3時間近くの長丁場の講演だったが、話に引き込まれていたせいか長くは感じなかった。
お体の調子があまり良さそうではなかったので心配だ。
その辺見氏が冒頭で今は未来のためにあるのではなく、
今という永遠として大事なんだと語ったのは心を打った。
講演の内容を簡潔にまとめることは難しいが、無理を承知で試みるならば、
「言葉」と「記憶」が犯されている現代への危機感と、
単独者としてその現状に抗っていくことであると思う。
辺見氏はギュンター・グラス氏の武装親衛隊所属の告白を取り上げ、
彼の語ったSchande(重く深い恥)をこの国で語る者が皆無であることを指摘する。
そして、この国には一億総懺悔はあっても、主体的な恥や罪の意識は存在しないこと、
皆が悪いとは結局誰も悪くないことと等しいと言い放つ。
そして今また「沈黙の螺旋」という現象がこの国に侵攻しつつあることを訴える。
孤立への恐怖心から多くの人が口を噤んでしまっているという。
一人一人が当事者としてロールプレイングできるかが重要だという。
彼が冒頭で語っていた通り、自身の、そして他者の内心の声に耳を澄まし、
グロテスクなまでの価値観の多様化を拒み、
単独者として迷いながらも、訥々とではあっても言葉を紡ぎ発語していくことが大事なんだと思う。
しかしながら、辺見氏の著作を読んだり、講演を聞いていつも思うのは、
単独者であろうとすればするほど感じる、一人であることの心細さだ。
それでも僕は抗っていくしかないんだと思う。