いつまで立っても埒の明かない不毛な会話が続いていた・・・。
そもそも、最初に話し合いをしようと言いだしたのはアンスバッハだった。
多分・・・1人で抱え込むには大きすぎる現在の状況。
彼は、私達以上に公爵の間近にいる人間だ。
打開策を見出したくなるのは当たり前で、私にはアンスバッハの気持ちが痛いほど分かった。
だから私はそれに即座に応じ、傍らにいたフェルナーを見やる。
「・・・話し合いをしてすぐに解決するとは思えませんが。多分・・・やるだけ無駄だと思いますよ」
フェルナーは面白く無さそうに答えた。
「・・・それでも、考える事は必要だ。それを卿は無駄だと思うか?アンスバッハの気持ちが分からん卿でもあるまいに」
私が問いかけると、フェルナーは「そうですが・・・」と答えた。
「・・・確かに無駄かもしれない。だが、何かをしていた気分と言うものがあってな・・・。話し合いと言っても強制参加ではないし、来たくなければ無理にとは言わん」
アンスバッハは普段の彼にしては歯切れ悪く声を出した。
「いえ、有意義な話し合いを期待して参加させて頂きます」
姿勢を正してフェルナーは真顔で答えた。
こうして、アンスバッハの私邸の一室に3人は揃ったのだ。
もう2時間も経とうというのに出口が見えない。
いや、出口どころか、ますます混迷を深めていく感じで、全員渋い表情で溜息ばかりを付いている。
外も、昨日から雨続きでじとじとしているが、空調が効いているはずの室内も、じっとりとした重苦しい空気が澱んでいる。
「あ~もう。八方塞がりだな」
フェルナーがぼやく。
「・・・本当に頭が痛い。・・・こりゃ、気分転換が必要だな・・・」
重苦しい雰囲気に嫌気がさしたのだろう。
フェルナーはそう言って、手入れの行き届いた革張りのソファーから勢い良く立ち上がる。
首を回したり、腕を伸ばしたり、肩の凝りをほぐしているが、私の目から見て肩が凝っているようには見えない。
ただ単に彼なりの気分転換をしているらしかった。
そしてまたソファーに座ると憮然として表情で腕を組んだ。
私はそんなフェルナーを見ながら深い息を吐いた。
フェルナーは口は悪いが、明るいのがとりえの男だ・・・その男が塞ぎ込んでいる姿など似合わない。
彼だからこそ、気分転換に身体をほぐしたり動いたのであろうが、私は気分転換も何も、動く事すら億劫になっていた。
「ふう。それにしても、もう少し何とかならないのですか?公も本当に頑固で困ります。もう少し物分りが良いといいのですが・・・」
苛立つ感情を何とか押さえ込んで私がそう訪ねると、アンスバッハは苦渋の表情を浮かべて首を振った。
「・・・良い打開策があればいいのだがな。我々が苛立ったところで、もう、どうにもなるまい。もはや、どうあがいてもあの方の怒りを静める事は出来ぬし、後戻りは不可能なところまで来ている。今更、反対の立場の者達に歩み寄るなど言語道断。それは、卿にも分かるだろう?」
「それはそうですが。それにしても、困りましたな・・・何か手を打たねばならないというのに」
私は何度目か分からなくなった深い息を吐いて顎に手を当てた。
“途方に暮れる”とはまさにこの事だ。
昔から、“三人寄れば文殊の知恵”と言うが、集まってみたところで上手い対処方法が見つけられずに苛立ちは募るばかり。
考えれば考えるほど頭痛の種が大きくなってゆく。
フェルナーが“八方塞がり”とぼやく気持ちも分かる。
やはり、話し合いは無駄だったのか・・・私は気落ちしていた。
テーブルの上に置かれた3つのコーヒーも、まるで私達の心のように、すっかり冷め切っていた。
・・・とても優雅にコーヒーなど飲む心境になれずに、誰も手をつけようとしなかったからだ。
「こうやって顔を揃えてみたところで建設的な意見が出る訳でも無し。時間だけが無駄に過ぎてゆく・・・不毛だな」
突然フェルナーは組んでいた腕を外してぼやき、不意に冷めたコーヒーカップに手を伸ばした。
「おい、それを飲むつもりか?冷め切っているのに」
冷めたコーヒーが苦手な私は思わず声を出した。
「あ・・・口を湿らすだけですから」
私の問いかけにフェルナーはそう答えた。
「フェルナー。卿はこの会合を不毛と言うが、それでは卿には何か妙案でもあるというのか?あれば聞きたいものだが」
急にアンスバッハに尋ねられて、フェルナーは一瞬意外そうな顔をしたが、小さく頷いた。
「まぁ、あるにはありますが。・・・これはまたしてもない妙案です。あの・・・話しても構いませんか?」
「言ってみろ」
アンスバッハに促され、先程までとは打って変わって、フェルナーの顔には生気が漲った。
「・・・正攻法に拘らなければいいんです」
「・・・と言うと?」とアンスバッハは、心もち、身を乗り出した。
「真っ向勝負などと考えるから八方塞がりになるんです。ここは手段を変えるべきだと思います」
「手段って・・・卿は何をしよう言うのだ」
私が口を挟むと、フェルナーは微笑した。
「別に特別な事をしようとしている訳じゃないですよ?まぁ・・・手っ取り早くですね、金髪の孺子<こぞう>の暗殺なり、奴の弱みを握るなりしてさっさと排除してしまった方が後々楽になると思いまして」
私は思わず息を飲んだが、フェルナーはにこやかな表情を浮かべている。
「この際、卑劣漢だのと謗りを受けようがどうしようが、やらなくてはこちらが不利になるだけですからね」
明るく『暗殺』だの『弱み』だのと言う言葉を口に出すフェルナーとは反対に、私の表情は硬くなっていた。
「・・・大体、叩いて埃の全く出ない人間なんてこの世にはいないですからね。探そうと思えば幾らでも出て来るはずなんですが・・・ね」
彼は不味そうにコーヒーを一口啜った。
私も『暗殺』については考えていたが、さすがに口には出せないでいたのだ。
「そうか・・・卿は暗殺を考えているのか」
アンスバッハの表情も曇っている。
「はい、その通りです。暗殺してしまえば多少は楽になりますよ。少なくとも今よりはずっと・・・ね。あ・・・2人ともそんなに渋い顔をしないで下さいよ。これ以上の案は無いと思いますが・・・」
私達の表情を見て取ったフェルナーは首を竦める。
「こうなったら、手段を選んでいる暇なんてありません。成功する可能性の高いものを実行すればいい。暗殺なんてのは手段の一つでしかないのですから」
「暗殺か。確かに選択肢の1つではあるが、いいか、それは最後の手段だ。余計な事はしてはならないぞ、フェルナー」
“暗殺”という言葉を明るく言うフェルナーに対して、アンスバッハは渋い表情を浮かべて、改めて年下の僚友に鋭い視線を向けた。
釘を刺された格好のフェルナーは首を竦めて、カップをテーブルに戻した。
幾ら高級なコーヒーでも淹れてから2時間も経つと不味いらしく、殆ど飲んでいなかった・・・本当に口を湿らしただけのようだった。
「最後の手段と言われても・・・。決着を早めれば、こちらは優位に立てます。金髪の孺子<こぞう>を排除してしまえば、あとはリヒテンラーデ公だけでしょう?いくら公爵であっても、ブラウンシュヴァイク公やリッテンハイム候の足元にも及びませんよ。それに、彼等に付いている貴族達も、ブラウンシュヴァイク公に立てつく度胸はないでしょうし。よって、孺子<こぞう>の暗殺は得策だと思いますが」
「それはそうかもしれんが・・・」
アンスバッハは汗を拭いた・・・フェルナーの言動に危険な物を感じたのだ。
「それに、孺子<こぞう>が駄目なら、この際・・・標的を変えて姉を・・・という手もあると思いますが?それでも駄目なら、奴の赤毛の腹心の部下の弱みでもいい。それ以外の部下達の弱みを握って揺さぶりををかけるのも手ですし、この際、孺子<こぞう>の弱みに繋がる事なら何でも利用すべきですよ。貴族のプライドなんかかなぐり捨てて、やれる事はやってみた方がいいんですがね」
“貴族のプライドをかなぐり捨てろ”と言われて、アンスバッハの表情は益々渋くなり、私は押し黙っていた。
平民のフェルナーはともかく、私もアンスバッハも一応は貴族なのだ。
フェルナーは自分で自覚しているのか、言動が少々過激なので、私はいつもハラハラさせられる。
「この際、何でも良いから、孺子<こぞう>の外堀を埋めてしまえばいいんです。暗殺にしろ、誘拐にしろ、部下の不祥事をでっち上げでも何でもね。やり方なんて幾らでもありますよ。なんなら幾つか立案してみましょうか?仕事柄、小官はこういう作戦を立てるのは得意中の得意ですからね」
「・・・フェルナー!」
アンスバッハに睨まれた諜報部員のフェルナーはまた首を竦めたが、萎縮するどころか、益々不遜な表情を受かべる。
「・・・ですが、孺子<こぞう>より、まず姉を標的にした方が事を確実に進められるのは明白でしょう?手をこまねいていて、不毛な戦いに巻き込まれる民衆の事も考えないと。ただ勝てばいいという話じゃない。その先が肝心でしょう?治安維持局の力を借りるのも手ですしね」
『治安維持局』の名前まで出して不適な笑みさえ浮かべるフェルナーに私は呆れたが、彼の言には一理あった。
だが、フェルナーの主張する案を公爵に飲ませるのは一筋縄では行かないというのも分かっていた。
「それにしても・・・立案する卿は嬉しそうだな」
私が呆れていた。
「おや、そんなに嬉しそうに見えますか?元々火遊びは大好きですから。勿論、火傷しない程度にやるのが一番ですが・・・ね」
フェルナーは、冗談とも思えぬ表情を浮かべていた。
「その考えは余計だ。・・・いいか、勝手な行動はするな。フェルナー・・・時には自重も必要だ」
アンスバッハは嬉々としたフェルナーを苦虫を潰したような顔で見やった。
フェルナーの翡翠の瞳に室内の灯りがうっすらと反射する。
彼は数瞬黙った後で、アンスバッハに向かって「・・・自重ですね。分かりました」と小さく呟いた。
ラインハルト・フォン・ローエングラムが邪魔ならば、彼を暗殺するか、弱みを握ってしまえば、確かにこの内戦自体は早く決着が付くだろう。
そして、彼の姉の存在。
見た目は穏やかそうな美人に見えるが、皇帝陛下を妖しい色香で惑わすこの女を何らかの形で排除してしまえば・・・。
そうすれば、あの目障り極まりない金髪の孺子<こぞう>に、相当なダメージを与える事が出来るはずだ。
それが駄目なら、彼の責任を問えるような部下の不祥事をでっちあげてもいい・・・それこそ、治安維持局を巻き込むのはいい考えだ。
危険ではあったが、私もフェルナーの考えには賛成だった。
無益に戦っても得る物は少ない。
しかし、公爵は分かっておられるのかどうか・・・。
肝心の暗殺にしろ不祥事のでっち上げにしろ・・・如何にして実行に移すかであったが、当の公爵はこの案には、はなから反対であった。
「暗殺などもってのほかだ!貴族は貴族らしく正々堂々と勝負するのだ!貴族は卑怯であってはならん!」
そう息巻いた公爵。
私やアンスバッハは、この人の今までの卑怯な人生をどう説明するのかと、眩暈を覚えた。
私は意を決してローエングラム候の暗殺を懇願し、その理由を説いたが、公爵には全く聞き入れられず、反対に『わしの顔に泥を塗りたいか』と散々に罵られた。
とどめの一言、『そんなに命が惜しければ、お前にはもう用は無い。辺境にでも行って、野菜作りでもしていればいいのだ』と言われて止む無く引き下がった。
この一件で、口に出してこそ言えないが、公爵には本当に失望してしまった。
フェルナーも時同じくして、ブラウンシュヴァイク公に対して伯爵の暗殺に対する意見具申を試みたようだ。
だが、私同様に散々に怒鳴られて、全く相手にされないままにに玉砕してしまったという。
それで、公爵派の私やフェルナーは、公の信頼も厚く、一番近しい所にいるアンスバッハ准将に再度持ちかけてみたのだが、公爵の腹心の部下の彼は容易に首を縦には振らなかった。
「卿等がいくら具申しても公爵は聞く耳を持たぬ。・・・もはや、話し合いをしても無駄だと思う」
「ですが・・・」
「卿の言いたい事は分かる。私とて卿等の考えには賛成なのだ」
「それなら・・・」
私が言いかけるがアンスバッハは首を振った。
「私個人は賛成だが・・・そんなものは、公爵にとっては何の意味も持たない。この戦いには貴族社会の存亡がかかっており、公爵は貴族連合軍の盟主であられるのだ。今回の一件、公爵にとっては私戦ではなく、もはや、銀河帝国の貴族社会の威信を賭けたものになっておられるのだ。それに今引いては他への示しがつかぬのだ・・・分るな?」
アンスバッハは自嘲的な笑みを浮かべた。
「リッテンハイム侯の手前・・・ですか?」
私はこの貴族連合軍の副盟主であるリッテンハイム候の顔を思い浮かべた。
ふくよかな公爵とは反対に、細身で鋭い目の侯爵。
「そうだ。リッテンハイム候が副盟主となっている手前、公も今回の件からは引くに引けなくなっているのだ。卿等もリッテンハイム候とブラウンシュヴァイク公の関係を承知しているだろう?」
2人の関係を知っているフェルナーは顔を顰<しか>め、私も静かに頷いた。
アンスバッハが危惧するように、リッテンハイム候とブラウンシュヴァイク公は、共に皇帝陛下の内親王を妻に迎えられた義兄弟だ。
だが、両者の間には誰にも入る事の出来ない、昔からの確執があり、お互いをライバル視していた。
いつかは・・・自分達の娘を女帝に仕立て上げて、外戚として、裏から帝室を牛耳る。
誰の目にも2人がライバルであるのは明白だった。
そして、今は・・・共通の敵を前に結びついているだけなのも、これまた誰の目から見ても明白だったのだ。
今は、表面上は仲良さげにしているが、共に“帝室の外戚”と言う関係から、公爵は候にだけは謗られたくないのだった。
「フェルナーは平民出身だから分からぬかもしれないが、私や卿は下級とは言え貴族の家柄だから公のお気持ちが分かるだろう?」
確かに私やアンスバッハは爵位や帝国騎士<ライヒスリッター>の称号を持たないが、確かに貴族の証である“フォン”の称号を持つ。
それに、貴族には貴族の矜持があるのも確かだ。
だが、私は公爵とは違う。
一般的に“貴族”として一括りにされても、下級貴族と門閥貴族は昔から相容れなかった。
公は私達のような下級貴族の事は、決して自分達と同じ“貴族”だとは思ってはいないだろう。
それでも、貴族は貴族なのだ・・・度し難い事に。
「私は貴族の気持ちなんかどうでもいいですがね。そんなものは知りたくもないですし。しかし・・・今回の件は本当に不毛としか言いようがない」
「おい、フェルナー。言いすぎだぞ」
私を見て、フェルナーは微笑した。
「そうですか?言い過ぎでもないと思いますが。公が副盟主のリッテンハイム候との確執から引くに引けないにしても、忘れてはならない事がありますよ。現皇帝のエルウィン・ヨーゼフⅡ世陛下は強大な後ろ盾がいないとしても、皇孫である事には変わらないでしょう?“皇孫が後ろ盾”というのは、非常に大きな意味を持つと思いますよ。現実問題、これだけで我々は不利です」
「それを言うな、フェルナー」
こめかみを押さえたアンスバッハの表情は相変わらず暗い・・・本当は彼もフェルナーと同じ考えなのだろう。
「皇孫を新皇帝に据えた時から、あちら側は大義名分を有している。それに、金髪の孺子<こぞう>は戦争の天才ではありませんか。それは今までの戦歴で証明済みだし。今度の戦いでは、こちら側の司令官にメルカッツ提督がおなりになるそうですが、はたしてそれだけで十分と言えますかね?」
「おい、フェルナー!」
幾らなんでも、それは言い過ぎだと思った私が間から口を挟むが、フェルナーは引き下がらなかった。
「シュトライト准将、あなただって分かっておられるはずですよ?貴族連合軍の貴族の将官の多くは実戦経験がおありにならない。それまでは、形だけの予備役だった方が殆どでしょうに。戦闘で宇宙に出た事がない方ばかり。こんな俄か作りの部隊が整然と行動出来るとはとても思えません。・・・それこそ、今後、心配の種が山のように増えますよ。もう少し現実を見ないと・・・ね」
フェルナーは相変わらずふてぶてしい笑みを浮かべて辛辣に言い放ち、他に手があると言いたげであった。
「・・・フェルナー、皇孫の件だが、皇孫のお立場なら、公のご息女のエリザベート様や、リッテンハイム候の息女サビーネ様も性別が違う事を除けば条件は同じだ。いや、後ろ盾を考えればそれ以上であるし、年齢的にもこちらの方が有利である事は明白だろう。女帝を否定する法もないのだ。それに現皇帝陛下は御年6歳で政治手腕があるとはとても言えぬ。それに事はとうに動き出しているのだ。・・・それを鑑みても、今更引き返すわけにも行くまいが?とにかく、2人とも余計な事はしてくれるな」
アンスバッハは私とフェルナーを交互に見た。
「それに・・・シュターデン中将と、ファーレンハイト中将も我が軍に与しておられる。彼等も歴戦の猛者だ。戦闘の事は彼等に任せておけば良い」
「分かりました。・・・それでは私はおとなしくしています」
私はそう答えてフェルナーを軽く睨んだ。
「いいか、フェルナー・・・卿もあまり公を刺激するな。くれぐれも軽はずみな行動だけはするな」
「・・・分かりました」
フェルナーは面白くなさそうに渋々頷いた。
私が釘を刺したにもかかわらず、フェルナーには何の効き目も無かった。
彼は翌日の朝、もう1度、公の元に出向いて意見具申し、案の定、公から相当な怒りを買った。
けれど・・・それでも、あのフェルナーは諦めなかったのだ。
彼は彼なりに着々と準備だけは進めていたらしい。
その日の夜半過ぎに、彼の直属の部下300人を動員して金髪の孺子<こぞう>の姉、即ち、前皇帝の寵妃であった、グリューネワルト伯爵夫人アンネローゼの居城に急行したのである。
ローエングラム候を直接狙うのは危険だし、部下の不祥事をでっち上げるには時間がなさ過ぎた。
伯爵夫人を狙うのが一番手っ取り早い方法だったのだ。
ところが、孺子<こぞう>の腰巾着と思われていた、腹心のキルヒアイス中将は既に事態を先読みしていた。
その中将率いる部隊の5000名は屋敷を厳重に警護しており、フェルナーは何とか逃げおおせたが、部下の多くは捕らえられてしまった。
彼は彼は暗殺計画の失敗に地団駄を踏んだがどうにもならず、捕まらずに済んだのを幸いと、さっさと雲隠れしてしまった。
この事態が公の耳に入り、勝手に余計な事をしてくれたと公は怒り狂われた。
「よくも余計な真似をしてくれたものだ!至急フェルナーを見つけ出してわしの元に連れて来い!」
そう厳命したが、自分達がオーディンを離れる事の方が先決であり、結局、フェルナーを見つけ出す事は出来なかった。
私は、実行に移したフェルナーよりも、むしろ、ローエングラム候と真っ向から対峙しているブラウンシュヴァイク公の行動の方が、ひどく危険な火遊びに思えた。
火傷を負ってしまったら、取り返しの付かない事になる。
・・・いや、火傷程度では済まされないだろう。
だが、私には何の力もなく、どうする事も出来なかった。
火の粉が身に降りかからぬ内に、自分の身の処し方を何としてでも考えなければならなかった。
フェルナーが失敗した事で、内戦の火蓋は切って落とされ、ブラウンシュヴァイク公は慌ててオーディンを脱出された。
置いてきぼりを食らった格好になった私も、慌ててオーディンから逃げようとしたのだが、昔から要領が良くないせいなのか・・・。
何処に行っても逃げ切れるとは思えず、第一、何処へ行けば良いかも思いつかなくて、あれこれと考えてグズグズしている内に、情けない事に宇宙港で憲兵隊に逮捕拘禁されてしまった。
やれやれ・・・ここまでか。
私は半分開き直っていた。
どのように弁解しようとも、私を捕らえた者には関係が無い事だったし、言い訳は聞き入れてはもらえないだろうと思った。
それならば、洗いざらいを吐き出してしまった方が楽だった。
私は死を覚悟して取調べに素直に応じた。
今更取り繕ってみたところで、私がブラウンシュヴァイク公の部下だった事を取消せないのだから。
私は、ローエングラム侯及び、グリューネワルト伯爵夫人の暗殺計画があった事を認めた。
それこそ、部下の不祥事をでっち上げて陥れる案まであった事も含めて、包み欠かさずにありのままを吐き出したのだ。
私は毅然とした態度で臨んだのだった。
いや、半ば開き直っていただけだ。
憲兵隊の取調べに不意に顔を出しされローエングラム候は、黙って私の話を聞いて下さった。
そして、「殺すには惜しい男だな」と感心したように言い、「正式な通行証を出してやるから、このまま公の元へ行けば良い」と、ローエングラム候は私の手錠を外させた上で、そう言って下さった。
けれど、私はオーディンに留まる事を決意していた。
このまま公の元へ行っても、もう、私の居場所はないだろう事は明白だ。
あの方は猜疑心を露にするだろうし、それだけでも忠誠に値する人ではなかった・・・私は留まりたいと、ローエングラム候に訴えた。
それを聞いた侯爵は何度も頷き、私に対して、自分の部下にならないかとも誘って下さった。
だが、私はすぐに宗旨替えをして部下にはなれなかった・・・自分でも本当に要領が悪いとは思うけれど。
私の正直な態度を好ましく思って下さったのか、ローエングラム候は、オーディンに留まりたいという私の願いを聞き入れて下さった。
それどころか、オーディン内での私の身の安全を約束して下さったので、私は身の危険を感じる事なかった。
私は侯爵閣下の配慮に感謝し、今まで仕えて来た主との度量の違いを思い知らされたのであった。
そして、私はその時点で、退役准将となった。
後日フェルナーも自ら出頭して、私同様に洗いざらい告白した。
昔から要領のいい彼は、不器用な私とは180度違っていた。
さっさと憲兵隊に出向いて、直接、ローエングラム候に対峙し、“ブラウンシュヴァイク公を見限ったから部下にしてくれ”と訴え出たのだ。
さすがにそのふてぶてしい態度には、さすがのローエングラム候も驚かれたそうだ。
更に聞くところによれば、フェルナーはローエングラム候に“忠誠心”について問われて、『人を見る目のない主君に忠誠をつくすなど、宝石を泥の中に投げ込むようなもの。社会にとっての損だとはお考えになりませんか』と平然と言い切ったらしい。
ぬけぬけとした態度に閣下は呆れたそうだが、彼はフェルナーの言動に陰湿さがないのを認めた。
フェルナーはフェルナーらしいやり方で、自分自身の有能振りを敵対していた相手に売り込んで成功を収めたのだった。
私はその転身の見事さに感心さえした。
言いたい事を言いたいようにぶちまけた、そのふてぶてしい態度には侯爵も苦笑しながらも一目置いたらしい。
持って生まれた人徳とでも言うか、フェルナーは昔から敵を作らない。
あれだけ辛辣な言葉を吐きながらも、ブラウンシュヴァイク公の部下でいられたのは彼のその処世術のお陰だった。
辛辣な中にもフェルナーの誠実な為人<ひととなり>を、会ったその場でローエングラム候は見極められたのだ。
そして、その場に居合わせた自分の参謀長のオーベルシュタインに、「使ってみろ」と彼の身を預けたそうだ。
これだけ神経が図太いのなら、萎縮する事もあるまいと思ったのであるが、オーベルシュタインの氷のような冷たい視線を前にしても、フェルナーは震え上がるどころか、さっと敬礼を返し、自分の身が救われた事を単純に喜んだ。
その光景を目にしたローエングラム候の部下達は、フェルナーの鋼のような図太い神経もさる事ながら、敵対していたブラウンシュヴァイク公の部下だった男を許してその手元に置いた事で、益々ローエングラム候の忠誠心を高めた。
一方でアンスバッハは・・・最後の最後までブラウンシュヴァイク公爵に従う“茨の道”を選んだ。
そして、彼は最後の仕上げを敢行する・・・。
公の危険な火遊びの片棒を担ってしまったアンスバッハ。
本来、誰よりも思慮深く、誰よりも清廉潔白を好んでいた男が・・・。
ガイエスブルグ要塞で、ローエングラム候の右腕と言うべき、候の幼馴染みで、腹心の赤毛の青年をこの世から消し去った。
あぁ、これで・・・彼は絶対にヴァルハラの門を永遠にくぐれまい。
・・・ブラウンシュヴァイク公と一緒に、永遠に、地獄の業火で焼かれる運命にあるのではないか・・・と思う。
私とフェルナーは、それだけは運良く免れたが。
リップシュタット戦役の終結後、私は爵位を公爵に進められていた、銀河帝国軍元帥のローエングラム公の主席副官という人事を拝命した。
そのきっかけとなったのは、実に些細な事だった。
貴族と言っても私は下級貴族の出身で爵位は無いが、元ブラウンシュヴァイク公の家臣だった事もあって、親戚やら、旧知の貴族達に泣きつかれた。
私の親族の中には、新体制化でなけなしの資産を没収された者もあり、彼等の生活保護の為にやむを得なかったのだ。
それに爵位のある貴族の内、ブラウンシュヴァイク公にやや近しい門閥系の貴族達も同様だった。
彼等は資産の確保に奔走したにもかかわらず、結局のところ没収されて、泣く泣く私を頼ってきた。
私がローエングラム公に許されてオーディンに留まる事に成功した・・・ただ、それだけの理由で頼られた格好になった。
私は悩んだ挙句、隠遁生活を辞めて、恥を承知でローエングラム公に嘆願を行ったのである。
その際に、元帥では、公の副官人事で揉めている事を知った。
現在の副官は、フェルデベルトという士官学校を優秀な成績で卒業したばかりの青年士官だった。
だが、彼は、マニュアルどおりの事しか出来ない融通の利かないタイプだった。
ましてや、上官は非凡なローエングラム公なのだ・・・。
私の目にもフェルデベルトは力量不足と思われた。
フェルデベルトは真面目といえば真面目だが、融通やら機転が利かなければ副官は務まらない・・・並み以上の力量が必要で、成績が優秀なだけではどうにもならない。
それだけ、今まで公の傍に付き従っていたキルヒアイスという赤毛の青年が非凡だったという事なのだ。
私は、アンスバッハのしでかした罪の大きさに、(卿は何とも馬鹿な事をしたものだ・・・)と、今は亡き僚友を怒鳴りつけたい心境になった。
しかし、まさかフェルデベルトを解任し、公が私を首席秘書官に迎えるとは思ってもおらず、その人事を知った時は、私自身でさえかなり驚いた。
更に驚いたのは、この人事に反対すると思われていたオーベルシュタインが意を唱えなかった事だった。
私は、ローエングラム公のかつての敵である、ブラウンシュヴァイク公の忠臣だった男である。
だが、それがローエングラム公に膝を屈する。
絶大な政治的効果を得られる・・・だから、あえてこの人事に賛成したらしいとの話であった。
オーベルシュタインが自ら進んで賛成した事で、この人事に反対する者は誰もいなくなったのだという。
主席副官の任を拝命して暫くして、私はフェルナーと顔を合わせる機会を得た。
「久し振りだな。元気そうで何よりだ。そうだ・・・予定がなければ今夜でも一緒にどうだ?」
私の仕草に目を丸くして、「あ~いいですね」とフェルナーは頷いた。
「さて・・・と。どこに行く?」
「そうですね。美味い酒が飲めるのであれば小官はどこでもかまいません。あ・・・勿論、准将閣下の驕りですよね?」
抜け目の無いフェルナーに私は苦笑した。
高級士官クラブの『海鷲<ゼーアドラー>』でも良かったが、他の士官や将官と顔を合わせたくもない。
それで、私は「なぁ、久し振りにあそこに行くか?」と切り出した。
「あそこって、『黒猫<シュヴァルツ・カッツェ>』ですか?」
私が頷くと、「いいですね。小官も最近は行っていないんですよ。あそこは料理も酒も美味いですからね」とフェルナーも頷いた。
こうして私達は、中心街から少し離れた件の店まで連れ立って歩いた。
店のたたずまいは変わっていない。
樫材のドアを開け中に入るとカウンターに居た店主が「おや?」という表情を向けて私達を見てから、「久し振りですね」と声を掛けて来た。
「ご無沙汰してます。奥・・・いいですか?」
「どうぞ。空いてますから」
私達は、店内の奥のスペースに陣取る。
ここは仕切りもあって、ゆっくり飲めるのだ。
「前は良く来ましたよね・・・3人で」
フェルナーがメニュー表を手に取ってパラパラとめくり始めた。
「あぁ・・・全くだ」
アンスバッハを含めて、私達3人は良くここへ来たものだ。
それほど月日は経っていないというのに、1人が欠けているというだけで、もう随分、ここへ来なかったようにも感じる。
私達が座って暫くして店員が注文を取りにやって来て、私達はワインと軽くつまみを頼む事にした。
「卿が食べたいと思う物を注文してくれ」
「え・・・小官が頼んでいいんですか?」
フェルナーが意外そうな顔をした。
「あぁ。頼む」
「それじゃぁ・・・とりあえず、本日のオススメのロイヒャー・ラックス<スモーク・サーモン>と、シュヴァイネ・ブラーテン<ロースト・ポーク>、それと、ディック・クーヘンね。あと、ザウアークラウトは大盛りで。・・・酒はビールにしますか、それともワインにしますか?」
フェルナーに尋ねられ、私は暫くワインリストを眺めていたが、「470年物の白ワインを」と注文した。
私達は懐かしい店で、本当に久し振りに酒を飲み交わした。
フェルナーは現在も、オーベルシュタインの配下で活動していた。
初めの頃は、ブラウンシュヴァイク公の元部下で転向者という事で白眼視されていた彼も、今ではすっかり周りから認められているようだった。
フェルナーは言いたい事をハッキリ言う、辛辣なで口が悪い劇薬タイプの男だ。
オーベルシュタインは故意に部下を苛めるような心の狭い人物ではないが、“冷徹なる義眼”とか、“ドライアイスの剣”と評されるほど、鋭利かつ冷徹、そして厳格な策謀家である。
その風貌からしても非常に近寄りがたい人物であったから、彼の配下の若手の士官はいつも萎縮しがちであった。
フェルナーは、配属当初から、オーベルシュタインとその部下達の間に自ら積極的に入った。
そして、進んで“緩衝材”やら“解毒剤”としての役目を自分に課し、あっと言う間に自分の居場所を築き上げたらしい。
「そりゃぁ、今でこそ部下です!って顔をしていますが、元々は転向者ですから、当初は楽じゃなかったですけどね」
フェルナーは謙遜してそう言うが、必要とあらば、フェルナーは毒薬にも解毒剤にもなれるし、自分の役割という物を実に良く弁えている。
元々、諜報部に籍を置いていた人間だし、オーベルシュタインと、上手く渡り合えるだろうと思う。
「自分の居場所を見つけ出す才能に関しては卿は天才かもしれない。大体、あのブラウンシュヴァイク公を何度も怒らせながら、それでも部下でいられたのだから。今度もきっと大丈夫だろう」
私は彼の柔軟性に感心したが、彼は首を竦めた。
「・・・天才って言われましても。そんなに感心されても何も出ませんよ。それに、シュトライト准将だって上手くやられているではないですか」
ロイヒャー・ラックス<スモーク・サーモン>を小皿に取り分け、ザウアークラウトを乗せて私の前に置くと、フェルナーは苦笑を浮かべる。
「あ・・・どうぞ。そうだ・・・『シュトライト准将がローエングラム公の首席秘書官』って人事を聞いた時、また随分と上手くやられたものだと感心しましたよ。口笛吹きたくなるぐらいにね。小官もかなり運がいい方ですが、なかなかどうして・・・シュトライト准将には及びませんって」
フェルナーはワイングラスを掲げる。
「その件だが、まさか卿が卿の上官に口添えしたなんて事は・・・」
「口添え?そんなものしてないですよ。小官にはそんな暇も権限もありません。閣下がこの人事に賛成したのは後々の事を考えての事でしょうし。政治的効果が大きいのは事実ですし。実際、この人事に反対論を唱えていた人達、うちの閣下に睨まれて一斉に黙り込みましたからね」
そう・・・。
ブラウンシュヴァイク公の直属の部下だった私に、『首席秘書官』など馬鹿げていると思っていた人は山のようにいた。
それが口に出来なくなったのは、オーベルシュタインの力なのだ。
「まぁ、文句を言いたい者には言わせておけばいいと思いますが。元々、准将にはそれだけの才覚がおありなんですから、自信を持たれても良いのではありませんか?准将閣下なら首席秘書官の素質十分ですよ」
急に真顔になるフェルナーに私は「ありがたい話だ」と、やや肩を竦めた。
「まぁ、とにかく気楽にやりましょうよ。それに、小官も今の生活は気に入っているんです。うちの閣下はああいう人ですから近寄りがたい。それだけに必要以上に誤解を受けやすいのですが、それでいて、これが実に仕え甲斐のある人でしてね。・・・毎日が刺激的なんですよ」
笑顔を見せるフェルナーは、やり甲斐のある、今の生活がかなり気に入っているようだった。
「ですがね・・・実は本当の事を言わせて貰えば、首席秘書官と聞いて、この人事は貴族出身だからなんだろうか?と思った事もありまして」
そう言いながら、小皿に取り分けたディック・クーヘンにフォークを突き刺して口に運んだフェルナーは、「あ~やっぱり、ここのは美味い!・・・頼んで正解でしたね」と嬉しそうだ。
その様子に私も何となく嬉しくなり、ディック・クーヘンを食べてみるが、確かにフェルナーの言うようにかなり美味しかった。
「・・・この人事に関して言えば、フェルナー。ローエングラム公は、私が貴族というだけで重用するようなお人ではないだろう。・・・まずあり得ない。それこそ、天地がひっくり返ってもな」
「・・・ですよね」
無能な貴族を進んで重用する人だったら、周りの将官は全て貴族で固めるだろうが、ローエングラム候に与する提督の大半は平民出身の有望株ばかりだ。
仮に貴族がいても、私と同じような下級の出であった。
オーベルシュタイン、ロイエンタール、アイゼナッハ、ファーレンハイト・・・皆、爵位などない。
「だから・・・ローエングラム公は戦争の才能だけでなく、人事面やその他の面でも優れた方なのだと再認識したんですよ。小官はともかく、シュトライト准将はオーベルシュタイン閣下の下では力を発揮する前に絶対に胃痛を起こすだろうと思いますし。実際、胃薬の世話になる者が多いんですよ、うちの職場」
オーベルシュタイン中将の陰湿な顔色を思い浮かべて、確かに私では彼の部下は務まらないだろうと思った。
どうも、あの“目”が苦手だった。
そして、フェルナーの同僚が皆一様に“胃痛持ち”で、薬が手放せないというのも納得出来た。
「“適材適所”という言葉がありますが、小官等の人事に関しては文句の付けようがありません。まぁ、元帥閣下がうちの閣下に『使ってみろ』と言われた時、閣下が拒否していれば成り立たなかった訳ですが、拒否はされませんでしたしね。・・・そういう訳で、この人事を采配した元帥閣下素晴らしいと思います」
「そうだな。ところで、卿は胃薬の世話には・・・」
「あぁ、それはご心配なく。今の職場は小官には居心地が良いので、胃の痛む暇もありません。持って生まれた胃の強さに感謝しているのです。まぁ、色々ありますが、毎日楽しいので安心して下さい」
フェルナーは、本当に楽しげだった。
ブラウンシュヴァイク公の元に居た時と比べると、幾分か、表情が柔和になったような気がする。
「ところで・・・。きっとアンスバッハは今頃、公と一緒に地獄の業火で焼かれているんじゃないかと思う事がある」
そう私が話すと、フェルナーは首を竦めた。
「そうですね。まさか、アンスバッハ准将があのような暴挙に出られるとは思いもしませんでした」
「全くだ」
私は大きく息を吐いた。
「小官は後方に控えていたのですが、気付いた時は後の祭りで・・・。キルヒアイス閣下は本当に気の毒でした。・・・ガイエスブルグ要塞内は、本当に大パニックになりましたよ」
フェルナーは現場に居たのか・・・。
私はふう・・・と息を吐き出した。
「多分、アンスバッハ准将は、今頃・・・ブラウンシュヴァイク公と一緒に針地獄でしょうね。我々は寸でのところで火傷だけは免れて良かった・・・という事にしておきましょう。地獄の業火で焼かれるなんてのはご免です。小官はちゃんと天上<ヴァルハラ>に行きたいですから・・・」
フェルナーは、小皿に取り分けたシュヴァイネ・ブローテンにフォークを突き刺しながら、相変わらず不遜な笑みを湛えながら声を顰<ひそ>めて言い、私は彼らしいな・・・と苦笑した。
Das Ende
100のお題より、「火傷<やけど>」です。
一応、主人公はアルツール・フォン・シュトライト。
3人ともブラウンシュヴァイク公の部下達。
この3人が一堂に会して、会合を開いているシーンは原作にはありません。
なので、勝手に色々想像して自分でその場を作ってしまいました。
シュトライトは、ブラウンシュヴァイク公の配下であったにもかかわらず、リップシュタット戦役後、ラインハルトの主席副官になった男。
尤もすぐに部下になった訳ではなく、少し時間を置いてから部下に。
反対にフェルナーは自分で売り込んでたからな~・・・
アンスバッハは、公爵に対する人一倍の忠誠心があったのでしょうが、忠誠心の使い方を間違えちゃった人だと思います。
ホント、頭いい人なのに勿体ない・・・最後まで生きるキャラだったら良かったのに。
井上真樹夫さんをアンスバッハに据えるなんてシブイって思いましたよ・・・。
だって、原作の2巻目で、キルヒアイス共々に消えていく訳ですから・・・。
シュトライト役の戸谷公次さんは好きな声優さんのお1人でした。
素晴らしい声優さんでしたのに、2006年の2月に急性心不全で、57歳という若さで亡くなられてしまいました。
・・・戸谷さんがもうこの世の人じゃないなんて・・・悲し過ぎます。
この話を書いている時、私の頭ではちゃんとシュトライトのセリフは戸谷さんの声で変換されていて・・・声がする度に「戸谷さん降臨!」なんて独り言を言ってみたりなんかして。
特にこの話はシュトライトの視点で書いている為、“私”関係は全部、戸谷さんの声で書いていた気がします・・・爆!
あと、アンスバッハは原作では姓だけなのですが、貴族って事にしてしまいました。
アニメでは、フレーゲル男爵に対しても進言をしていて、男爵が引き下がりましたので、私の周りでは貴族説は有力です・・・ただし、下級貴族。
それにしても、何で姓だけだったのかしら<アンスバッハ。
フェルナーは、アントン・フェルナー、シュトライトは、アルツール・フォン・シュトライトって、ちゃんとフルネームで出てるのに。
それから、シュトライトとフェルナーが飲むシーンも私の勝手な想像ですが、フェルナーに「口添えしたのではないか?」と聞く場面で、オーベルシュタインが反対しないのは、シュトライトを使う事によって政治的効果を狙った以外に、フェルナーが絡んでいるのでは・・・なんて思ったりもしたのだけど、あっさり否定してくれちゃいました。
それどころか、フェルナーときたら、オーベルシュタインの部下生活を楽しんでいるかのようで、何だか、この『火傷』は書いていて凄く楽しかったです。
作中に出てきた食べ物ですが、何を食べさせようかと悩んで、塩漬けポークのアイスバインでもいいかな・・・とか、茹でたフランクフルター・ヴルスト(いわゆるソーセージですね)でもいいかなとか考えましたが、悩んだ末にソーセージはやめました。
因みに私のイメージでは、このフランクフルター・ヴルストが一番似合いそうな人はビッテンフェルトで、旗艦の『王虎<ケーニヒス・ティーゲル>』の艦橋で豪快に齧りながら、「撃て!<ファイエル!>」とか言いそうな感じです。
それに、ただ単に茹でるだけだから、独身のビッテンフェルト向きだし・・・爆!
で、結局、スモ-クサーモンに、ローストポークです。
ザウアークラウトは美味しいですけど、日本じゃあまり売ってないですね。
千切りにした塩漬けのキャベツを発酵させたドイツのお漬物なので、ドイツ料理のお店なら出て来るんですけどね。
因みに、ドイツではジャガイモ料理が欠かせないので、ディック・クーヘンを登場させましたが、これは千切りにしたジャガイモと玉ねぎを炒めた料理で、我が家では良く作りますよ・・・うちでは、塩コショウで味を整えて、ちょっぴり中濃ソースをかけるの。
昔、某サイト(銀の中では結構大きなサイトでした。ここも閉鎖しちゃったな・・・)でオフ会をやって、20人ぐらいでドイツ料理を食べに行きました。
団体さんだったので、特別室みたいなところで・・・そこでフリカッセを食べて。
「あ~!これがミッターマイヤーの好物なのかぁ!」
こんな感じで皆と盛り上がったりしたのも、今はいい思い出ですね。
このオフ会の主催者の方はご夫婦なんですけど、夫婦でドイツご旅行されて、目的地はベルリンでもミュンヘンでもなく、ドイツにある『イザローン市』で。
実は、「イゼルローン」の正式な発音は「イザローン」なんだそうです。
この銀のサイト名が「イゼルローン」だったのですが、ある日、イザローン市の職員の方がヤフーか何かで検索したら、日本のこのサイトが出て来て、「これはなんだろう?」とドイツ語でいきなりメールが来たそうです。
慌ててドイツ語が読める人に訳してもらったら、ドイツにはイザローン市がある事が分かって、それで日本の小説の事とか、アニメの事とかを知らせて、それのファンサイトだと説明したら、かなり驚いていたそうです。
それで、本当にイザローン市に観光しに出かけられたんです。
因みに下記URLはイザローン市の公式HPだったりしますが、如何せんドイツ語なので、英語すら苦手な私には全く読めません・・・T-T
ダラダラダラダラ・・・。
くそ長~い会話が続きますが、コレを楽しく読む秘訣は・・・アニメの声優さんの声を想像して読む事です。
従兄弟夫妻が、「声を想像したら凄く面白かった・・・特にフェルナーが立案する場面が。この作品のフェルナーの最後の場面も良かった」と読んだ後にうれしい感想をくれました。
アンスバッハと3人でしていた会話は、とっても重苦しくて硬い会話ですが、リップシュタット戦役後に、シュトライトとフェルナーが飲んでいる時の会話は・・・何だかとっても軽やかなので、自分で書いていても、肩の力が抜けて、リラックスして書けました。
アンスバッハはともかく、2人とも最後まで生き残って本当に良かったです・・・。
