昨日は長い1日でした。市役所での顛末を記録として残しておこうと思います。タイ人との結婚に関心のない人には、きっと読みづらいと記事になると思いますが・・・

 

お昼ごろYの運転する車で証人になってくれる女性2人のそれぞれの家へ迎えに行き、市役所に着いたのは約束の時間の10分くらい前でした。番号札を取って待っていると、15分ほどしてYの番号が呼ばれました。

 

窓口の担当者に案内されて、国際結婚の決裁権限を持つ女性管理職のところに連れて行かれました。何らかの面接があるだろうとは思っていました(以前の結婚ではありませんでした)。でも何を聞かれるかはまったくわかりません。まず「貴男はタイ語が話せますか?」という月並みの質問に、「少しなら話せます」と、これまた普通に答えて長い面接がスタートしました。

 

挨拶程度の簡単なやりとりのあと、「タイにどれくらいの期間暮らしていますか?」という話になりました。「12年が経ちました」と答えると、若い頃はチャーミングだったと思われる、50代前半くらいの市役所ナンバー2の女性管理職は「そんなに長くタイにいる理由は?」と突っ込んできました。「当時はタイ人の妻がいたので、一緒に暮らすためにタイに移り住みました。でも妻はその5年後、つまり7年前に亡くなりました」と話したあたりから、いよいよ面接は佳境に入って行きました。

 

「そのあと貴男は一人でいたんですか?」という質問に、「いいえ、別のタイ人の女性と・・・」と私が答えようとしたら、なぜか横からYが素早く口を挟んできました。再婚したことと、相手の女性の名前を私ではなく彼女が答えました。続けて、「でも結婚して2年後くらいに離婚しています」と、それも彼女が言いました。そうしたらナンバー2は怪訝な顔つきになり、私が持参した日本総領事館作成の書類に目を落とし始めました。2通の書類はコピーをして1か月前に市役所に渡してありました。ところがナンバー2がそれを見るのは昨日が初めてだったようです。そこから長いバトルが始まりました。

 

面接の時間は予想に反して1時間近くかかりました。そしてその大半は、私が“独身”なのかどうかに費やされました。日本国の総領事館が「独身証明書」を発行しているのです。そしてその「独身証明書」の「この人は独身であることを証明する」と英語で書いてある、まさにその文言に疑問を差し挟んできたのです。結論を先に言えば、私の勝ちでした。ナンバー2が初歩的なミスを犯していたからです。

 

まずナンバー2は「貴男はタビアンバーンを持っていますか?」と聞きました。私は「タビアンバーン」というのはタイの住民登録証のことだと理解したのですが、やりとりするうちに、ナンバー2が求めているのは戸籍謄本だということが分かりました。私は「チェンマイの日本総領事館は私の戸籍謄本(family register)に基づいて私を独身だと証明してくれているんです」と説明したにもかかわらず、ナンバー2は執拗に「その戸籍謄本はいまどこにありますか?それをタイ語に翻訳した書類がありますか?」と迫ってきたのです。「戸籍謄本は家にありますが、それは日本語です」と答えるよりありませんでした。

 

するとナンバー2は「その再婚した女性とは、どこの役場に婚姻届けを出しましたか?」と聞きました。これにもYはすかさず「ハンドン役場です」と答えました。するとナンバー2は部下に命じて、オンラインで取り出せる過去の私の結婚離婚歴を出させました。タイでは国内のすべての役場がオンライで繋がっているか、あるいはどこかにデータが集中管理されているようです。目の前に以前結婚したMの本名や生年月日、離婚した日付などが記された文書が出され、確認を求められました。それによって私が独身であることに納得してくれると思ったのですが、そうではありませんでした。

 

日本国総領事館が発行した「独身証明書」には“独身”の単語に「unmarried」という単語が使われていました。私が「だから今の私が独身だって書いてあるでしょ」と言っても、ナンバー2は「いいえ、この単語は同じ独身でも、“結婚したことがない”という意味です。でも貴男は再婚して離婚したのですから、そういう風に書いてなければいけません。“unmarried”ではありません」と主張したのです。さらに部下に命じてタイでの国際結婚の手続きマニュアルを持って来させました。タイ語なので私には分かりませんでしたが、おそらく「純然たる独身者」と、「離婚して独身となった者」をタイでははっきり区別して扱うようなのです。なので、私がいくら「今は独身でしょ」と力説しても、「そうですけど、独身の中身がちがいます。貴男の持ってきた証明書はその点が不十分です」と言うのです。

 

まさに私としては「天を仰ぐ」ような気分になりました。日本政府の発行した文書が不十分だとこの人は言っているのと同じことです。「じゃあ、私はどうすればいいんですか?」と言うしかありませんし、実際にそう言いました。「日本総領事館に今電話して聞いてみますか」と言いそうになって、さすがにそれは思いとどまりました。

確かに現在の私が独身であることは彼女も認めるのですが、持って行った証明書に問題があると言われているようなものでした。

 

次の一手を双方が考えているかのように、一瞬、私とナンバー2の間に沈黙の時間がありました。私は最悪のことを考えました。ナンバー2が「この証明書では不十分だから出直してください」と言い出すかもしれないと不安になったのです。そんなことはできるわけがありません。総領事館にどう言えばいいんでしょう?「日本政府の作った英文の公文書が間違っていると、チェンマイ市役所の責任者に言われました」なんて言えますかね?しかも自分でも間違いだと思っていないのですから、言えるわけがありません。かと言って、決裁権限のあるナンバー2に向かって「貴女の英語の知識がおかしいですよ」とは言えませんよね。自分自身の結婚案件でなければ私も言えるかもしれませんが・・・

 

それよりも何よりも、「もし今日結婚できなければ、Yはどんなに悲しむだろうか」と想像しました。私との正式の結婚を心の底から待ち望んでいたYの心が傷つくのは目に見えていました。でも横にいるYの顔を見ると、意外に落ち着いていました。まったく動揺している気配がありません。黙って事態の推移を見守っているという感じでした。そのとき、ふっと脳裏をよぎったのは、総領事館の文書のどこかに離婚歴も書いてあったような気がしたのです。

 

2通の文書を私の手許に引き寄せて、「ごめんなさいね」と一言発してから私はメガネを外し、(タイ語の翻訳文ではなく)英文のオリジナルを読み直しました。家で一度だけ目を通したことはあったのですが、もう1か月以上も前のことです。内容の詳細は忘れていました。丁寧に見直してみると、「独身証明書」ではなく「結婚資格宣言書」と呼ばれる長い方の文書にありました。ちゃんと「・・・私は以前2度結婚しましたが、直近の所では2019年9月5日に離婚しています」と書いてありました。もっと以前のことはともかくとして、離婚歴についてちゃんと書いてあったのです。しかもそこに下線まで引いてありました。領事館もその部分が重要だと分かっているのです。

 

そうなると、「独身証明書」にある“unmarried”という英単語の解釈云々の話は吹き飛んでしまいました。一件落着です。ナンバー2は「結婚資格宣言書」の方をまだちゃんと読まないで「独身証明書」の英語の一語に引っかかってしまっていたのです。私は“unmarried”という単語は「現在独身」と言う意味にとれると解釈したのに対して、彼女は「結婚したことがない」と理解していたわけです。確かに2つは意味は微妙に違います。どちらが正しいのか、もうそれはどうでもいいことになりました。

 

「独身問題」が片付いたあと、今度はYに対して色々な質問が飛んできました。「どこで知り合ったのですか?」に対して、Yは何の躊躇もなく「マッチングアプリのtinderです」と答えました。付き合いの期間も正確に答えました。そしてナンバー2はこんな質問を彼女にぶつけました。

 

「けっこう歳の差がありますけど、なぜこの人と結婚することを決めたのですか?そもそも、どちらから結婚を言い出したのですか?」

 

歳の差があることはどうでもいいことだと私は思いますが、ナンバー2は聞いてみたかったのでしょう。26歳の差はタイ女性と外国人の結婚では決して珍しくもなんともないはずです。Yはこう答えました。

 

「以前付き合っていたタイ人の男性も自分より相当の年上でしたし、仕事でも高齢の外国人を相手にしていたので慣れていました。だから全く抵抗がありませんでした。結婚したいと思うようになったのは、ライフスタイルが似通っていると思えたことが一番大きいです。とくに付き合い始めて暫くして、二人でワット・タム・ムアンナに行って、3日間お祈りの時間を持ったことがありました」

 

ナンバー2は続けてYにこう聞きました。

 

「へえ、ワット・タム・ムアンナですか。ロン・プ・ドゥーゆかりのチェンダオのお寺ですね。この人は仏教徒なのですか?」

 

「いいえ、この人は本当はクリスチャンです。にもかかわらず一緒にあのお寺に行って、お祈りの時間を過ごしてくれました。それがキッカケで、この人となら一緒に生きていけると思えるようになりました」

 

そのあと私の収入のことや将来どこに住もうとしているのかなど、いろいろと聞かれました。最後に私の元の職業についても聞かれました。それは提出した書類のどこにもなかったのです。私が所属していた組織の名前を出すと、またYがしゃしゃり出て仕事の内容を補足しました。「この人のことなら私は何でも知っています」とアピールしたかったのかもしれません。ナンバー2が「公務員ですか?」と聞くので、「いいえ、違います」と私が答えました。もし「そうです」と答えたら、もっと親近感を持ってくれたかもしれませんね。

 

ナンバー2は、厳格に諸規定に則って手続きを進めようとする、ごくまともな公務員だなと思いました。決して賄賂を受け取るような腐敗した役人ではないでしょう。ただ、提出した書類をちゃんと事前に読んでほしかったなと思います。読んでくれていたら、面接の時間は10分もかからなかったと思います。ただ、そう言えば私も同罪で、ちゃんと中身を覚えていれば、すぐに指摘できたことです。英単語の解釈をめぐって論争することはなかったでしょう。

 

ところで面接の最後に、ナンバー2に向かって逆にYが早口のタイ語で質問しました。私にはそれが理解できなかったので後で確認したところ、Yは「タイ人同士の結婚だったらすぐ受理されて5分もかからないし、証人も不要で簡単に結婚できるのに、なぜ外国人の場合は時間がかかるのですか?」と聞いたのだそうです。ナンバー2の答えはこういうことでした。

 

「タイ人の女は外国人の男のお金を目当てに結婚しようとするケースがとても多いんです。逆に外国人はタイ人と形だけ結婚して土地や家を買ったり、事業を起こしたりするケースがあるんです。つまり結婚の実態が伴わないケースが多いんです。だから、タイ人同士の結婚とは違って慎重に審査します」

 

やはり私が想像した通り、偽装結婚防止のために時間をかけているということのようです。でも結婚の実態を伴っているかどうか・・・それは結婚してみなければ分からないことだと思うのです。その前に役所が判断できることでしょうかね?イミグレが結婚ビザを出すかどうかという話と混線しているのではないでしょうか。少し違和感を覚えます。結婚がお金が目当てかどうかなんて、役所が審査する話ではないと思います。その国が定める国際結婚の要件さえクリアしていれば、役所が受理すべきなことは論を待たないと思います。日本人的な考えなのでしょうかね?

 

さて、決裁権限のあるナンバー2のOKが出たあと「婚姻登録証」が発行されるまでに、Yはたくさんの書類を書かされ、私も保証人2人も、何か所にも署名させられました。市役所に着いてから実に3時間はたっぷりとかかりました。保証人には「1時間くらいかかります」とYは言っていたのですが・・・

 

 

この「婚姻登録証」の発行手数料は6年前は100バーツだったのが、昨日は150バーツでした。業者に頼むと7000バーツで手続きをしてくれるということだったのですが、そうしなくてよかったと思います。

 

チェンマイ市役所は外国人の結婚をなかなか受け付けてくれないという評判は日本人に限らず、他の国籍の外国人の間でも出ています。Yはフェースブックの情報でそれを確認しており、受け付けてくれるとしても数か月かかると言われていました。1か月ちょっとで結婚できたのは、きっとYの想いが通じたのだと思います。私は紙切れには興味はありませんが、Yは大事に額に入れて部屋に飾っておくそうです。その点では二人のライフスタイルが同じではないようです。

 

さて、昨日はお昼ご飯抜きだったので、夕方市役所からタイしゃぶのお店に直行して、証人になってくれた従姉と叔母さん、それにYのお姉さんが加わって5人で食事しました。

 

 

偶然座った席の壁に「BETTER MOOD」という、この日にピッタリの文字があることに写真を見て気づきました。意味するところをタイ語にすれば「アロム・ディー」、つまり気分がいいということです。やっぱりYの祈りに応えてロン・プ・ドゥーが二人を見守ってくれているような気がします。

 

今日Yは朝から市役所の支所へ行って、さっそく自分の姓名を私の姓に変更する手続きをしてきました。そして銀行口座も変更するために3か所の銀行を回っています。一方の私は午前中から、珍しく2時間近くもかけて、このブログをやっと書き終えたところです。もし最後まで読んでくれた方がいるとすれば、それこそ「お疲れ様」でした。

 

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