ナショナリズムという迷宮 ラスプーチンかく語りき / 佐藤優/著 魚住昭/著

最近、佐藤氏が論壇の新しい知識人として注目されているのはもちろん知っていたのだが、

私が本書を手に取ったのは先日読んだ「野中広務差別と権力」 の巻末に掲載されていた

魚住氏との対談を読んだことがきっかけだ。

私は彼の次のような発言を読み、その鋭くも人間的優しさを含んだ発言に感心し、

佐藤氏に興味をもった。長いが少し引用しておこう。

佐藤 ぼく、その発想はすごく健全だと思う。

人間は何か商売をしないと食っていけないわけで、

だからぼくは、今公判を抱えながら若干文筆をやっている。

これ、食っていくためにやっているんですよ。

それ以前は外交をやったことがあって、これは人を傷つけることはたくさんあった。

ある情報をもってきて、それを流せば、ある人間を叩きつぶすことになるかもしれない。

(中略)

だから魚住さんの人間としての、

書いた作品のあるところで痛みを感じる人がいるという感覚をもっているというところが、

ぼくはこの作品のすごく重要なところで、野中さんという政治家が一流の政治家であることは、

むしろこのテキストの中よりも、テキスト外で証明されているとぼくは思うんですよ。


実際、本書を読んでみて佐藤氏の知識に裏付けられた的確な分析に圧倒させられるとともに、

彼がこれまでの知識人とは何かが違うという思いを強くした。

私なりに分析するなら、彼は間違いなく知識人だが、

知識人特有のエリート意識がないのではないか。

それは彼の経歴に由来しているような気がする。

特に、ホリエモン事件への的確な分析(ホリエモンはすなわち貨幣である)や、

丸山眞男の捕らえ方と、日本人=集団主義という定説の否定の部分など

圧巻としか言いようがない。この人の書くものにもう少し注目していきたい。