病後に辺見庸が何を語るのか。そのことに私は大変注目していた。その内容は私の想像をはるかに上回り、戦慄さえ覚えた。本書の中で、辺見庸は自分は自殺を否定しないが、自分は江藤淳のように「自ら処決して形骸を断ずる」とは決して書かないだろうと述べている。この言葉にこそ、辺見庸の生き様が表れている。また、彼は麻痺をもつことによって見えてきたものについてものべている。残りの人生を旅などをしながら穏やかに生きる道を捨て、戦い続ける宣言をした辺見庸の言葉に、我々は心して耳を傾けなければならない。ただ、その辺見庸でさえたった二人で寄り添い歩く盲目の老夫婦に嫉妬を感じたとは、人間とは何と弱々しく、ちっぽけな存在なのだろうか。だからこそ、辺見庸の弱さを含んだ強さに私は魅了され続けるのかもしれない。