母親の一言で10万円が「無駄遣い」に思えた日
先月から思い立って、整体に通い始めた。人生初の整体。前々から興味はあった。「私、産後ケアとかしなかったし、骨盤とかめっちゃ歪んでそう。姿勢も悪いし、姿勢変わるだけで印象変わるって聞くから、行ってみようかな」そう思って、ドキドキしながらも予約して行ってみた。結果、感動した。最初に横から撮られた写真では、気をつけをした姿勢のまま前に30°くらい倒れていた。肩も頭も壁に付かない。付けようとしても付かない。そんな状態だった。それが、施術後はぴったりと壁に体がくっついた。あんなに付けようとしても付かなかった頭が、肩が、背中が、壁に付いた。ビフォーアフターの写真を見て「こんなに変わるのか!」と感動した。お金をかけてプロに施術してもらうと、私の体はちゃんと姿勢が良くなるんだとわかって、嬉しかった。だからこれからも続けたいと思って、一番回数の多いコースを契約してきた。金額は約10万円。それなりに高額で、散々悩んだ。でも「今、せっかく機会を得たし、プロに整えてもらおう」そう思い、契約をした。自分のために、お金を使えた。長期的に見てもいい選択をした。これから通い続けて体のメンテナンスをしてもらおう。そう思っていた。でも、母親からの言葉と反応に、私は「自分の選択は間違っていたのだろうか…」と心が冷えた。―――4月2日、午後3時過ぎ。私は実家で母親と子供と3人で、こたつに入っていた。4月になってもまだ寒い日は続くなと、足を伸ばして暖をとる。おやつの時間ということで、緑茶を淹れ、私の好きな黒糖まんじゅうを母親と食べていた。子供は好きなチョコ菓子を食べ終え、のんびりタブレットを眺めている。「最近ストレッチしてるね」母親から投げかけられた言葉。整体のお店から毎日少しでもやってみてとインスタでストレッチ動画がきていて、実家でもやっていた。「うん、整体に通い始めたの」「そうなんだ、行ってみてどう?」「すごくいいよ!一回の施術でかなり姿勢良くなるし、通い始めて良かった!毎週一回行ってるの」整体の良さを力説する。母親にもその良さをわかってもらいたかった。「毎週行ってるの?」「うん、そう。全部で17回のコースに契約して、今は毎週行ってるけど、そのうち月に1回とかになってメンテナンスしていく感じ」ゆっくりと緑茶を飲む。少し熱めで美味しい。「えっ、そういう感じなんだ?ちなみにいくらしたの?」「10万くらい」そう答えたあと、母親が目を見開いた。そして呆れたように言った。「10万?!うわっ、たっかー!!」そう言われたとき、自分の思考も動きも止まった。あんなに熱く語っていた、ワクワクしていた気持ちが一瞬で冷水をぶっかけられたように冷えた。え?高すぎる?私は無駄遣いしたの?そんな高価なもの契約したのは間違いだったの?そんな思考で脳内が埋め尽くされた。「…まぁ、効果はあるみたいだし、続けてみたら?」「…そうだね」それだけ言うと、黒糖まんじゅうを齧った。好きな味なのに、美味しいと思えない。あんなに契約して良かったと思っていた整体が、自分が散財したものに思えた。やっぱりやめとけば良かったと思った。私はまた無駄遣いしたんだと思った。母親からの一言で、私の考えは180°ひっくり返ってしまった。子供のタブレットから流れてくる音楽が、どこか遠くにぼんやりと聞こえた。――――今思えば、母親は私に一言も「無駄遣いした」とは言っていない。でも、母親の反応や言葉に自分の価値観が揺らいでしまった。母親の言葉が「整体は高いな」という意味だけだったとしても、私は母親の反応や言葉を気にしているんだと思った。母親が肯定的な反応をしてくれたら「私は正しいことをした」と思える。逆に、否定的な反応をされたら「私は間違ったことをした」と思う。私はまだ、小学生の子供みたいに母親の言うことが全てだと、どこかで思っている。だから、母親にとっての「いい子」でいたい。自分の軸を持てないのはつらい。常に母親のことを気にしていたくない。だからこそ、これから半年かけてそこに向き合う講座に入った。半年後、こんな風に思っていた私がどう変わっているのか、怖いけど少し楽しみにしている。