落としたのが お金で良かった、落としたのが命じゃなくて良かった | 長男は自閉症・オヤジの日記、音楽好きでバンドもやりました

長男は自閉症・オヤジの日記、音楽好きでバンドもやりました

自閉症の長男との暮らし、その思いや日常の出来事を日記として書いてます。

 

 「四月から東京で仕事をすることになりました。あの節は有難うございました。電話で失礼します」と弾んだ声で電話があった。声の主は以前に私の事務所で仕事をした男性だった。

 

 雑用だけの数日間だけで、私は顔も忘れていたくらいなのに、わざわざお礼の挨拶をよこすとは律儀だな、と嬉しく感心した。(以前に出した記事の続編です)

 

 

♪愛と青春の旅立ち

この映画のラストシーンは何度見ても泣けますね。

 

 

 その男性とは中学時代の親友が私を訪ねてきたことから出会いが始まった。自営業の友人は、お得意さんから「訳ありの息子に社会勉強をさせたい、どこか紹介して欲しい」と依頼を受けたとのこと。私はハローワークからの依頼で「訳あり」さんを預かったことがあり、それを彼は知っていたので私に話を持ってきたのだ。

 

「あの当時は仕事が多かったが、今は仕事が激減して手伝ってもらうような仕事はない」と断ったが、他に頼める人がいない、どこも門前払いなので面接だけでもいい、と言うので余程困ってると思い、やむを得ず引き受けることにした。

 

 私は先入観で人を判断したくないので面接は自己紹介程度にして経歴などは不問にした。諸事情はあえて問わず、自ら話してくれたら、しっかり聞けばいいと思った。私は退職した経理さんの事務机を利用して、先ずは彼の居場所を作り、古い資料の整理などの仕事を用意した。

 

 

 

 ●花屋さんに注文したビオラの苗が届き庭に植えました。

 

  私は「知的障がい者の仕事」として輸入雑貨品などの通販を細々と扱っていた。代金は振込手数料が受取人負担で、銀行の振込手数料は高くて負担になるので、安価な手数料の郵便局の振替用紙で支払いをお願いしていた。

 

 入金の手続きを説明した彼に通帳を持たせ自転車で郵便局に行ってもらうことにした。その日は15日の年金支給日で郵便局が混雑するので有難かった。彼は「健康のために徒歩で行く」と言うので、どこか頼もしくも思った。

 

 徒歩で行ったにしても帰りが遅いなあ、と気になった頃に帰って来た彼だが様子がおかしい。遅くなった理由は「郵便局を出て気になったことがあったので戻って確認したので遅くなった」と話した。

 

 そして「すみません、1万円、落としてしまいました」と頭を下げた。私は「落としたのが、お金で良かったよ、落としたのが命じゃなくて良かったよ」と咄嗟に口に出た。彼は「えっ!」という顔で私の顔を見た後、じっと頭を下げていた。その姿が、過去にいろいろあったかのように思え、かわいそうで切なかった。

 

 

 振込手数料を節約するような事業所で1万円を失うのは痛い。でも、落としたのがお金なら、取り戻せる可能性があるが命は落としたら取り戻せない。それは東日本大震災で大切な人を突然失って、それを学んだから咄嗟に出た私の言葉だった。

 

 

 その東日本大震災以降、私は地元業者という配慮を受けて復興関連の土木工事の仕事を受けていたが、10年を区切りに復興事業は終了。そこにコロナ禍で仕事が激減し、インボイス制度は税務説明を受けて非課税業者に登録して導入をしなかった。

 

 ところが導入した会社から「適格事業者登録番号の確認が取れていないお取引様」との理由で仕事が入らなくなり、残った雑工事を消化するだけになった。これも終われば会社清算の手続きをするしかないが、その後どうしようかと考えると頭が痛い。

 

 

 負け惜しみでも、真面目に生きてさえいれば、いつかは、お釣りがくるくらい、いいことに巡り合えるさ、と願ってはいるが、世の中、そうは簡単に「問屋は卸さない」ものですね。

 

 そんな気持ちでいる中「あの節は有難うございました」と礼を言われて元気をもらったようで、こちらこそ、有難うと言いたい気持ちになりました。きょうは、それだけでも良いことのあった日、なのかもね。ニコニコ