このところ(週刊誌を含む)日本のニュースのメインは、岸田首相と小池都知事の命運に加え、特に新聞は「円安」関連の記事がトップに躍り出ています。私も素人ながら、為替レートに関する記事を1年に2回か3回くらいブログに書いてきました。それらはあくまでも海外在住者としての悲鳴のようなものです。今日はちょっと趣向を変えて、傍観者的に最近の円安を眺めてみたいと思います。

 

日本政府や財界は「円安」を歓迎してきたことは間違いありませんね。言うまでもなく工業製品などを外国に輸出する場合は「円高」だと利益が少ないからです。その逆に「円安」の場合は外国からモノを買うときに高くなるのは殆どの人が知っている“基本の基”、常識です。

 

そしてもう一つの常識は、アメリカの経済指標がドル円の為替レートに非常に大きな影響を与えてきたということですね。しかもドル以外の外国通貨に対する円の為替レートがドルと相当程度連動していることも周知の事実です。ひと頃ほどではありませんが、バーツも例外ではありません。

 

さて今回の「円安騒動」の発端は、日銀がほぼ10年ぶりに極端な金融緩和政策(超低金利政策)を変更する方向に舵を切ったにもかかわらず円安になっていることですね。常識的に考えれば、少しでも円の金利が上がる方向に動けば、円が買われて「円高」方向に振れるだろうと専門家も考えていたはずです。ところが蓋を開けてみると、全く逆でいっそう「円安」になってしまったのでしたよね。しかも予想外の「円安」で、連日のように「34年ぶりの円安更新」という見出しが付くくらいに激しく円が売られました。

 

メディアで言われているその理由に一つは、金融緩和環境はまだ続くと日銀が総裁会見などで明言していることがあります。もうひとつは、円が多少利上げされてもドルとの金利差はあまり縮まらず、相変わらずドルが買われて円が売られる土壌が温存されていることです。しかもFRBは金利を当面は下げないだろうという、当初の予想に反する観測が最近強まっていることもこれに拍車をかけています。

 

そんな中、日本の連休中の4月29日に財務省は手持ちのドルを売る為替介入を行ったのではないかと言われていますよね。しかも、あのちょっとユーモラスな風貌と言っては失礼ですが、事実上事務方トップの神田財務官が介入に関してはノーコメントだったので、「覆面介入」の可能性があります。その効果があってか、円は1ドル160円を超えるレベルから一時的に154円ほどの「円高」に触れました。でもまた「円安」方向への揺り戻しがあって、157円程度で落ち着いているのが現状ですよね。

 

さて今日「売国行為?」と言う見出しを付けたのはなぜでしょうか。政府日銀が売国奴と言うつもりはさらさらありません。自ら円を売ってドルを買っているなんてことは絶対にないと信じたいからです。そもそもアメリカがこの「円安」をいつまでも容認するはずもないという穿った見方すらあるくらいですから。とくに「もしトラ」のトランプは円安を極端に嫌っています。

 

ズバリ言いますと、日本人の中にも円を売ってドルを買う人が相当に増えているはずです。何を隠そう私も10年ほど前にドルを買いました。と言っても、試しに三菱UFJ銀行の外貨預金口座を開設して1ドルだけ預金したのです。ただしその口座はずっとそのままです。もう10年くらい円安が続いていますから、本気で持ち金の一部をドルに変えるという賢い選択をしている人がかなりいるのではないかと思います。

 

たとえば100万円をドルに変えて持っている人が10万人いるとしましょうか。総額は1000億円、ドルでは今のレートで6億2500万ドル。もし50万人いれば5000億円です。もし100万人いれば1兆円になります。その額の円が売られることによって為替相場にどの程度影響するのか私には分かりません。でも円安に寄与していることは間違いない事実でしょう。つまり投資家でなく庶民であっても、自らの行動が「円安」の要因のひとつになりうるということが言いたいのです。「売国奴」というのは単に言葉のアヤですが・・・

 

国民の多くが円を売ってドルを買うことによって少しでも利益を得ようとすればするほど、自国の通貨価値は下落し、物価は上がり・・・そういうスパイラルが出来上がると言えなくもないのです。塵も積もれば山となる。国民一人あたり1万円をドルに変えるだけで、1兆円の円を売っていることになるのですから。

 

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