途切れた言葉。
揺れる瞳。
託生にこんな貌をさせたのは不甲斐ない過去の自分。
だが、今のギイは違う。
ふわり、と。
ウサギのぬいぐるみごと託生を抱き締める。
「託生、ごめんな。でも信じて欲しい。今まで俺のしてきたことを。お前とのこと誰にも文句なんて言わせない。それだけの力はつけてきた。」
この腕に感じる幸せな温もり。
二度と失いたくないから。
「親父にも。誰にも、何も言わせない。だから、頼む。このまま俺の腕の中で守らせてくれよ。・・・俺の為に!」
「ギイの為・・・?」
抱き込んだ腕の中から戸惑いに揺れる声。
「ああ、そうだよ!」
いい加減、気付けよ!
俺がどれだけ本気でお前を愛しているか。
お前以外に欲しいものなんてない。
もしも、お前がいなくなったら・・・俺の世界はそこで終わる。
俺の周りで何度季節が巡ろうとも。
俺の世界は凍りついたまま。
きっとお前との幸せだった日々の記憶に逃げ込み、一歩も動けないまま俺の時間は終わるんだ。
俺を生かせるのは託生だけ。
だから。
「・・・頼むよ。」
いつも余裕で、自信に満ちているギイ。
そんなギイの言葉とは思えない程、その声は弱々しくて。
思わずいいよ、と言ってしまいそうになる。
ギイの言葉を全部信じたい。
だけど。
あの時みたいにまた、突然引き離されたりはしないって、どうして言えるのだろう。
やっと繋がったこの手を、もう絶対に離したくない。
その為にも間違える訳にはいかないのに。
ギイのいる世界は遠すぎて・・・僕たちにとって何が正解なのか僕には全くわからないんだ。
「少し・・・考えさせて・・・。」
複雑な表情で、託生はぽつりと呟いた。
俺のやらかした手痛い失敗で付けてしまったキズ。
未だ塞がらないソレが時折託生を苦しめていると知っていた。
このウサギが託生の下にやって来た理由もソレだった。
少しでも癒したくて。
だから、
俺を信じたくて、でも信じきれない。
託生の苦しい気持ちが手に取るようにわかる。
そんな託生に堂々と伝えられたらどんなにいいか。
これは公私混同なんかじゃない、って。
お前が心配するようなことは何もないのだ、と。
だが、それでは約束を破ることになる。
親父との新たな約束。
いくつかあるうちの一つ。
実は親父は俺と託生のことを認めた。
いや、正確には認める予定なのだ。
提示された約束を全てクリアできれば、だが。
でも、このことは託生には知らせられない。
それこそが約束の一つだから。