ベストセラーはあまり読まないようにしている。この本が最近売れているのは知っていたが、本書を手に取ったのは別な動機からである。先日芥川賞を読むために、文藝春秋を購入したのだが、その中に、藤原正彦氏の「愚かなり、市場原理信奉者」という文章があり、その考え方に共感する部分があった。そこで思い出したのが本書である。それならば1度読んでみようということになったのである。読み終わって、なるほどこれは多くの日本人に好まれる内容であると思った。いま多くの人がまるでアメリカの属国であるかのような日本に少なからず嫌気がさしている。また政府がどんなに否定しようとも露骨になってきた格差に不公平感を抱きつつある。抱きつつあるとは、中々表立って不公平を主張できないのが今の世の中である。表向きは格差とは努力の差ということになっているからである。ただそうではないのは皆が気づき始めている。富める者の声ばかりが大きくなり、貧しき者の声はますますかぼそくなっている。そこに、大切なのは武士道だ、もののあわれだと来るわけである。皆が喜んで読むのも当然である。だがしかし、なぜか物足りない。非常に表層的な気がするのである。まるで文藝春秋の文章を薄めて引き伸ばしただけのような気がするのである。私ごとき凡人が偉そうなことを言わせてもらえば新自由主義に対抗できるような思想にまでは昇華できていないというのが率直な感想である。