスコミの思考停止」と同じになってはいないだろうか?