遊んでいたら、魚がいた。
「僕と一緒に泳ごう」
魚の背びれをつかまえて、色んなところへ連れていって貰った。
赤いワインの海があった。
2人でどろどろに酔った。
魚の背びれから、腕が離れてしまった。
「あっ」
あっという間に、暗い海の底に放り出された。
海底では、いかがランプを持って、お散歩をしていた。
「あいたた、、。あ、いかさん、こんにちは」
「こんにちは」
「さっき、魚さんとはぐれてしまったの」
「海は広いからね。また、巡り合うかもしれないし、もしかしたら、君は今夜、別の魚につかまって、抜け出しているのかもしれないよ」
「そんなの、想像できない」
「大丈夫。タクシーもいるよ」
動きの速い太刀魚が、上の方で、びゅんびゅん飛ばしているのが見えた。
「この際だし、海底をお散歩して、それから上へ上がるわ」
「そうか。わかった。気をつけて」
ランプを持ったいかが離れると、また辺りは暗くなった。ぼぉっとした光が、向こうから近付いてくるのが見えた。今度は、ぴかぴかした黄緑色のウミウシだ。
体をくねくねさせて、うねった所が光っている。そしてたくさんの電飾をしていた。ウミウシは、大きなのびる触覚の下に隠した目玉で、女のこの顔を見て、言った。
「こんにちは」
「こんにちは」
と、女のこも言った。
はじめは不気味に感じたが、愛敬のあるウミウシに、女のこは笑顔になった。
「此処は、暗いんですねぇ。あなたのようにぴかぴかだと、困らなくてすむのに」
「私は、皆の明かり。皆を明るく照らす事が、目的なのさ」
「あら、あなたって素敵なのね。皆を照らしてあげられるなんて」
そう言って、ウミウシに手を触れた瞬間、
ガボッ
と、ウミウシに喰われてしまった。
可哀想に、女のこは、ウミウシの腹の中。
ウミウシに取り込まれた女のこは、ウミウシと一緒に、ゆっくりゆっくり移動していった。
そこへ、最初に女のこと泳いでいた魚がやって来て、ウミウシに尋ねた。
「ねぇ君、女のこを見なかった?金色の髪を2つに結んだ、赤いワンピースのこなんだけど」
ウミウシは、知らん顔。自分が食べたなんて、言えない。
ところが、ウミウシは透けているので、中で女のこが涙いっぱいに叫んでいるのが見えた。
「あ、その子!お前、食べちゃったのか?出せよ、吐き出せ!!」
しかし、ウミウシは知らんぷり。
あまりにも、魚がせがむので、
「それなら、お前も喰ってやる!」
ウミウシは、うねうねの足を上げて、口を思いっきり開き、魚に襲いかかった。
魚は、ヒュンと避けて、ウミウシの後ろに回り、電飾の紐を口にひっかけて、ウミウシを逆さまにしたまま、浮上した。
「出せ出せ!お前、吐き出しやがれ!」
ウミウシを思っきし、めちゃくちゃ揺らすと、ウミウシはぐえっと詰まったかのような音を出し、女のこを吐き出させる事に成功した。
「なんだよ、ゆっくり喰おうと思ってたのに」
ウミウシは、ぼやきながら、ゆっくりと海底へ落ちていった。
吐き出された女のこを、魚は無事にキャッチした。
「ごめんよ、1人にして。怖かったろ?」
「ありがとう、助けてくれて。うろうろしてた私がいけなかったの。もう一度、魚さんに出会えて嬉しいわ」
女のこは、魚にぎゅっと抱きついた。
あぁ、守ってあげたい。魚は、そんな気持ちになった。
「お守りだよ」
魚は、大きな真珠をプレゼントした。
「真珠が灯りとなって、君が何処へ行っても、僕は君を見つけ出す事ができる」
「ありがとう」
女の子は、とても嬉しくて、魚にキスをした。
「次は、何処へ行く?」
「カクテルの滝壺!!」
はははは、、、
2人はとても幸せだった。