内科検診着衣問題 正解はどこか? | うさこのひとりごと

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保健室の先生やってます

本日の私の記事は、うさこ個人の呟きであって、養護教諭全員の意見ではないし、あなたの身近な養護教諭と私は別人です。また、反対意見の方と議論するつもりもありません。

そういう考え方もあるのか、そういう現実があるのかと、客観的に読める方だけご覧ください。
















4月から始まった健康診断。授業の合間をぬってやっていたけどやっとひと段落。

 

一応6月30日までに健康診断は終えればいいんだけれど、プールの授業が始まる前には、内科はもちろん、眼科耳鼻科検診も終えて異常があれば家庭に連絡し、病院受診を完了しないといけないから大変。

 

一方で、内科検診を脱衣で行うのか着衣で行うか・・・がネットだけではなくリアル社会でもいろいろと問題になっているようで、今年はかならず保護者に、いろいろと事前通達しないといけないことになった。

 

ちなみに「着衣の上からの聴診」を学校医に打診したら「無理!!」とたった一言で終了・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自分が小学校の時には、教室で服を全部脱いでパンツ1枚で保健室に移動していたし(胸の大きい子だけスリップを着てよかった)

 

平成の初めまでは「胸囲」の計測があったから、女子もブラを外して計測していた。

 

でも、今時胸をあらわにして内科検診を行っている学校なんてあるのか?!と思うし

うちの学校で言えば男子も女子も体育着を着たままで、裾を自分で持ち上げてもらって聴診器を体育着の中に入れて聴診してもらっている。学校医は聴診器しか触ってない。

 

でもそれができるのは聴診だけで、着衣で内科検診をするなら、その他の項目は今の検診時間ではできない。

 

 

というわけで今年、原則着衣の通知が出たんだけどこれがまた「ずるい」表現で・・・

 

「正確な検査や診察に支障のない範囲」で原則、体操服や下着を着用することとした。

 

なわけで・・・

学校医が正確な検査や診察に支障があるから体操服や下着の着用はだめだ!!と言ったら

学校はそれに従うしかない。

 

でも、なんで着衣でやらないのか!というクレームは当然「学校」や養護教諭に来るわけで・・・

 

結局は矢面に立たされるのはわたしたち。

 

いや、逆にもしこれが、直接学校医の病院にクレームが行ったりしたらもっと大変!!(だいたい、学校医というのは保護者に紹介されているから) 

「こんなに大変で割の合わない内科校医なんてやめさせてもらう!!」って言われるかもしれない。


そう思っていたら、実際に学校医がSNSに晒されたらしい。




 

学校医というのは立候補してとか、ぜひやらせてくれ!と言ってやっている人はごく少数。

新しく学校医になる先生というのは、医師会の中で新しく開業した人とか、いろいろな力関係の中で引き受けざるを得ないことが多い気がする。そして一度引き受けたら最後、病気で自分が医者をやめるか亡くなるまでやめられない人もいる。(私もこういうパターンを経験している)

 

聴診一つとっても、病院で1日かけても200人も聴診することはないだろうに.

内科検診では1時間で200人の心音を聞き、異常を聞き分けないといけない。

しかも、いくら静かにしなさいと言っても黙れない子たちもいる中で、速さと正確さを要求される。

 

もちろん報酬は支払われるけれど、おそらく医師の報酬としては決して高くはないと思うし

たいていは病院の昼休みに来るので、昼ご飯も食べずに駆けつけて、検診が終わり次第午後の診察に戻っていく先生も少なくない。

 

しかも・・・

 

内科校医が近くの学校になるとは限らず・・・

いろいろなしがらみや、いろいろなことから、線路を超えて・・・とか車で20分以上かかるところから

来てくれることも珍しくない。

 

もちろんみなさん責任感があるから、引き受けた以上は本当に一生懸命やってくださっているので頭が下がるし

ありがたいと思ってお願いしている。

 

のに・・・

 

あたかも生徒を性的対象として見ているようなものの言い方や、男性はいやだ、女性の校医にしてくれ!!というのはどうなんだろう。

 

ご自身の周りの病院を見回したときに、女性の内科医がどれだけいるだろうか?

 

市内には多くの小中学校があり、何千人という女子児童生徒がいる。

しかも学校には男子も女子もいるわけで、一つの学校に男性と女性の校医を同じ日に都合を合わせて配置するなんて実質無理だし、予算もない。

ましてやこの日は男子だけ、この日は女子だけ・・・なんて、授業が成り立たない。

 

もちろん、言っていることはよくわかる。

気もちもよくわかる。

 

でも限りある人材と限りある予算で、どこが落としどころなんだろう?

 

ちなみに内科検診の決められた項目は聴診だけじゃない。

 

 

 

正直私が一番怒っているのは文部科学省に対してだ。

 

 

一般社会向けには「原則着衣で」なんて、いい顔をしておきながら、学校保健法には着衣では難しい検査項目がそのままのくせに、

 

「正確な検査や診察に支障のない範囲」で原則、体操服や下着を着用することとした。なんていうずるい表現で責任逃れをしている。

 

おまけに養護教諭のための「児童虐待対応の手引き」には「内科検診では、 不自然な傷・あざ、衣服を脱ぐことや診察を非常に怖がるなど」が、虐待を発見するための健康診断時における早期発見の視点」だって言っているわけで・・・

 

 

「衣服を脱ぐことや内科検診を非常に怖がる」場合には虐待を疑う視点を持つように!って言っておきながら、着衣が原則・・・って。

この視点で言えば、脱衣に過剰に反応する子供や保護者に対しては、虐待の可能性も考えるように!って指示されているのにね。

 

それに「皮膚疾患」ついては個室あるいは個室に準じた場所を確保したうえで「全身を視診」すると明記しているし

 

 

この絵が児童生徒の健康診断マニュアルに明記されてますからね。

 

全身を視診するようにと指示し、内科検診の医師記入例として明記してある一方で、原則脱衣でやるようにって、医師会があえて声明を出したくなる気持ちもわかる。

 

 

文部科学省が原則着衣というならば

医師会の出した声明の中にあった「学校健診で定められている11項目のうち、服装が健診の範囲や精度に影響する項目▽脊柱および胸郭の疾病および異常の有無、▽皮膚疾患の有無、▽心臓の疾病および異常の有無」の中でも特に脊柱及び胸郭の疾病及び異常の有無と皮膚疾患の有無は必須項目から除外するべきだと思う。そのうえで、「着衣の状態で可能な範囲で行う」任意の項目にすればいいと思う。

 

そして養護教諭の児童虐待の手引きの中にある内科検診の項目も除外してほしい。着衣の状態の内科検診で虐待発見は難しいから。

 

・・・・

 

 

でも、これが内科検診着衣脱衣問題の落としどころ・・・というか「世の中の人」や児童生徒はこれを望んでいるんだろうか・・・

本当にそれでいいんだろうか。


個人で病院行って結果を出させればいいという人もいるけど、行かない家庭が1番問題ある。「精密検査が必要」と言われても病院に行かない家庭が、健康診断のために仕事を休んで平日の昼間に病院に連れて行くだろうか。

そして、毎年4月から5月に、市内の小中高校生が近所の内科に殺到して大混雑になるけど、みなさん大丈夫ですか?具合が悪くて病院に行くと、元気な子供たちがたくさんいて、静かに待てないかもしれないけど大丈夫ですか?駐車場もあふれるかもしれないけど大丈夫ですか?


希望調査や承諾書とれっていう人もいるけど、

この働き方改革が叫ばれている中逆行してる。

保護者から何かを回収するの、どれだけ大変か。


今この社会は、学校に無理難題を要求してきた結果、子供の教育を担う教員がいないという危機を現実に見ているのに、子供の健康を診てくれる学校医がいなくなるかもしれないという危機を想像できないことに驚いてる。