読者さんが増えて、ちょっぴり嬉しい うさけ でございます。

 パソコンがぶっ飛んだせいで、更新が遅れてすみません。


 銀河英雄伝説は・・・CSなんかでも、忘れた頃に放映されて、何だかあちこちの局で放送してる。


 そして、パチンコになったり、ブルーレイ・ディスクが発売になったり、来年は舞台・・・本当に、話題が尽きないねぇ・・・「銀河英雄伝説」恐るべし!!です。



 さて、今、UPしている最新作は、グレーチェン・フォン・エアフルト嬢の「遠浅」と、最新作として、 

 ナイトハルト・ミュラーと、オーブリー・コクランの物語の「忘れ物です。 

 バーミリオン会戦直前の、ミュラーとコクランの出会い。

 そして、2年後の物語。

 この2年後の物語と言うのが曲者です。

 それは別の物語になる・・・という一文だけで済ませてしまった田中先生。

 私はてっきり、外伝か何かで、この“別の物語”が読めるのだと思っておりました。


 そんな訳で、続きが無いのなら(別の物語のこと)、自分で書くわよ!!って、書いてしまった作品です。

 お題は、100のお題ですけどね。

 コクランの経歴とか・・・勝手に作っちゃってます。

 彼が・・・リオ・グランデに乗っていたとか、真っ赤なニセモノ・・・もとい、私の妄想・・・もとい、想像ですので、調べても意味ないです。


 その次にUP予定の作品は・・・。


 全て100のお題からですが・・・。


 軽い感じの話として、ハイネセンに赴任中のロイエンタール艦隊のほのぼの話。

 ロイエンタールでコメディ・・・無謀です。

 まず、ロイエンタールと副官のレッケンドルフで、「マルボロ」を。

 まぁ、主役はレッケンドルフですけどね~★

 それと、もう1本は、ベルゲングリューンで、「電光掲示板」をお届けします。


 そして、ハイネセンに赴任中のレンネンカンプとその部下達が受けたカルチャーショックの話で、「コンビニおにぎり」をお送りします。


 きっと、カルチャーショックを受けると思いますよ、ハイネセンの生活・・・。 


 

 その後にUP予定なのは、帝国2本と同盟1本・・・。(全て100のお題です)


 帝国からは「階段」を。

 これは、リューネブルク夫人エリザベートの物語です。

 かなり、シリアスな話です。


 それから、オリジナルキャラで申し訳ないのですが、リヒテンラーデ公の一族である、カルシュン男爵家が辿る、リップシュタット戦役以降の悲劇。

 タイトルは、「壊れた時計」です。

 これまたシリアス。


 同盟の方は、上の帝国の話がちょっと暗いので、明るく行こう!!ってな感じで。


 キャゼルヌ夫妻の話で、タイトルは「真昼の月」です。

 好きですねぇ、この夫婦。


 なお、今回は、上記に挙げた作品にコメントを頂けたら、ささやかなお礼をさせて頂きますね。

 感想を頂けると、凄く嬉しいんですよ・・・また頑張ろう!!って思いになるし。


 どうぞ、宜しくお願いします。



 それでは、拙い作品達ですが、今回もお付き合いのほど・・・宜しくお願いします。m(_ _)mペコリ・・・



 





 「声優さんに会いたい!?」の3回目は、横尾まり さんです

 以前、朗読を主にした「語座<かたりざ>」の公演を観に行きました。

 終演後、出演者の方がロビーに出られて、まぁ、ちょっとお話しする時間みたいなのがあったのです。


 私は、実を言うと、女性声優さんにはあまり詳しくはありません。(・・・ってか、ベテランに限定すれば、女性声優さんもすぐに分かるんですけど、男性声優さんほど詳しくははない・・・という意味です)


 さて、横尾まり さん。

 物凄くお綺麗な方です。

 その時はキリリとしたお着物姿でした。

 好きな声優さんのお1人でしたので、思い切って、お声掛けさせて頂きました。


 「私、横尾さんの役では、エルチ・カーゴが好きだったんです」

 このエルチと言うのは、「戦闘メカ ザブングル」に出て来た、緑色の髪の女の子です。

 文化に憧れてて、勝気でワガママだけど、どこか憎めませんでした。

 ラグの方が女の子には人気があったと思うのだけど、私はエルチが好きでした。

 このエルチ・・・話の後半で、イノセント側に洗脳されちゃったりして、ハラハラしました。

 イノセント側の人で、エルチが恋をしているビラム様は、森功至さんが演じてて、アーサー・ランクは塩沢兼人さんでした。

 私の口からエルチの名前が出た為でしょうか。

 横尾さん、目の色が変わりました。

 「え、エルチ!!あの役はね、私の初のレギュラーだったのよ。うわぁ、懐かしいわねぇ~!」

 本当に嬉しそうでした。

 「横尾さんって本当に美人ですよね~。銀河英雄伝説のヴェストパーレ男爵夫人も美人だったけど、それ以上に美人で」

 そう、マグダレーナ・フォン・ヴェストパーレ男爵夫人を演じられていたのです・・・アンネローゼの数少ないお友達です。

 「ちょっとやっだぁ!男爵夫人の方が私なんかよりも美人よぉ!でも嬉しい~!!」 

 ここで、横尾さんから、肩をパシパシ叩かれる。

 「外伝の男爵夫人、好きなんですよ。絵も綺麗で」

 「うん、うん。確かに綺麗だったわね。美しい役で嬉しかったわ」

 かなり照れていらっしゃいました。


 こんな感じでお話させて頂きましたが、旧ドラえもんで、スネ夫君のママを演じていたのも横尾さんでした。


 「ニュースJAPAN」でナレをされている事もあったりして、時々お声は聞くんですけどね。

 私が嬉しかったのは、銀河英雄伝説の事を覚えていて下さった事です。


 美しいヴェストパーレ男爵夫人が拝めるのは、外伝の「決闘者」です。

 あの作品・・・。

 銀を知らない人が見たら、とてもSF作品とは思えません。


 弟なんて、「姉ちゃん、ベルばら見ているの??」って聞いてきたぐらいで。

 「違うよ、銀河英雄伝説」

 そう答えたら、「え??あっ!本当だ。だけど、これじゃまるで、宮廷モノだね」だって。


 ベルばらとかが好きな人に、銀河英雄伝説を薦めるなら、この「決闘者」から見せる・・・という事も◎かもしれません。

 ・・・その人がハマッてくれる保証はどこにもありませんが・・・。







 その者に会ったのは2年前・・・そう、帝国暦490年の4月だった。



 私は当時、銀河帝国と自由惑星同盟の命運を分けた激戦・・・バーミリオン会戦に参戦していた。
 この会戦で、私は自慢の旗艦であるリューベックを失ってしまう。
 その上、あろう事か三度も戦艦を乗り換える死闘を繰り広げる事となった。
 私が、のちに『鉄壁ミュラー』の異名を持つようになったのは、バーミリオン会戦でのこの活躍からだ。
 そして・・・その苛烈な激戦を前に、私はある1人の男との出会いを果たしたのだった。



 バーミリオン会戦の始まるほんの少し前・・・私はリューカス星系にいた。
 ここは主戦場となるバーミリオンにほど近い。
 そして、この星系には、敵である自由同盟軍の中規模な物流基地がある事が、情報部の調べで分かっていた。
 私は上層部から、この基地の強襲して物資の接収するように命令を受けた。
 物流基地などあったのではこちらが不利になる。
 彼等に補給の間を与えてはならぬ・・・と言う事だ。
 基地から物資の接収の後、その場から速やかに反転してバーミリオンへ向かえ・・・これが、上層部からの命令であった・・・。
 こうして、戦争における補給の重要性を熟知していた我々は直ちに行動を開始したのであった。

 敵の基地から、“無理やり”接収するのだ。
 ある程度の戦闘と人的被害を考慮していた我々だったが、敵の基地まであと一歩のところで、敵の基地の方からこちらへ通信が入った。



「閣下!敵基地の方から入電です!」



 緊張したオペレーターの声。
 とうとう戦闘が始まったか・・・と、私も艦橋に仁王立ちになる。
 戦闘前の高揚感とでも言うのか、軽い緊張が電流のように身体を走り抜けた。

 「なに!?敵から通信だと?至急回路を開け。オペレーター!スクリーンに投影出来るか?」
 「出来ます!」
 旗艦リューベックのメインスクリーンに1人の男が映し出された。
 「こちら、リューカス星域自由惑星同盟軍補給基地司令官のオーブリー・コクラン大佐です。この基地は今をもって直ちに武装を解除し、銀河帝国軍に無条件降伏します。攻撃はされぬように願います」
 実に淡々とした口調。
 事務的とも取れるその口調に私はやや違和感を覚えた。
 この男は、一体何を言っているのだろうか??
 無抵抗のまま物資を明け渡すだと・・・敵である我々に対して?
 基地との通信回路を開いたオペレーター達が、「とても正気とは思えない。これは絶対に罠がありそうだ」とざわついていた。
 「閣下・・・これは・・・?」
 私の傍に控えていた参謀長のオルラウが首を傾げる。
 やはり、本当の事とは思えないのだろう。
 「閣下、これは我々をおびき寄せる罠かもしれません。額面どおりには受け取らず、ここは慎重に事を進めるべきだと思われます」
 「ドレヴェンツ・・・卿はどう思う?」
 副官のドレヴェンツにも聞いてみる。
 「やはり罠とも考えられます。参謀長閣下の言われるとおり、慎重にされた方が良いと思います」
 やはり彼も敵の申し出を不審に思ったようだった。
「・・・敵は何を考えているのか・・・」
 私は口の中で小さく呟いた。



 通信を送って来たのは、敵対する自由惑星同盟領の辺境のリューカス星系の物流基地の責任者である。
 男の名はオーブリー・コクラン。
 スクリーンに映し出された彼は軍人にしては小柄でひどく細身だった。
 黒っぽい肌に軽くウェーブのかかった黒髪、灰色がかった緑色の瞳。
 私は慎重派のオルラウの進言に従い、出来るだけ火力の強い艦を前面にして、尚且つ、全艦の砲門の照準を基地に合わせて基地内に進軍を開始した。
 油断大敵・・・何しろ、敵にはヤン・ウェンリーという知将がいるのだ。
 過去の戦いを思い起こして、私は慎重にならざるを得なかった。

 

 やがて、降り立った基地の中で、私とコクランは対峙した。
 だが、男はその体躯に似合わぬ苛烈な瞳で、自分よりも年下だが幾つも階級が上の、しかも敵である私に全く臆さなかった。
 コクラン以外の基地の者達は、侵略者である我々の姿に戸惑った表情を見せ、茫然自失になっているようだった。
 しかし、観念したのか、我々に対して両手を上げて降伏の意を表す。
 そんな中でコクランだけが平然としていた。
 彼は大きな息を吐いた後で、腹を括ったのか、「この基地の物資を一切合財をあなた方、銀河帝国軍に明け渡します。無駄な抵抗も致しません」と言い切った。
 彼のこの言葉に、多少の抵抗を覚悟していた我々は拍子抜けしてしまった。
 そして、この小柄な男の頭のてっぺんから足の先まで眺め見た。
 「申し上げますが、ここの基地の中にある物資は全て民需用の物資です」
 彼が声を荒げた時、誰もが、そんな事はお前ごときに言われずとも分かっている!と思ったものだ。
 「いいですか。民需用なんです、ここの物資は。ですから、決して軍事目的に使用しないで頂きたい」
 「何を偉そうに言うか!」
 部下の1人がコクランを怒鳴りつけたが、当のコクランは怯む事無く、堂々と言い放った。
 「民需用として使う、それさえお約束頂ければ、ここの物資をどう使おうとあとはそちらの自由です。明け渡しに関しては無駄な抵抗は致しません。・・・それから、自分と部下の命の保障すると約束して下さい」
 彼は私に強い口調で告げた。
 そして、キッと上を見上げる。
 「この行為は、自分の保身を図る為のものではありません」
 コクランはきっぱりと言い切ったが、あまりにも堂々としているので、ふてぶてしくも見えた。
 実際、私は彼の行為に呆れ返っていた。

 「閣下・・・どう思われますか?」
 抵抗する事無く物資をさっさと我々に明け渡したコクランの行為と申し出を、信じられなかった参謀長のオルラウ。
 何事にも慎重な彼は、不審げな表情を浮かべている。
 「・・・確かに売国行為とも取れるな」
 あっさりと敵である私達に物資を明け渡した彼の行為を、最初は利己的な売国行為だと、私も部下達も決め付けていた。
 今までの経験から、何の見返りも求めずに基地内の全物資を差し出す男がいるとは思えなかったからだ。
 しかし、彼が我々に供出した物資のどれもが無傷だった。
膨大な量の穀物や食用肉、家畜用飼料、工業用ダイヤモンドから液体水素、石油製品や燃料、それに希少鉱物<レアメタル>までもがいとも簡単に手に入ったのだった。
 物資の検分を行った部下達は口々に、「こんな事は初めてです、閣下」と私に伝えてきた。
 最初は、罠の可能性もあったが、数時間経っても何事も起こらなかった。
 私は、これは一体何事なのかと考える余裕が持てた事もあって、改めてコクランを呼び出した。



 後で知ったのだが、我々がリューカスの基地を強襲した時、コクランの部下の中には、敵に貴重な物資を渡すぐらいなら放射能で汚染させて使用不可能な状態にした方が良いと考える者達がいたのだそうだ。
 普通に考えれば尤も事だと私も思う。
 彼等は、コクランの暗殺も視野に入れて実際に行動を起こしたが、それはコクランを慕う他の部下達によって阻止され、かくして、コクランは命を永らえて、貴重な物資は無傷のまま残ったのである。
 コクランは、我が軍に対して、無駄に抵抗して部下を無益に死なせたり、大事な物資を損なうのを避けたかったのである。
 そして、その結果、我々は苦労する事もなく、短時間に無血で物資の接収が出来たのだった。
 私は、一見すると小役人のようにも見える見た目の細さとは裏腹に、剛毅で肝が据わった男なのだと認識を改めた。
 彼は、「軍需用ならともかく、ここに集積された物資はすべて民需用のものだ。支配者や政治体制がどうに変わろうと、民間人の生活を破壊するわけにはいかない」と、自分の部下に言っていたそうだ。
 それに彼は、我々から「売国奴」と呼ばれるのを甘受するしかないと、覚悟していたそうだ。
 彼の本意を知ってからは、私は彼の行動を好ましくさえ思ったのであった。



 彼は私に対峙した時、「全ての責任は小官にあるから、部下には寛大な処置をお願いします」と強く主張した。
 勿論、彼はこの基地の司令官であって最高責任者なのだから、責任を取るのは当然の事であろう。
 だが、私は、彼がハイネセンへ戻ってもきつい処遇が待っているのではないか?と、やや同情を覚えていた。
 全ての責任を1人で負う・・・。
 普通なら責任逃れ画策してもおかしくない状況で、部下をかばい、我々の前に立ちふさがった男。
 私はこのような男は得がたい存在だと思っていた。
 だから私は、彼が旗印を変える事に抵抗感を表すのを承知の上で、1つの提案を試みたのであった。
 自分の部下となって、物資や金銭の管理を統括する要職にでも就かないかと勧めてみたのだが、彼はきっぱりと断ってきた。
 「小官を部下にですか?申し訳ございません。せっかくのありがたいお申し出ですが、お断りさせて頂きます」
 強い口調のコクランに、オルラウが「おい!卿は閣下の御好意を・・・」と言い掛けるが、私はオルラウを制して、コクランにその理由を問うた。
 「理由ですか。閣下が小官を買って下さり、ご自分の配下にと誘って下さるのは大変嬉しく思います。軍人として大変光栄な事だろうと思います。・・・ですが、小官はとてもご期待に応えられそうにありません」
 「ほう。卿は随分と自分を過小評価しているのだな。私は卿の才覚を買って、是非にと誘っているのだが?」
 捕虜ではなく、部下にと望まれている・・・今後の生活の保障もされ、それほど悪くない話なのに。
 私は彼の真意を測りかねて首を捻る。
 「いえ、そうではありません。ここで真っ先に帝国軍に下れば、本当の意味で小官の行為は売国奴となってしまいます。世間の目はそれほど甘くはありません。きっと地位欲しさに物資を売り渡したと思われます」
 コクランは私をキッと見上げた。
 私は息を飲んだ。
 彼の言いたい事を察したからだった。
 そしてその思いが正しかった事を悟る。
 「小心者の小官はとても誹謗中傷には耐えられないですし、ましてや小官は民主主義を重んじる自由惑星同盟の人間なのです。ですから、銀河帝国の気質と我々の間には相容れない壁が存在するのです。閣下には閣下の信じておられる道がおありでしょう。けれど、それと同様に我々にも信じている旗印があるのです。これは誰にも譲れぬ旗印です。私は・・・今までの自分を捨てて簡単に宗旨替えは出来ません。不器用な生き方だと思われるでしょうが、これは私の信念であり、矜持なのです。そう言えば、賢明な閣下にはご理解頂けると思いますが」
 私の目をしっかり見据えて彼はそう主張した。
 「取りあえず・・・。部下と共に、ハイネセンへ無事に帰還出来る事だけを認めて頂ければ結構です。それ以外の望みはございません。小官は・・・ハイネセンへの帰還だけを強く希望致します」
 私は宗旨替えを勧めた事を恥じた。
 私の傍らに控えていたオルラウやドレヴェンツも、コクランの主張に納得してるようだった。
 もし、私が彼と同じ立場だったら同じ言葉を返したに違いないし、それでも無理やり部下にさせられれば、死を選ぶかもしれないとさえ思った。
 私に臆する事無く、自分の意見を正々堂々と述べた彼の清々しい態度に敬意を払い、私は彼のしたいようにさせた。
 それで、彼は部下達を纏め上げると、基地内の戦艦1隻で、整然とハイネセンへの帰還を果たしたのだった。


 彼の部下達は、たった1人で全ての責任を負い、売国奴の汚名を被ってまでも自分達の『命』を守ってくれた彼に対して多少は同情していたようだが、ハイネセンにいた同盟軍の幹部達は彼の行為を一切認めなかった。
 何と彼は帰還後、降り立った宇宙港で、まさに『売国奴』として、そのまま逮捕拘禁されてしまったのである。
 そして皮肉な事に、彼を『売国奴』として上層部に訴え出たのは、基地内の物資を汚染させて我々に接収させまいとした一部の部下達だったのだ。



 あれかれ2年・・・。
 多忙を理由にするのは気が引けるが、私の記憶層からは彼の事は忘れ去られ、記憶の奥底に埋没してしまっていた。 
 私は、新帝国暦3年の2月に入ってすぐ、皇帝ラインハルト命を受けた軍務尚書オーベルシュタイン元帥閣下の随員の1人となって、現在は新領土<ノイエ・ラント>となっている、旧同盟の首都のハイネセンを訪れていた。
 随員にはビッテンフェルト提督もおられた。
 3月下旬にオーベルシュタイン元帥閣下の直属の陸戦部隊が出動し、軍人、政治か問わずに、旧自由惑星同盟の要職にあった人物を根こそぎ収監し、これには私だけでなく、一緒にハイネセン入りしていたビッテンフェルト提督はその手法に不満を顕にした。
 一気に5000人以上の人間を収監する事になり、まるで雑草を刈り取るかのような行為だったからだ。

 「軍務尚書は何を考えているのやら、おれには理解できん。卿にはわかるか?」

 ビッテンフェルト提督は、昔から卑怯な真似が好きではないらしく、強引なやり方が気に入らない様子だった。
 そして、どうせ大した事は出来ないのだから、民主共和主義者など相手にしないで放っておけば良いとも言い放った。
 私も、ビッテンフェルト提督と同様に、軍務尚書閣下の高圧的な治安維持手段には辟易していた。
 これが、危険分子達を誘き出す“人質”だったにしても、もっと他にやり方は無いものか。
 だが、それを口にする権限は今のところ持ち合わせていないし、この草刈で山のような仕事が増えて、私やビッテンフェルト提督は、毎日、書類の山と格闘する事になってしまった。
 元々デスクワークが得意ではないビッテンフェルト提督は、「こんなに仕事を増やしやがって・・・俺がこういう事が苦手なのを知っているのだろうに!ふざけるな!」とオイゲン少将に怒りをぶつけられたようで、私のところに書類を持参した少将は、「・・・全く困った事態です」と苦笑していた。



 「そう言えば、閣下。バーミリオン会戦時に、閣下が部下にと請うたのに毅然とした態度で断った男がいましたな。確かリューカスの基地での事だったと思いますが。・・・閣下は覚えておいでですか?」
 書類にサインをしている最中に、急に参謀長のオルラウに言われて私は手を止めて彼を見る。
 「あぁ・・・覚えている。そう・・・確かコクランとか言う名前だったと記憶しているが・・・。しかし、参謀長、突然どうしたのだ?」
 「実は・・・今朝、バーミリオン会戦の夢を見まして」
 「・・・夢だと?」
 オルラウの意外な言葉に私は興味を覚えた。
 「・・・あの会戦の夢か?」
 「はい。旗艦を乗り継いで戦っているのを夢に見まして。それで急にあの男の事を急に思い出したのです。見た目とは違って、閣下に全く臆する事もない男だったので、とても印象が強かったのです。それこそ、あのヤン・ウェンリーと同じくらいに。それで閣下が覚えておられるかどうか気になって。ちょっとお聞きしたいと思ったんです。ただそれだけで、別に深い意味はございません」
 「ふむ・・・覚えている事は覚えているが。確か・・・仲間と共にハイネセンに帰ったのだったな」
 私の脳裏には、私がリューベックに乗り込む直前に私に、最敬礼をして来た小柄の男の姿がまざまざと蘇る。
 「・・・ええ。そのとおりです。閣下は彼がハイネセンに戻ったところで、利敵行為で告発されるやも・・・と思っていたでしょう?ですから閣下は配下に・・・と誘われたのだと記憶しておりますが」
 「確かにその通りだ。そうだな・・・今、どこでどうしているのだろう?収監されている可能性が高いな。ちょうど、ハイネセンに来ている事だし、余計な事を頼んで申し訳ないが、参謀長、どこの収容所か、至急調べてみてくれないか?」
 「受諾<ヤー>」
 オルラウは頷いた。



 単なるオルラウの夢だったし、別に気にしなくても良い事だったのかもしれないが、私はあの毅然とした態度の男を完全に忘れてはいなかった。
 確かにあの当時、彼の行く末を案じて、出来れば自分の部下に加えたいと思ったのは事実であった。
 彼はどうしているのか・・・気になりだすと、居ても立ってもいられなかった。
 オルラウがつてを介して調べた結果、コクランはハイネセンに着いたその日の内に逮捕拘禁されていた。
 彼の部下の中の一部が、彼の行為を利敵行為だと決め付けて告発していたからだった。
 その後、極地に近い未決犯収容所に拘禁され、裁判にかけられる予定であるという事が判った。
 しかし・・・。
 ハイネセンに着いたその日の内に逮捕拘禁されていたとは!
 ずっと拘禁され続けていた彼は、半年以上前に極度の栄養失調に陥って死にかけて、現在は、収容所内の病院で加療中の身である事も判明した。



 「まさか、着いて早々に拘禁されているとは思いもしませんでしたな。しかも・・・今のような時代に栄養失調で死にかけるとは、なんともはや・・・」
 オルラウが肩を竦める。
 「・・・全くだ。民主共和制と言うのは、誰しもが自由に振る舞えるものだと聞いていたのだが?」
 私は顔を顰<しか>めた。
 「しかし、閣下。今回の草刈で、ハイネセン全土で、収容叙の能力を超える程の収監者が出ておりますので、元からの収監者が酷い扱いになっていなければ良いですね。小官はそれが心配です」
 オルラウは顔を曇らせ、私も確かにオルラウの言うとおりだと感じていた。
 私がハイネセンに来たのは何かの因縁かもしれない。
 私は、ますますコクランに会う必要を感じていた。

 2日後、何とか時間を調整して私は収容所内の病院を訪ねた。
 極地には猛烈なブリザードが吹き荒れていた。
 どうみても、ここの生活環境は頗る悪い。
 私は、少尉として任官したての頃に一時期赴任した、雪と氷に閉ざされた極寒惑星のカプチュランカを思い出した。
 「戦闘が無い分、あれよりも多少マシ・・・と言う程度だな」

 コクランはそんな場所の収容叙に隣接された小さな病院の、殺風景な部屋のベッドの上で私の顔を見ると驚きの表情を浮かべ、そして薄く笑った。
 私も軍務での怪我が絶えない方だったので何度か入院生活を体験した事があるが、それにしてもこの寂れた感じはどうだろう・・・。
 ここは、収容所内の病院だから仕方がないのかもしれないが、まるで隔離病棟のようで、あまり清潔そうにも見えなかった。
 窓も、逃げられないように頑丈な鉄格子が嵌っていた。
 室内にはベッドの他には粗末な小さな棚が1つあったが、花が飾られている訳でもなく、本などもなく、古ぼけた水差しが1つだけ・・・何とも物悲しく、侘しい感じだ。



 「・・・あれから・・・もう2年も経つんですね」
彼は感慨深げな表情だった。
 「・・・加減はどうだ?」
 「これでも・・・この病院に入る前に比べたら少しは良くなった方なのです。・・・何しろ、あの世への一歩を踏み出す手前までいきましたので。ハイネセンに戻れば逮捕拘禁される・・・これは覚悟の内だったのですが、まさか、この時代に栄養失調に陥るとはさすがに思いもしませんでした」
 「あぁ、私もそれを知った時は驚いた。その・・・栄養失調だが、少しは良くなったのか?」
 「さぁ、どうでしょうか?実を言うと、今もあまり良いとは言えないのです。1日中ベッドの上ですからね。それにしても、お会いしたのがもう、何十年も前の事のように思えます。・・・閣下はお元気そうでなによりです」
 若い男性看護士の手を借りて、やっとの思いで起き上がった彼が差した手は骨と皮ばかりだった。
 おまけに、その腕には注射の痕であろう幾つもの青黒い痣があった。、
 髪も白いものが混じって、かつての黒髪ではなくなっていた。
 また頭髪自体も随分と薄くなり、彼がこの2年、獄中でどんな扱いを受けていたかを物語っていた。

 人払いを頼むと、看護士は私に鋭い視線を向けたが、そのまま無言で去り、私は彼と向き合った。



 「・・・それにしても驚きましたよ。閣下は私のような者の事などとうに忘れたと思っておりましたから。まぁ、元々仰ぐ旗印が違いますしね。私は敵の辺境の小さな基地のしがない軍人だった男。高名でお忙しい閣下に忘れられていても仕方がない事ですが・・・」
 彼はそう言ったあと、軽く咳き込んで、視線を逸らして窓を見やった。
 「ここには誰か見舞いなどで来るのか?」
 「いえ・・・誰も」
 「誰も来ないのか・・・」
 「そうですね。私が収監された直後は部下の数人が拘置所に面会に来てくれた事もありますが、何しろここは極地ですから、そう簡単に来られる場所でもないですしね。すぐに誰も来なくなりました」
 「冷たいものだな」
 私が漏らすと、コクランは「極地ですから・・・」と薄く微笑んだ。
 「閣下・・・私を訴え出た部下達の気持ちも分からなくはないのです。それに他の部下達も、戻ってからすぐに、バラバラに配置換えとなってハイネセンを離れて行きました。彼等には彼らの生活がありますから、強制的にならともかく、見舞いや面会を求めるのは酷というものです。・・・正直言って見舞い客があなただったたので驚いているんです。何だか不思議な気持ちです。何しろ・・・かつては敵同士だった訳ですから」
 「それはそうと・・・卿には家族はいるのか?」
 ミュラーは彼のやつれ具合で、家族があるのかどうか気になっていた。
 「家族ですか。私には家族はおりません」
 「・・・家族がいない?誰もか?」
 私は眉を潜<ひそ>めた。
 彼のような男なら、結婚ぐらいしていそうに思ったからだ。
 「かつてはいましたが、今はおりません。収監されすぐに私は離縁したんです。妻子は・・・多分、妻の実家のある、ハイネセンの隣の惑星のテルヌーゼンにいると思います。・・・元気にやっているだろうと思う事しか出来ません」
 「そうか。・・・会いんじゃないか?」
 私は何とも言えない気分になったが、特定の恋人もおらず、独身の私には気の聞いた言葉が思いつかず、ありきたりな言葉しか掛けられなかった。
 「会いたくないと言えば嘘になりますが・・・現実問題として会いづらいんです。私は罪人ですからね。だから・・・家族は私が拘置中に死線を彷徨った事など知らないと思います。けれど・・・それでいいんです」
 彼は小さく息を吐いた。
 「罪人・・・卿が罪人と言うのならなら、卿のいたあの基地から物資を接収した私は大罪人・・・という事になるな」
 コクランはやつれた笑みを私に向けた。
 「閣下・・・今更家族に会ってどうしろと?・・・家族には迷惑なだけかもしれません。私には娘が2人いましたが、見舞いに来てくれた部下の話で、私は家族に多大な迷惑をかけた事を思い知りました。私の逮捕拘禁で長女は婚約を破棄され、次女も希望の職に就けなかったらしくて・・・。この話を聞いて、このままでは彼女達には良縁も望めないと悲観的になって離縁しました。妻も気疲れから身体を壊したそうですし。私はこれでも家族を愛しておりましたので、これ以上の迷惑はかけられないと思ったのですよ・・・」
 コクランの悲痛な表情に、私は返答に窮し、慌てて話題を変えた。
 「私も卿が着いて早々に拘禁されたり、ましてや、今のような状況で入院している事を知ったのはごく最近なのだ。知っていたらもっと早く来た・・・と言っても、そんなものは、ただの言い訳にしかならないが」
 「それでも来て下さいました・・・。それだけで・・・私は十分です。本当に久々なのです、誰かが見舞いに来てくれるという事が。そして、誰かと話すという事がこんなに嬉しかったり、楽しいものだと気付かされました」
 彼は小さな声でそう呟いて俯いた。
 「・・・どうだろう?ここにずっといても、今後の卿の為にはならないと思うが。こんな寂しい場所で卿は朽ち果てて行くのを待つつもりなのか?ここにいても何の打開にもなりはしない。どうだろう?私は以前にも卿を配下にと言った事があるが、私の元に来る気は無いか?もう、以前とは状況も変わっているのだし、それに卿もまだ若い。ここはひとつ、再出発という事で・・・」
 「確かに・・・。状況は一変してしまいましたな。・・・我々の希望の星も地に落ちてしまいましたし」
 「希望の星?」
 「ええ、本当に彼は希望の星だったんですよ。まぁ、“希望の星”などと言われたら彼は迷惑そうな顔をするかもしれませんが、我々の小さな希望だったんです。誰だと思われますか?・・・あなた方の敵であったヤン・ウェンリーですよ」
 彼が口に出した名前を聞いた瞬間に、私は首肯していた。
 なるほど、彼ならば“希望の星”だったに違いない。



 「実は、私はリューカスに赴任する前は、ビュコック元帥閣下の旗艦に乗艦しておりました。閣下は、ビュコック元帥閣下をご存知ですか?」
 「ビュコック・・・?あぁ、老練な指揮官だったな」
 私は、昨年初頭のマル・アデッタ星域会戦で、壮絶な戦死を遂げた敵将を思い起こしていた。
 「あ・・・ご存知だったんですか」
 「優れた敵将だ、老獪な手腕を発揮する・・・な。私は直接会った事はないが、帝国軍にも名前は知れ渡っていた。ミッターマイヤー元帥などは、ビュコック元帥の事を『呼吸する軍事博物館』と呼んでいたぐらいだ。卿が旗艦勤務だったとは知らなかったが・・・。あぁ、卿は知らぬだろうが、元帥が戦死された時、あの皇帝陛下ですら、沈んだリオ・グランデの残骸を前に全軍に敬礼を命じられたのだ。そして、優れた敵将のその死を悼んで、床に白ワインを撒いたほどだった」
 それを聞いてコクランは微笑んだ。
 「そうですか・・・そんな事があったとは思いもよりませんでした。元帥閣下はヤン提督を買っていらしたんです。本当の事を言うと、私はヤン提督とは一緒に仕事をした事がありません。ですが、元帥閣下から、良くヤン提督の話を聞いておりました」
 「卿は副官だったのか?」
 「いえ。私はビュコック艦隊で、兵站関係の責任者だったんです。艦隊内部の物資の管理を任されていました」
 「なるほど・・・」
 私は静かに頷いた。
 それならば、リューカス基地にいたのも納得である。
 「元帥閣下は、見た目は少し怖いのですが、二等兵からの叩き上げの方でしたから、私だけではなく、もっと下の階級の者にもご自分から自然に声を掛けてくれるような方だったんです。ですから多くの人に慕われていました」
 「二等兵からの叩き上げか。・・・それでは士官学校は・・・」
 「確か、行っておられませんでした。帝国ではどうか分かりませんが、同盟では他にも士官学校を出ていなくとも、その力量で昇進する事もあるのです。勿論、必ずしも絶対にとは言い切れませんが」
 私は意外な話を聞いて驚いた。
 帝国では、平民出身の者が将官にまでなろうとしたら、士官学校を出て、それなりの戦果を挙げる以外に道がないからだ。
 それもここ最近の話だ。
 ゴールデンバウム王朝時代には、平民の将官などあり得なかった・・・私だって、あの時代が長く続いていれば、良くて佐官ぐらいだろうと思う。
 ・・・ビュコックは何か特殊な事情で昇進したのだろうか?
 そう思ってコクランに尋ねてみたが、彼は首を振った。
 「いえ、そういう訳ではないと思います。・・・同盟には他にも士官学校出ではない将官がおられました」との答えで、自分達の体制との違いに私はかなり驚いた。



 「それでは、卿があのリューカス基地の勤務になったのは・・・」
 「私の場合は単純な配置換えです。少し体調悪くしてビュコック閣下から艦を降りる許可を頂きました。そして、私の手腕を買って下さっていた元帥閣下が推薦して下さったので、私は大佐に昇進して、辺境とは言え、リューカス勤務の司令官になったのです。小さな基地とは言え司令官職でしたから、それは私にとって大出世だったんです。勿論、辺境勤務ですので単身赴任となりましたが、当時、家族も喜んでくれました。元々、物流の事には慣れておりましたので前途洋洋だったのです。その後の事は閣下、あなたもご存知でしょう?ビュコック元帥も戦死なされた上に、ヤン提督までもが横死されるとは・・・。この獄中でも、そういった情報だけは伝わってきたんです・・・」
 彼はそう言うと、遠い目をした後で顔を伏せた。
 「・・・私はヤンの暗殺の報を聞いてから食が細くなりました。生きる気力が一気に萎えてしまったんです。慕っていた人達が次か次へと亡くなるのに、自分だけはむざむざ生かされているる空しさが・・・。閣下にはこの気持ちは分かりますまい。・・・ここ半年は本当につらかったのです・・・」
 コクランが栄養失調になった要因がヤンの横死だと知り、私は反す言葉が見つからなかった。
 自由惑星同盟の軍人達にとって、ヤン・ウェンリーという男がどういう存在であったのかを改めて思い知らされた。
 「希望を失うとどうもさみしいものでして。なにしろ、戦死ではなく暗殺ですからね。何でそんな事になったのか、俄かには信じられなくて・・・。もう、何もかもが馬鹿馬鹿しくなってしまいました・・・」
 とつとつとその頃の事を語りながら、彼は弱々しく微笑んだ。


 
 ヤン・ウェンリーがテロリストに暗殺されたのは1年前の6月だ。
 あの一件は、我々帝国軍をも震撼させた。


 魔術師ヤン<ミラクル・ヤン>死す・・・!


 何しろ、あの皇帝陛下ですら動揺を隠せず、私を敵地であるイゼルローン要塞に弔問に行かせたほどだった。 

 「・・・こんな事を言うのは何だが、ヤン提督の葬儀には出席した。帝国軍の正式な使者として・・・だが」
 「・・・・・・・・・!・・・・・・・・・」
 彼は大きく目を見開いて私を見つめた。
 「・・・それで?」
 「私が弔問した事で、イゼルローン要塞では、私が死諫として送り込まれたのでないかと疑った人達もいたようだが、私は真摯に参列した。その時に、彼の被保護者だという、ユリアン・ミンツ青年と、それから、ヤン夫人にも会って、彼等から生前のヤン提督について色々な事を聞いたのだが・・・」
 「そうですか・・・出来れば私も参列したかったですね」
 コクランはさみしげに目を伏せた。
 「葬儀に参列して思ったのだが、ヤンと言う人物は本当に興味深い。話を聞けば聞くほど不思議な感じがして、興味をそそられた。多少、軍人らしからぬところもあったようで、大の紅茶好きだったとか、昼寝が好きだったとか、歴史が好きだったとか、軍人になったのは本意ではなく、早く退役して年金をもらいたがっていたとか・・・興味深い話が聞けた。だから、生きている時にちゃんした話をしたかったと思える人だった」
 私の言葉にコクランは意外そうな表情を浮かべた。
 「実は、バーミリオン会戦後にヤン提督と会う機会があるにはあったのだが、これは儀礼的なもので、会ったと言うよりはちらりと姿を見ただけだった。その時の印象は、本当にこの人が敵将なのか?だった。私は彼には煮え湯ばかり飲まされていたから、猛将のような人を想像していたので正直言って、その雰囲気に拍子抜けしたというか・・・」
 「なるほど・・・」
 「そうだ・・・。私の左肩が下がっているのが卿には分るか?」
 突然問われたコクランは、「・・・そうですね。こころもち・・・でしょうか?しかし、それが何か・・・」と困惑した表情を浮かべた。
 「以前・・・ガイエスブルク要塞をイゼルローン要塞にぶつけた事があってな。これはその時の後遺症さ。あの戦いで司令官のケンプ提督は戦死されて、私は半年もの間、軍病院のベッドに縛り付けられた。そして、こんな目に遭わせてくれたヤンに復讐を誓ったものだ。その私がヤンの葬儀に行って・・・自分でも驚く人生を歩んでいる」 
 それを聞いたコクランは薄く笑った。
 「なるほど、閣下にも、色々な事がおありだった訳なのですね。ですが、閣下。あなたはここへヤン提督の葬儀の話をしに来られた訳ではありますまい。それで私にどうしろと?既に生きる気力を失ったような人間に・・・」
 私はやや強い口調で彼に問いかけた。
 「ヘル・コクラン。2年前・・・卿は、支配者がどのように変わろうとも、人間の生活の本質は変わらないと言っていたはずだ。・・・ならば、もう1度自分自身の才覚を試してみてからでも遅くは無いと思わないか?ただし、卿がどうしても世捨て人になりたいのなら私は強制はしないが・・・」
 コクランは乾いた笑い声を立てた。
 「ははは。・・・いや、失敬。酔狂な。・・・閣下、あなたも相当な暇人と見える。私は旧同盟の軍人です。しかも半分は世捨て人ですよ。その上、売国奴の汚名を被った男なんです。私のような者を使って・・・」
 私は彼の言葉を遮った。
 「・・・それを使いこなせば、私の評価も上がるというものだ。それに私は卿を稀有な人材だと思っている。・・・失ってしまうには惜しいとね。卿も、状況が刻一刻と変化しているのは分かっていると思うが?」
 私が微笑むと、彼は大きく息を吐いた。
 「・・・なるほど。良く分かりました。閣下には本当に負けましたよ。そこまで言って頂けるのでしたら、私も・・・考え直さねばならないでしょう。・・・不肖、私の身は閣下にお預け致しますので、宜しくお願いします」
 彼の声音には力が漲ったように思えた。
 虚ろだった灰色の瞳にも輝いていた。
 私はそれが嬉しかった。


 「・・・では、卿の刑期を短縮出来るように関係機関に働きかけよう。なに・・・上に捻じ込んででもすぐにここから出られるようにする。そして、もっと設備の整った病院に移ってもらおう。そこで今後に備えて体調を整えるんだ。・・・この2年間、私は何か大切なものをどこかに置き忘れていたように思っていたが、それは卿の事だったのかもしれない。・・・今まで待たせて本当に済まなかったな」 
 「・・・勿体ないお言葉です」
 コクランの両目にうっすらと涙が滲み、彼は痩せ細った手で、けれどしっかりした敬礼を返した。
 私も旧同盟軍人に対して敬礼を返し、彼のような男を救い出せた事にホッとして収容所を後にした。

 そして、その後、オーブリー・コクランは恩赦措置で極地の刑務所を出所した。
 2ヵ月後、すっかり体調が戻った彼は、私の元で、晴れて直属の「主計官」の職に就く事になったのだった。
 
 フェザーンを出立されていた皇帝陛下が、新領土<ノイエ・ラント>となったハイネセンに降り立れたのは5月に入ってすぐの事だ。
 陛下にとっては3度目のハイネセン訪問で、その日は、私とワーレン提督とで宇宙港まで出迎えに行ったが、私の随員の中には、真新しい帝国軍の軍服に身を包んだコクラン中佐もいた。


 コクランは帰りの車中ででオルラウに、「皇帝ラインハルト陛下を目の当たりにして・・・これで漸く吹っ切れました」と笑顔で話したらしい。
 それをあとから聞いた私は、コクランなりに苦悩していたのだろうな・・・と、彼の境遇やら今後の事について感慨深く思ったのだった。



 
Das Ende



 100のお題から「忘れ物」です。

 ミュラー視点なので、「Das Ende」ですが、コクラン視点だったら、「The end」だったかもしれませんね。

 さて、入院中の男はオーブリー・コクラン。
 一応、主人公はミュラー。
 コクランは、同盟の軍人だったのに、最終的にはミュラーの部下となった・・・かなり珍しい生き方を選択した男。
 彼の容姿については私の勝手な設定なので・・・。
出合ったのは、バーミリオン会戦の直前。
 宇宙暦799年です。
 そして、再会したのは宇宙暦801年になります。

 同盟の人間で帝国側に行った、ヨブ・トリューニヒトなんかとは正反対ですね。(リューネブルクも帝国へ行ったけど、あれは逆亡命だから・・・ちょっと意味合いが違います)
 あ・・・テルヌーゼンはハイネセンの隣の惑星です。<原作にも登場します^^



 コクランに関する話は、原作もちょろっとしか触れていないので、自分で想像するしかないんですよね<拘禁されて栄養失調になった後のこと。
 でもまぁ、拾ったのがミュラーで良かったなぁ・・・と。<ちゃんと原作の5巻に登場する話です^^@


 ・・・で、この2人の関わりをキチンと書いてみたかったのです。
 原作の5巻と、原作の10巻を取り出して、2年後って言われても時期はいつよ?って、深読みして、あぁ、多分801年3月と、勝手に書いてしまいました。
 因みに、4月には『ラグプール刑務所』で暴動が勃発しますが、広げすぎてもなんですので、この小説では割愛しました。
 実際、暴動の件は、ミュラーやコクランには何の関係のない事ですので。

 でもまぁ、コクランにとってはショックでしょうね・・・多くの同胞が刑務所内で死んでしまった訳ですから。
 銀のファンなら知っているでしょうが、『ヘル』はドイツ語でのミスターですね。
 ミュラーがヤンの葬儀の時にユリアンに「ヘル・ミンツ」と言っていたのが凄く新鮮でした。
 それで、彼が部下になる前なら、「ヘル・コクラン」という二人称でやってみてもいいかな・・・って。
 「ミスター・コクラン」ではないのがミソです。

 それにしても、原作・・・。
 ミュラーとコクランの経緯については“別の物語になる”・・・とか書いているんですよねぇ・・・。
 別のって何よ?
 結局、最後まで出て来ないの・・・この物語が。
 最初は、外伝にでもこの話が登場するのではないかと思ったんですけど、まぁ、甘かったですね。
 だから、自分で想像するしかないのです。
 後は読み手の想像に任せたよ!!って原作者に振られた読者は、自分で考えるしかない訳で、ある意味、いい加減というか、読者に丸投げですか?<田中先生・・・


 同じように原作者から振られるのがもう1つあるのよね。
 ミッターマイヤーとロイエンタールが出逢うきっかけになった、『ヒンター・フェザーン事件』って話。
 事件そのものついては何も書かれていないので、こちらも想像するしかない訳で。
 実に色々な人が二次創作してますね・・・。

 それにしても、原作に登場しない会話をさせるのって楽しいって言うか、あぁ、行間を埋めているなぁ・・・って気がします。


 因みにコクランを、元、ビュコック爺さんの艦隊の兵站関係を仕事をしていたという設定は私の趣味です。
この時の階級は中佐。
 リューカス時代は大佐なので、昇進に関してビュコックの推薦があったという事にしてしまいました・・・これなら、何とか辻褄が合う。
 銀の場合、帝国軍は芝居がかった文語調の会話なので、コクランもそれに合わせてあります。
 書いている時、ミュラーは声を低めにした水島さんのお声がして、オルラウは梶さんのお声がして、コクランの方は麦人さんのお声がしました・・・これって光臨っていうんですかね!!?

 あ・・・趣味でミュラーの副官のドレヴェンツも出しましたが、ドレヴェンツの声って、真地勇志さんで、結構ビックリしました。
 アニメもされているけど、この人のイメージってやっぱり報道系とか、バラエティ番組のナレーションで、その道では売れっ子だから。
 有名なところでは「あいのり」とか、最近では、「秘密のケンミンSHOW」や「世界の果てまでイッテQ!」など・・・テレビを見ていたら、この人の声を聞かない日はないのでは?と思うぐらい出てますね。
 オルラウ役の梶哲也さんは亡くなられていて、(2005年没)享年79歳だそうですが、テアトル・エコーの所属の方だったので、お芝居を見た事があります。
 オルラウ役も好きですが、銀で結構印象に残っているのは、OVAのカストロプ動乱でカストロプ公を刺し殺した剥げたおっさん(執事って言うか、部下って言うか・・・)も梶さんだったんですよね。 
 まぁ、印象深いのは、きっとカストロプ公の格好がね。
 アレが凄かったからかもしれません・・・。(あの話だけ見たらば、ギリシア神話か、ローマ帝国か何かの話かと思っちゃいます。とてもSFには見えませんです・・)


 しかし・・・コクランの事を思い出してあげたミュラーは本当にエライ! 
 栄養失調で餓死寸前って・・・考えただけでもコワイわ。
 そして、次の職場は『主計官』ですか。
 どんな仕事かと思ったら、軍での会計や給与計算などの職務が『主計』だそうで、まぁ、早い話が経理ですね。
 ・・・で、それに携わる人だから『主計官』と言う訳ですが、給与計算をする人というよりも、この場合の彼の仕事は、“ミュラー直属の会計士”みたいなものと考えればいい訳で、なるほど、コクランが『主計官』なら物資などを含めて、“明瞭会計”間違いなしでしょうね・・・しかも、かなり頑固な感じの・・・爆!
 それにね、兵站関係をこなしていたのなら、主計官なんてちょろいと思う。
 ここで、兵站が何か分からない人の為に書いておくと。

 『戦闘部隊の後方にあって、人員・兵器・食糧などの前送・補給にあたり、また、後方連絡線の確保にあたる活動機能』


 こんなにも凄いミュラー提督なのに、それを演じた水島さんがその事を忘れている事実の方が私は凄いと思うけど・・・爆!(この話はいずれ、「声優さん会いたい!?」で披露させて頂きますね・・・ホントに凄い話なんだもん!)

 補足ですが、士官学校を出ずに将官になった同盟軍人として思い浮かぶのは、ビュコック爺さん以外だと、ライオネル・モートン中将ですね。
 ラルフ・カールセンもかな??


 最後に。
 私的には、コクラン氏を別れたご家族に合わせてあげたい気がします。
 そうなると、ここから先は完全にオリジナルとなりますが、ちょっとした設定だけはしてありまして、奥さんの名はエラ、上のお嬢さんはキャサリン(通称ははケイティ)、下のお嬢さんはレベッカ(通称はベッキー)で、奥さんの実家に身を寄せていましたが、この2年の間に奥さんの父は亡くなり、エラさんは栄養士として働いていて、上のお嬢さんは会計士として、下のお嬢さんはテルヌーゼンの宇宙港近くのレストランでパティシエをしている設定だったりします。
 でも、決まっているのはこれだけで、あとは何も考えていません・・・。
 そう、設定だけして、物凄く時間が経ってしまってます・・・。
 果たして書けるのかしら??
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 でもね、書くと泥沼になりそうなので、書くのを避けたい・・・これが本音。