回避できたはずの立往生と車内閉じ込め ・・・ | 大阪ミナミの山小屋(別館)だより

大阪ミナミの山小屋(別館)だより

大阪ミナミの避難小屋 ろっぢ・・・
山と自転車と日本酒が好きな小屋番がお待ちしています。

ちょっと覗いてみようという方、
090-3493-7868 へご予約・お問い合わせください。

 

 

 

 

 なんや ・・・

 

 

 

JR西に忖度したような内容の報道ですなぁ。

 

何度も このような現場を経験した小屋番としては

今回の混乱は、まさに人災やと感じますわ。

災害に対する正しい危機感があれば ・・・

 

まぁ 机の上で

又聞きの情報だけで指示を出すだけの組織では

また、同じ事を繰り返すんやろなぁ ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

計画運休の判断は?JR西

「 大雪で車内閉じ込め 」、なぜ防げなかったか

トラブル回避できたはずの4つのチャンス

 

東洋経済オンライン 2023年1月28日(土)

5時21分 配信

 

 

大雪の影響でJR大津駅に停車している電車。多くの人が車内で一夜を明かした

=2023年1月25日午前5時ごろ(写真:共同)

 

1月24日の夜から25日朝にかけ、JR琵琶湖線・京都線 ( 東海道本線 ) の山科 ― 高槻間で15本の列車が駅間で立ち往生し、多くの乗客が車内に長時間閉じ込められた事態を受け、JR西日本の長谷川一明社長は26日に東京都内で開いた定例記者会見で、「 重大な運行トラブルを引き起こし、多くの乗客のみなさまにご迷惑をおかけしました。誠に申し訳ありません 」と陳謝した。

 

 

1月26日に都内で開いた記者会見で陳謝するJR西日本の長谷川一明社長

 

なぜこのようなトラブルが起きていたのか。時系列で振り返る。

 

■ 「 寒波襲来 」警戒はしていたが ・・・

 

「 今週末以降、今季最強の寒波が2回襲来する 」。日本気象協会が1月17日に予報を出した。1回目は20日から21日にかけて強い寒気が流入し北海道や新潟、北陸などで雪が強まる。2回目は23日から24日にかけてさらに強い寒気が本州を覆うというものだ。京阪地区を含む広い範囲で降雪があり、「 西日本に強い寒気が入るため、大雪や低温による災害に注意が必要 」と警告した。

 

19日には、24日の天気について「 近畿地方には10年に1度くらいしか南下しないほどの強烈な寒波が押し寄せる見込み 」と発表、23日には関西地区の都市部についても「 大雪への備えが必要 」とした。

 

JR西日本は万全の備えをしたはずだった。2005年4月の福知山線脱線事故で乗客・乗務員合わせ107人の死者を出した同社は、「 安全の確保こそ最大の使命 」として日々の運行に取り組む。2014年10月には台風19号の接近に伴い、大都市圏では初とされる本格的な計画運休に踏み切った。

 

今回の寒波襲来に際しても23日夜の段階で、東海道本線の大阪 ― 京都間を含む京阪神地区の全線区で運転取り止めの可能性があると発表。警戒を怠らなかった。

 

大雪対策の1つとして、JR西日本は次のような社内基準を定めている。降雪が10cmを上回ると見込まれる場合は、分岐器に設置している装置を点火して雪を熱で溶かすというものだ。降雪量が増えると分岐器が支障をきたす。分岐器とは線路を分岐させ、列車の進行方向を決める機器。大量の雪が分岐箇所にたまると転換ができなくなる。不具合が生じると信号が青にならず、列車は進行できない。

 

 

 

 

 

 

北陸など雪が多い地域の分岐器は電気で融雪する機能を備えている。一方、京阪神ではそこまで雪が多くないことから、作業員が分岐器の設置場所に行き点火して、灯油を燃やして融雪する。後者の場合は、列車が行き交う中では点火できない。そのため京阪神地区では通常、始発列車の出発前にこの作業をする。しかし、JR西日本が契約している気象予報会社は積雪予想を8cmとしており10cmに満たなかっため、24日早朝に点火は行われなかった。

 

 

 

 

■ 18本・7000人が駅間で足止め

 

この日は強風のため各地で架線に支障物がひっかかるなどのトラブルが相次ぎ、ダイヤはかなり乱れていた。そんな中、16時半、日本気象協会は「 京阪神を中心に積雪が多くなる恐れがあります。交通機関への影響に注意が必要 」と予報を出した。しかし、ダイヤ乱れに加え、これから帰宅ラッシュが始まるという時間帯である。列車を止めて点火作業を行うという決断はできなかった。

 

もっとも、この時点で点火作業をしても間に合わなかったかもしれない。京都市内では局所的に降雪量が増え、今回の列車トラブルが起きた場所では積雪量が15cmに達した。

 

19時00分、京都駅から大阪駅方面におよそ6km離れた向日町駅構内で雪のため分岐器が転換不能になり、西大路 ― 向日町間を走行中の特急「 サンダーバード 」と新快速2本、計3本の列車が駅間で停車した。その後、京都駅構内、さらに京都駅から草津方面におよそ5km離れた山科駅構内など京都近辺の複数箇所で一気に分岐器の転換ができなくなり、19時40分から50分にかけて10本の列車が駅間停車した。

 

分岐器トラブルによる駅間停車は山科 ― 高槻間で15本、ほかの区間も含めると18本。これらの列車に乗り合わせた乗客は合計で約7200人に達した。

 

長谷川社長が分岐器不具合の第1報を受けたのは、大阪駅近くの本社内でほかの役員と打ち合わせをしていたときだった。「 早く復旧させてほしい。作業に専念してください 」と現場に伝えた。

 

同社では長時間の列車内閉じ込めを防ぐため、列車が停車して1時間経過したら乗客を降車させることにしている。これに従えば、遅くても21時には乗客を降ろす決断をしなくてはいけない。しかし、日が暮れた暗闇の中、雪が降りしきり、場所によっては路面が凍結している可能性もある。

 

乗客を降ろした結果、転倒などの2次災害を起こすわけにはいかない。車内に閉じ込められた乗客と向き合う乗務員が「 乗客を降ろしたい 」と要望しても、「 安全の確保こそ最大の使命 」――。一方で、作業員たちが現場で分岐器の除雪や解凍に取り組んでいる。さまざまな部署の意見を勘案したうえで、現場を指揮する三津野隆宏・近畿統括本部長は分岐器の不具合が解消するまで列車内で待機するという判断を下した。

 

 

 

 

■ バーナーでも溶けない雪

 

しかし、作業は難航した。気温が低く雪が凍ってしまい、バーナーを使ってもなかなか溶けないのだ。分岐器の不具合が直って列車が動き、最寄り駅のホームで乗客を降ろすことができたのは、山科 ― 高槻間で駅間停車した15本のうち13本だった。23時頃から翌日1時頃にかけて駅間停車が解消。これらの列車の駅間停車時間は短い列車で1時間42分、長い列車で5時間22分だった。

 

一方で、分岐器不具合を解できず、乗客の降車を決断せざるをえない列車もあった。19時40分に山科 ― 京都間に停車した特急サンダーバードと普通列車の2本である。とくに普通列車にはおよそ1400人が乗車していた。長時間にわたって乗客に車内で待機してもらうと逆に車内で安全上の問題が起きかねない。23時すぎ、三津野本部長は乗客の降車を決断した。

 

帰宅していた長谷川社長の元にこの情報も届けられた。長谷川社長もかつて近畿統括本部長として現場の指揮を取っていた経験があるだけに、三津野氏の苦渋の決断は痛いほどよくわかる。長谷川社長は「 現場の判断を尊重する 」と決めた。

 

23時すぎから乗客を列車から降ろし始めた。特急サンダーバードは乗客数も300人程度と少なく、山科駅構内に停車していたので移動はスムーズに終えた。しかし、1400人が乗車していた普通列車の降車作業は時間を要した。線路脇の道は幅が狭く、1人ずつしか歩けない。高架から地上に降りる階段は作業用のもので、足を滑らせないように慎重に降りる必要がある。一方で、歩くのが不安だという理由でいったんは車内に残ることを希望した乗客もいた。こうした人も含めて最終的にすべての乗客の降車が完了したのは25日の朝5時半だった。

 

この列車では、最後の人は10時間近く車内にいたことになる。けが人こそ出なかったが、18本の列車を合わせると体調不良により乗客16人が救急搬送された。復旧作業が完了したのは25日の10時18分だった。

 

■ どうすれば防げたか? 

 

このように考えると、今回の長時間閉じ込めトラブルを避けることができる4つのチャンスがあった。

 

まず、24日始発前の点火作業。ただ、予想降雪量が社内規定を下回っていたのでは、作業を行う判断は難しい。

 

2点目は、当該列車が駅間に停車してから降車するまでに長時間を要したことだ。しかし、ほかの列車が分岐器不具合を解消し、列車を最寄り駅に移動させて乗客をホームに降ろしたことを考えると、この列車は乗客数が多いだけに分岐器の不具合解消に期待をつなぐという判断も仕方がないだろう。

 

3点目は、降車開始から終了までに長時間を要したことだ。安全を最優先した結果とはいえ、日頃の訓練などを重ねることで短時間で終える工夫ができなかったのかとも思える。

 

そして、4点目はそもそもこの日の東海道本線を計画運休すべきだったかどうか。これも難しい判断だ。

 

安全の確保こそ最大の使命という考え方に立てば、確かに乗客が負傷するような事態にはならなかった。しかし、長時間の閉じ込めで多くの乗客がストレスを感じ、体調不良で救急搬送された乗客も出たことを踏まえれば、今回のような事態は防がなくてはならない。

 

長谷川社長は、「 結果責任は自分にある 」と言い、関係部署が検証作業を行うことで再発防止につなげる考えだ。複合的な事象が重なっているだけに解決策を見いだすのは容易ではないが、安全な運行のためにはいっそうの努力が欠かせない。

 

大坂 直樹 :東洋経済 記者