それらすべて愛しき日々。 39 | usatami♪タクミくんシリーズ二次創作小説♪

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タクミくんシリーズの二次創作です。
usatami のこうだったらいいのにな~♪を細々と綴っております(〃ω〃)
覗いていただけてら嬉しいです(’-’*)♪

彼の人の下まで届けと。
今持てる限りの力で歌い上げるバイオリンの音色に酔わされて。
終わってみれば、そこがステージの上だったことさえも忘れ去っていた。
ダウンで弾き切った弓が深く厚く響かせた最後の音に絡めとられて、満たされて。
ほぅ、と息を吐いた直後に起こった大きな拍手に急速に現実へと引き戻される。

そうだった!
今更ながらに本番だったことを思い出して、慌てて客席へと一礼する。
くすくす、と笑う声が聴こえた気がするけど気のせいということにしよう。
熱心に拍手を送ってくださる聴衆の皆さんに感謝を込めて。
ピアノ伴奏の彼女ともう一度お辞儀をしてステージ袖へと退場した。

『タクミ!もう、最高~!貴方の伴奏ができて本当に良かったわ!』
舞台裏へと一歩踏み込んだ途端、先を歩いていた彼女が興奮した様子でくるりと振り返って、尚且つ言葉のみに留まらず態度でも示してきた。
つまり、かなりの勢いでもって抱き付いてきたのだ。
「わわわっ。」
咄嗟の事に、そして両手にバイオリンと弓とを持っていたが為に避けることも出来ず。
不本意にもなすがままにされてしまう。

『タクミともうお別れなんて。残念だわ。』
『え、僕ももっと皆といたいけど・・・えっと、あの、その・・・ちょっと離れて・・・・っ。』
おおー。
熱いなぁー。
なんて
無責任にも面白おかしく盛り上がる周りの反応に、塞がった両手でどうすることも出来ずおろおろしていると、すっと伸びてきた腕が窮地から救い出してくれた。

『失礼。彼の出番は終わりですね?
その腕の持ち主は目の覚めるような完璧な美貌と大人の男の色気、そしてヒヤリとするような冷気を纏って彼女との間に割り込んでくる。
誰もがひれ伏さずにはいられない、まさに王者の気配を発する彼の姿に、その場に居合わせた者は圧倒され、魅入られる。
『では、彼は俺と約束があるので。』
誰も一言も発しない、いや、発することの出来ないでいるその場から鮮やかに身を翻した彼の掌はしっかりと僕の手を捕らえていて。
今、目にしている光景がまるで夢のようで。
いつものように目覚めると消えてしまう幻のようで。
でも手首に痛いほどに食い込んでくる彼の掌の感触に。
これは本物なのだとやっと実感する。

どうして?
何故?
沸き上がる幾つもの疑問に襲われながらも。
久しぶりに、本当に久しぶりに感じる彼の体温に目眩を堪えて。
震える唇に大切なその名を載せる。

「・・・・・・・・ギイ。」