本人がいじめと思ったらいじめ・・・という功罪 | うさこのひとりごと

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平成25年(2013年)にいじめ防止対策推進法が施行され、いじめの定義が法律に書き込まれた。

 

第2条
この法律において「いじめ」とは、児童等に対して、当該児童等が在籍する学校に在籍している等当該児童等と一定の人的関係にある他の児童等が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって、当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているものをいう。(いじめ防止対策推進法)

 

 

・心理的又は物理的な影響を与える行為

・当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているもの

 

 

ということは、誤解を受けることも前提に言えば

本人がいじめと感じたらいじめだ・・・ってこと。

 

それが、社会的に見たらささいなことであっても

本人に影響があればいじめ

本人がいじめと思えばいじめ

 

 

そもそも学校で集団生活をするということは

良くも悪くもお互いに心理的または物理的に影響を与え合っている。

 

っていうか、それが集団生活の意味でもある。

 

でもその「影響」が、ある生徒にとっては「苦痛」だと思ったら

その瞬間それはいじめになり、

その生徒は被害者となり

影響を与えた生徒は加害者となる。

 

うちの学校の事例だけど(もちろん脚色している)
 

 

Aという生徒とBという生徒がいた

AはBと出かける約束をしていたが待ち合わせの時間になってもBは

来なかった。Bは、自分がAを誘っておきながら忘れてしまったのだ。

 

怒ったAはそれを別の友人Cに

「昨日Bと遊ぶ約束をしていたのにすっぽかされた。そもそもBが誘ってきたのに!」と愚痴を言った。

するとCはBに「昨日Aと出かけるの忘れたんだって?Aがかわいそうだよ」と言った。

 

するとBは、「AとCに悪口を言われたから、怖くて学校に行けない」と言った。

 

はい、悪いのはだれでしょう???

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

答えはAとCによるBへのいじめです。

 

だって、Bのお母さんが「うちの子がAとCに悪口を言われたせいで学校に行けないと言っている。これはいじめだ!」と言ってきたから。

 

 

 

もしここで、

「でもさ。Bが約束を忘れてすっぽかしたんでしょ?!

あなたも悪いんじゃない??」

 

そんなことを言ったら「被害者にも悪いところがあったのではないか?」と教員に言われた!!と、教育委員会に苦情が行きます。

 

 

最後はAとCがBに謝罪して、Bは学校に来ることができるようになりました。無事に「いじめ」は解決し、めでたしめでたし。

 

 

 

この事例はまさしく

AとCの発言で、Bは学校に行けなくなるという物理的な影響を受け

こわくて学校に行けないという苦痛を訴えている、いじめ案件・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これでいいんだろうか?

 

今生徒たちはとても被害的だ。

 

悪口を言われているに違いない

笑われたに違いない

にらまれたに違いない

 

自分が相手に与えた「影響」は考えず

 

自分がされたこと、感じたことばかり主張する。

 

もちろん学校は、文科省通達の通りに動くので

Bはいじめられた・・・ということで、

被害者であるBの気もちに寄り添って対応する。

 

 

が・・・

 

約束をすっぽかされたAと

そのAを気の毒に思って正義感からBに伝えたCの気もちはどうなるんだろうか?

 

 

いや、

AもCも、今後はなるべくBと関わらないよに気をつけたり

最終的には中学校を卒業すれば、(違う学校に行けば)縁を切れる。

 

だって、いじめの定義は

「当該児童等が在籍する学校に在籍している等当該児童等と一定の人的関係にある他の児童等」だから。

 

 

でもBはどうだろうか?

 

自分のしたことはわからず、やられたことばかりを主張し

常に被害的

 

そもそもAが言った

「昨日Bと遊ぶ約束をしていたのにすっぽかされた。そもそもBが誘ってきたのに!」は、悪口なのか?

Cが言った

「昨日Aと出かけるの忘れたんだって?Aがかわいそうだよ」は悪口なのか?

 

長野県の残虐な事件・・・

 

「悪口を言われたから」ではなく

「悪口を言われていると思って殺した」

 

 

中学校あるあるの事例で想像すると・・・

 

・被害者の女性二人の声が大きかった

・加害者の家の前が散歩コースだった

というニュースの情報が正しければ

 

 

もしかしたら家の前を通るときに、

「〇〇さんの息子さん、家にずっといて仕事も行かないんだって。奥さん困ってたわ」

 

そんな話をどちらかがしたのかもしれない。

 

いや、もしかしたら「〇〇さん」と、仲の良い犯人のお母さんのつもりで名前を出したのかもしれない。それを、自分のことだ!きっと自分の悪口を言っているに違いない!!と思いこんだのかもしれない

 

いや・・・

 

そもそも話題にもしていないのに

家の前を大声でおしゃべりしながら毎日歩いているあの二人は

きっと自分の悪口を言っているに違いない

 

そう思い込んだかもしれない。

 

どれもこれも、中学校での「悪口を言われているに違いない」というトラブルのあるあるだ。

 

何年も前から、学校に必要なのは認知行動療法ではないかと思っている。

それくらい、認知のゆがみや思い込みが強い生徒が多すぎる。

 

本人もつらいけれど

その認知のゆがみに巻き込まれる生徒もいる。

 

 

今回の事件の犯人の言う

 

 

「悪口を言われていると思った」が実際にはどういうことだったのかはわからないけれど

 

「自分がいじめだと思えばいじめなんだ」という考え方は

 

もちろんいいこともたくさんあるけれど

 

本人の生きづらさの原因になる考え方や認知のゆがみを肯定し

強化することにならないか

 

日々生徒のトラブルを見て

将来を心配していた矢先のこの事件・・・

 

 

この先、

 

こういう思い込みから相手を攻撃する事件が

増えないことを願うばかり・・・