【工事中】 税金 使って「カジノ建設の露払い」 | 大阪ミナミの山小屋(別館)だより

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大阪万博の中止はもう無理なのか

・・・ 3187億円の税金を使って

「カジノ建設の露払い」をするという

無責任の体系

 

PRESIDENT Online 2024年5月18日(土)

9時17分 配信

 

 

2025年大阪・関西万博開幕1000日前イベント

(写真=内閣官房内閣広報室/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons)

プレジデントオンライン

 

■ この空気は東京五輪の前とよく似ている

 

大阪・関西万博開催まで1年を切ったが、日に日に「中止」または「延期」せよという声が弱まってきている気がする。どうせ、反対しても強行するに決まっているという諦めムードが漂っているのは、東京五輪の前とよく似ている。

 

 

 

大阪・関西万博/万博会場大屋根建設現場を報道公開

 

これまでに挙げられた万博開催を中止すべしという「理由」を列挙してみたい。

 

第1は大幅な工期の遅れと膨れ上がる費用である。

 

「多額の税金が投入される会場整備費は、当初見込みの約2倍となる2350億円まで膨らんだ。独創的なデザインを競う海外パビリオンは想定よりも建設スケジュールが大きく遅れ、着工はわずか十数カ国(4月上旬時点) にとどまる」(47NEWS 4月15日 10:30)

 

さらに昨年の東京新聞 (11月27日付) によると、出展するパビリオン「日本館」や途上国支援などで別途837億円を計上したことが明らかになり、万博の全体費用は総額3187億円になるというのだ。

 

第2は、万博会場になる「夢洲 (ゆめしま) 」の軟弱な地盤の問題。夢洲は元々産業廃棄物や建設残土などの「ゴミ捨て場」として造成された。そのために地盤は“豆腐状”といわれるように緩く、地震などでの地盤沈下や液状化リスクがある。

 

その上、土中にポリ塩化ビフェニル (PCB) などの有害物質が埋まっている可能性も指摘されている。

 

■ 万博は露払い役で、本当の狙いはカジノ

 

第3は、万博よりもカジノありきではないのか。

 

万博は松井一郎氏が大阪知事だった時に動き出した。松井氏が自著『政治家の喧嘩力』(PHP研究所) で自ら書いているように、万博は当時、大阪府・市の特別顧問をしていた堺屋太一氏と、大阪市長の橋下徹氏が寿司屋で会食している時、堺屋氏がいい出したそうである。酒席で決まった思いつきであった。

 

だが、それに乗った橋下氏が大阪万博招致を表明し、当時の安倍晋三首相と菅義偉官房長官がゴーサインを出して本格的に動き出した

 

その後、2018年に悪名高いIR法 (カジノを中心とした統合リゾート設立推進法) が成立した。大阪府市の財政問題を抱えていた松井氏は、なりふり構わず「大阪・関西の持続的な経済成長のエンジンとなるのが、統合型リゾートだ」と飛びついたのである。

 

万博を露払い役として位置づけ、メインはカジノなのだ。しかし、事業者に応募したのは1社だけだった。カジノに来る外国人たちは博打をしに来るので、大阪経済への波及効果は期待できないという見方が多い。

 

■ “弟分” の吉村知事が哀れに思えてくる

 

第4は、国民の万博への関心の薄さである。大阪府と大阪市が昨年12月に実施したアンケートでは、

 

「アンケートで『万博に行きたい』と答えた人は全国で33.8%にとどまり、1年前から約7ポイント下落。ミャクミャク (万博のキャラクター = 筆者注) であふれる府内に限っても36.9%で、2023年度の目標に設定した55%を大幅に下回った。ミャクミャクの人気にあやかるのにも限界がありそうだ。

 

チケットの売れ行きも芳しくない。万博協会が設定する販売目標は2300万枚。前売り販売は昨年11月末に始まったが、4月3日時点で約123万枚と、目標の6%にも満たない。前売り販売目標の約半数は企業購入分に頼っており、今後はどれだけ個人購入を促せるかが焦点となる」(47NEWS)

 

その上、今年1月には能登半島地震が起きた。共同通信が2月に実施した世論調査では、万博より復興を優先させるために、中止または縮小・延期するべきだという声が7割を超えた。

 

これほどの逆風を受けながら、吉村洋文大阪府知事は「復興を理由に万博に反対するのは違う」と、強気の姿勢を崩さない。

 

兄貴分の松井氏や橋下氏が決めたことだから、弟分としては何としてもやり遂げるという任侠道に殉じるような姿には、哀れを誘うものがある。

 

■ 前回万博の「月の石」のような目玉がわからない

 

それに、私が不思議に思うのは、いまだに「未来社会の実験場」というコンセプトなのに、万博の “目玉” が何になるのかわからないことである。

 

前回1970年の大阪万博では米国パビリオンの「月の石」だったそれを一目見ようと長蛇の列ができた。もう一度それを展示したらどうかという報道があったが、それほど今回の万博には目玉になるものが何もないのであろう。

 

少し前にテレビを見ていたら、今回の万博のために「人間洗濯機」なるものを開発したという人物が出ていた。

 

その人は、前回の万博で展示された「人間洗濯機」を開発したそうだ。たしかに、そんなものが話題になったことがあったような気がする。

 

その人が、最新のシャワーメーカーの協力を得て、未来型の人間洗濯機を完成させたから、万博に出展したいと話していた。

 

だが、半世紀前なら、そうしたものが驚きをもって迎えられたのかもしれないが、今は、カプセルのような狭いところに入って全身を丸洗いされるよりも、温泉に浸かってノンビリするほうがよほど優雅に思える時代ではないのか。

 

もしこれが万博会場に展示されたとしても、話題を呼ぶとはとても思えない。

 

こうした数多くの深刻な問題を抱えたまま、東京五輪と同じように開催されるのだろう。

 

■ そもそも万博の責任者とはだれなのか

 

諦めではないが、何かモヤモヤしているのは、いったい誰が万博運営全体の責任者なのか、顔が見えないからなのではないか。

 

吉村知事も万博の細部については知らされていないようだ。松井氏も橋下氏も現役を引退している。安倍元首相は亡くなり、菅氏もあっという間に首相を降ろされてしまったから「責任者出てこい」といいたくても誰にいったらいいのだろう。

 

批判は渦巻いているが、責任者の顔の見えない不思議な万博なのだ

 

そうした中、週刊新潮 (5月16日号) で、責任者を名指しして万博の中止を求めたのが建築家の山本理顕氏 (79) である。

 

建築家ならではの専門的分野からの指摘は、これまでほとんどなかった。山本氏は責任者を名指しし、その批判には十分な説得力がある。したがって万博協会 (公益社団法人2025年日本国際博覧会協会) もこれを無視できないはずである。

 

万博開催賛成、反対派も山本氏の意見にぜひ耳を傾けてもらいたい

 

まず、山本氏はこう話す。

 

「会場をぐるりと囲む木造の大屋根、通称『木造リング』と呼ばれる『大阪・関西万博』のシンボルは、大阪へ万博を招致する最初の段階で作成された計画案には、明記されていませんでした」

 

■「あれほど酷い計画は、建築家から見たらあり得ない」

 

「いったい誰がいつ、つくると言い出して建設することに決まったのか。その経緯も含めて責任者が不明で、信頼できる情報が発信されているとは言い難い。数々の疑問に対して、責任者がしっかりと答えてくれればいいだけなのに、それができていません」

 

3月5日、建築界のノーベル賞といわれる「プリツカー賞」を受賞した山本氏は受賞後のインタビューで、大阪・関西万博について問われた際「あれほど酷い計画は、建築家から見たらあり得ない」などと舌鋒鋭く批判したという。

 

そこで新潮は、山本氏の真意を聞くべく、インタビューに赴いた。

 

「今回の万博における問題点は『責任者が誰なのか分からない』ということに尽きます。

 

(中略) 国や大阪府・市などの行政のみならず、経団連など民間からもお金を投入し『国家事業』として進めているのですから、責任の所在は隅々まで明確でなければなりません。

 

私が建築家の立場から憂慮する『木造リング』についても、実際は誰が考案して設計したのか。会場の設営を進める万博協会が、いつ誰に依頼して承認したのか。常識的に納得できるような公的説明が皆無です」

 

■ 建築家なのに、設計は他社に委託する不思議

 

「旧ツイッターのXなどでは、万博の会場デザインプロデューサーである建築家の藤本壮介さんが、“自分が考案した” と言っているようですが、実際のところ “考案” とは具体的に何を指すのか。(中略)

 

実のところ『木造リング』の設計自体は業者に委託されています。2021年7月『リング基本設計技術提案』がコンペ (プロポーザル) の形で公募され、万博協会は『東畑・梓設計共同企業体』を設計者として選定しているのです」

 

藤本氏は自分が考えついたというのに、設計は他人がしたほうがいいと考えたのはなぜかと山本氏は疑義を呈する。

 

「1970年大阪万博の丹下健三 ―― 。万博のシンボルを設計した者はその栄誉とともに記憶されています。(中略)

 

翻って、今回の万博で藤本さんは会場のプロデューサーであると同時に、シンボルとなる建築の設計者の役割も担っている。自分ではそう言っているようですがそれならなぜ最も重要な『木造リング』の設計を他社に任せたのか。全く納得がいきません」

 

その上、設計コンペにおける審査のやり方が、驚くほど杜撰なものだと指摘している。

 

■「全く公開性のない審査で決められています」

 

「これまで数多くのコンペを経験してきた私から見ても、公平な審査とはとても言えない。根拠不明の点数のみで、その内容は分からない。藤本さんによる選定理由の文章だけで、建築家たちは納得するだろうか。これが総工費350億円の公共建築の設計者選定の審査結果なのです」

 

このような審査に対して、コンペ参加者から3月に、以下のような怒りのメールが届いたという。そこには、

 

〈審査委員には、木造の専門家も、構造の専門家も、リユースや資源循環の専門家もいません。さらに、具体的にどのような提案がヒアリングに残ったのか、どのような議論が行われ最終案が選定されたかは、上記の簡単な記述だけでメディアに対して全くオープンにされていません。全く公開性のない審査で決められています。プロポーザル参加者としては (中略) 納得のいかない審査結果を押し付けられた感が強いです〉

 

というものだという。

 

「あまりにも杜撰としか言いようがない。このコンペ要項を作ったのは藤本さんです。プロデューサーとしての責任感が欠如していると思います。

 

なるほど、東京五輪と酷似した構図ではないか。

 

さらに「木造リング」の構造計算や積算業務は極めて難しいという

 

■ 矛先は「建築界のドン」安藤忠雄氏にも

 

今回の「木造リング」には、日本の伝統的な工法である「貫構造」を模したものが採用されている「貫構造」とは、釘やボルトや金物を一切使わず、柱と梁の接合部を楔 (くさび) で固めて木造構築物を支えるのだという。

 

だが、耐震性への不安から今ではほとんど使われていない。そうした理由から実施設計と工事を請け負ったゼネコン3社は、工期に間に合わないなどの理由で「貫工法」で作ることを諦め、金物で補強する手段を選んだという。

 

「こうした専門知識のないままに、大阪府知事や大阪市長は『貫構造

』でつくるかのような解説をしていましたが本来はプロデューサーである藤本さん自身が正確な説明をしなくてはならない。

 

それなのに、彼には説明責任者としての自覚が全くない。そもそも自分がなぜプロデューサーに指名されたか分からないというのですそれは藤本さんから直接聞きました」(山本氏)

 

さらに批判は、建築界のドンといわれる人間に向く。

 

「19年12月に、建築家の安藤忠雄さんをはじめとする13人のシニア・アドバイザーが選ばれています。(中略)

 

安藤さんは同年10月に万博のロゴ選定委員会の座長になっており、翌年1月には『万博の桜2025』実行委員長に就任。次々にインパクトのある提案を打ち出しました」

 

■ IRは「本当に大阪市民へ還元されるのでしょうか」

 

「中でも最も大きなインパクトがあったのが、プロデューサーに指名された藤本さんによる『木造リング』だった。それはあまりにも唐突な提案でした。すべての混乱はここから始まったといっていいと思います。(中略)

 

アドバイザーである安藤さんの責任は、万博のために働いている建築やデザイナー、様々な専門家たちが、その技量を十分に発揮できる環境を整えることではないでしょうか。

 

それが今や、逆に彼等や万博協会の信用を貶めるようなことになっています。安藤さん自らの説明がないからです。安藤さんはその責任を感じるべきだと思いますが、今は全く公の場に現れません。安藤さんに言いたいことは、その責任から逃げてはいけないということです」

 

舌鋒は吉村知事にも向く。

 

「万博の会場は、大阪市民が生活する街から遠く離れた場所、大阪湾のゴミ処分場の跡地です。そこに会場をつくると決めた政策自体に問題があります。

 

大阪の都市計画、未来へのビジョンがないまま、短期的な金銭的利益のために万博を利用するのは間違っている。万博用地の後利用として、IRを計画した方が合理的だと考える人もいるかも知れませんが、そこで生まれた利益は、本当に大阪市民へ還元されるのでしょうか。ほとんど海外のカジノ業者の利益になるだけではないでしょうか。(中略)

 

■ 万博の役割はとっくに終わっているのではないか

 

「万博は現在のみならず未来の住人に対して夢を与えるために開催されます。『夢洲 / 万博 / IR』が、地元自治体トップである大阪府の吉村洋文知事の夢だとしたら、それは大阪の人たちに共有されているのでしょうか。未来の住人であるはずの子どもたちに、きちんと伝えられる夢なのだろうか。甚だ疑問です」

 

何一つ付け加えることはない。これぞ万博を即刻中止すべき最大の根拠を示す檄文である。

 

考えてみれば、五輪も万博も過去の遺物である。世界の強豪が集うスポーツの祭典なら、毎年、どこかの国で開催されている。万博も然りである。AIの凄まじい発展は、数カ月先も見通すことができない。世界万国博覧会の役割はもうとっくに終わっているのではないか。

 

時代遅れの遺物に国民の血税を湯水のごとく注ぎ込み、祭典が終わっても、その金がどこにどう使われたのか、詳細を公表しない東京五輪のようなやり方は、国民を愚弄しているといわれても仕方あるまい。

 

ましてや、万博の跡地にギャンブル依存症を多数作り出す賭博場をつくるなど、狂気の沙汰としか思えない。

 

思えば、万博アンバサダーに就任していたダウンタウンの松本人志が、女性たちへの性加害疑惑で降板した時点で、汚れた万博を中止するべきだったのではないか。過ちては改むるに憚ること勿れ。今こそ立ち止まって考える最後の機会であるはずだ。吉村知事が英断を下すのを心して待ちたい。

 

 

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元木 昌彦(もとき・まさひこ)

ジャーナリスト

1945年生まれ。講談社で『フライデー』『週刊現代』『Web現代』の編集長を歴任する。上智大学、明治学院大学などでマスコミ論を講義。主な著書に『編集者の学校』(講談社編著)『編集者の教室』(徳間書店)『週刊誌は死なず』(朝日新聞出版)『「週刊現代」編集長戦記』(イーストプレス)、近著に『野垂れ死に ある講談社・雑誌編集者の回想』(現代書館)などがある。