小説を読むと、次を知りたくて仕方なくなります。

電車乗車時に読むことが多いのですが、行きで読んでいると、続きが知りたくて帰りの車中が待ち遠しい...。

で、できたら読みやすい状態で乗車できたら、嬉しい!

と思ってしまいます。

 

今回は、

「愛おしい骨」

愛おしい骨 (創元推理文庫)

 

行方不明の弟は長年、死んでいるのか、どこかに埋まっているのか?分からない時間を家族や町の人は過ごしてきた中...

その弟の骨が、定期的に自宅に届けられる、という奇妙な出来事が発生。

この失踪か?行方不明か?という一人の人間には関係なく過ごしている...だろう家族ではない町の人の人生にも、主人公の弟が行方不明になったことがカギとなって、色々な面で影響を受けていて...。

読み進めていると、不思議な気持ちになってきます。

人って、ここまでつながっているものなんだろうか...。

今を生きていると、そこまで何かの影響を受けることを実感する場はあまりないのですが、きっと起こることの何かは、色々な人の人生や感情、記憶に何かしらの影響を及ぼすものなのだろうな、と改めて感じた内容です。

そう思うと、ご近所さんとのご挨拶ももう少し、丁寧にしてもいいのでは、と思ったりします。

 

読んでいて色々な人が色々な形で関係している人間関係にも興味を感じます。

関係性は、かなり複雑なチャートになるのでは?と思うほど。

こういう複雑さもなんだか愛おしく感じられるように構築されているんだろうな...。(タイトルのすごさも感じたりします)

そして、主要な人物は、細かく口に出さなくても、個々の人間性を掴んでいて、そして尊重して生活している描写に、思わず気持ちが入りこんでしまいます。

魅力的な登場人物がたくさんの中、気になるのは家政婦として、行方不明の弟が暮らしていた家庭ですべてを取り仕切っている、小柄な女性。

家政婦、という職業ですが、もっと深く、愛情豊かに家庭に存在しているハンナ。

しかも、町の人たちの動きやその気持ちにも敏感に反応していく様は、かなりの有能な方と見受けられます。

なのに、彼女が何者なのか、というあたりはずっとあいまい。

でも、だれからも頼りにされて、そしてその個性を尊重されています。

大きなカギとなる登場人物は、身近にいてくれる安心感を、読んでいるこちらにも感じさせてくれます。

小説の中にもある、

魔法を使う

と表現される、ハンナの行動は、とても魅力的。

きっと...こういう方は、本当の意味での魔法使いなんでしょうね...。

適したところに適したもの、状況を提供し、処理していく。

あこがれるなぁ...。

そんな、愛すべき登場人物がたくさんの小説です。

ミステリとしても楽しいですが、人物に入りこむのも楽しい作品でした。

おすすめです。