石川県珠洲市野々江町にある「イタリアン・カフェ こだま」昨年からボランティア活動で珠洲に通う中、度々訪れ、絶品ピッツァを味わっています。オーナーご夫妻、兼盛康寛さん、美和さんにインタビューしました。

 



共に石川県白山市出身、ご主人・康寛さんのお母様の実家が珠洲市にあり、林業をされていたおじい様の跡を継ぐために約37年前に珠洲に住まいを移されました。珠洲の森林組合に入り、木の伐採など珠洲全体の山を管理していました。

 



-お店をはじめたきっかけを教えて下さい。

(康寛さん)林業をやってたので身近に木があって、ワインにハマってワインと合う食材、薪窯でピザを作ろうと思って、木を伐り窯を作り楽しんでいました。趣味からお店をやってみようかなと思いました。オープンして今年3月で10周年です。

 



-木をふんだんに使っていて、亡き父が材木屋だったもので、この雰囲気、大好きです。何といってもピッツァの種類が多くて美味しいですよね。ピザとピッツァの違いは何ですか?

(康寛さん)窯で焼くのがピッツァ、オーブンで焼くのがピザです。

 

-「こだま」さんのこだわりを教えて下さい。

(康寛さん)地元の食材を使ったピッツァに、アレンジを加えて美味しく提供しています。例えば「いしる海鮮ピッツァ」いしるはイカの魚醤で海鮮風にしたピッツァです。イノシシの肉を使った「珠洲ジビエピッツァ」地震後は珠洲ではないですけど奥能登のイノシシを使っています。珠洲の宗玄酒造さんの酒粕を使った「酒粕ピッツァ」もあります。


震災前は「珠洲こだまピッツァ」がありましたが、珠洲に震災後食材が無くて、限定を広げて奥能登バージョンで「能登こだまピッツァ」に名前を変えて、能登町のブルーベリー、ハーブウインナーなどを使ったピッツァもオススメです。

 

(能登こだまピッツァ)

 

(美和さん)「こなピッツァ」が作れるのが一番嬉しいですね。狼煙でとれる岩にくっついている「こな」という海藻を使ったピッツァです。震災後、隆起した海岸でとれなくて当分無理かと思っていたら、今年はとれるようになって「どうする?買う?」と言ってくれたおばちゃんに「うん、買います、すぐに」って買いました。


-何回も来てるのに食べてないですね。

 

(美和さん)みんな絶賛してます。「こな」をさっと火であぶってご飯の上にのせて、醤油をチョロっとかけて食べるという話を、年配の方からよく聞きました。

 

***インタビューの翌日「こなピッツァ」を食べに行きました。ビックリ、美味しすぎて。海藻なので見た目は地味ですが、口に入れると、これまで体験したことが無いほどの磯の香りが口の中に広がり、チーズとの相性も良く、絶賛の意味がよく分かりました。

 

(こなピッツァ)

 

(美和さん)若山町の鈴内で日本みつばちからとれたはちみつを使った「ハニーピッツァ」もオススメです。昨年9月の豪雨で巣箱の場所まで辿り着けないとか、はちみつをとる作業所に土砂が入ったりとか大変だったんですけど、頑張ってやってくれてて、はちみつの生産がまた始まったのでずっと使い続けています。

 

(ハニーピッツァ)

 

(木こりピッツァ)

 

(カレーピッツァ)

 

(バジルピッツァ)

 

-美味しさの秘密は、やはり薪窯でしょうか?

(美和さん)高温で一気に焼き上げるというのが良いのか、外はパリっ、中はモチっを目標に焼いています。
 

-薪窯はオーナーさんの手作りですか?

(康寛さん)開業当初から手作りの薪窯を使ってましたけど、昨年元日の震災で潰れちゃって、今回新しく職人さんに作っていただきました。なりわい補助金があって、手作りのものはいくらか分からないので申請が通りにくいと聞いて。違う補助金を使って業者さんにお願いして薪窯を作ってもらいました。

 

 

-昨年の元日、能登半島地震が発生したときはどちらにいましたか?

(美和さん)お店を営業していて、ランチ営業後の休み時間。強い地震があったので、店にいた4人は外の駐車場に避難して、中に入ろうかなと思った16時10分頃、大地震が発生しました。なんか変な動きの揺れで、しゃがもうと思ってもすっころぶ、みたいな感じでずっとコロコロ転んでいました。

自宅が70年以上経つ古い家で、長女と末っ子(三女)が自宅にいたのですぐに連絡したら「大変なことになってるー」って。潰れてはなかったけどガラスがいっぱい割れて、玄関に物を置いてたので出れなくなって。でも自力で出て。末っ子が動画を撮っていたんですよ。次女は店にいました。

-動画、冷静ですね。

(美和さん)撮らなきゃと思ったんですね。貴重な映像、家中すごいことになってる映像です。

 

***大地震の際のその動画を見させていただきました。ガラスが割れる音、物が倒れる音など音が物凄く、色んなものが散乱する中「ヤバイ、ヤバイ」と言いう緊迫した声と、大地震の凄まじさに戦慄を覚えました。

-揺れがおさまってからどうされましたか?

(美和さん)窯の火が気になって不安ながらも、津波が来るって、とにかく逃げようと、とりあえず若山小学校を目指しましたけど、電柱が倒れていたり、マンホールが突き上がっていたり、橋が浮き上がっていたり全然たどり着けずに、娘と合流していく予定やったけど出来なくて。ちょうど集会所があって、皆さん集まっていたので私たらも入れてもらいました。

娘とも連絡がとれて、田んぼの雪が積もってる中、2人で歩いてきました。そこからケガ自慢で「ガラスで足こんなけ切った」「私の方が酷いよ」とか。でも学校で防災のこと習ってたのか防災グッズをちゃんと持ってきていて、その中に入れていた絆創膏で傷に貼ってました。現在長女が28歳、次女が25歳、末っ子が二十歳で、当時は高校生でした。

-その後は?

(美和さん)津波の避難が解除されて、自宅に寄って店に戻りました。余震がすごくて、店の中は怖かったので車の中で一晩過ごしました。夜空の星が綺麗すぎて憎らしいんですよ。停電してるので綺麗すぎて。「あ~、綺麗や~」と思いながら、憎らしいなって思ったのが印象的ですね。

-珠洲は星がすごい綺麗ですよね。

(美和さん)あの日は一段と綺麗で、あれほど憎らしい星はなかったですね。

 



***実は大地震の前年、2023年5月5日、珠洲で最大震度6強の奥能登地震があり被災。でも翌日、営業しようと一生懸命片づけ、夜になり、さあ帰ろうと思った瞬間に震度5強の余震が発生。それもすごい揺れで、また店内、酷い状況になり、結局翌日の営業は出来なくなったそうです。その際ピッツァを焼く薪窯にヒビが入り、完全に直しきっていない状態で、昨年元日の大地震でした。

 



-さすがに大地震からすぐに営業は難しかったですか?

 

(康寛さん)店は電気が翌日1月2日の昼に点いてエアコンが使えたので、店の中で片付けながら過ごしました。ただ水が出なかったし、もちろん窯も壊れたので営業出来ませんでした。休んでる間に移動販売で使うガス窯を引っ張り出してきて。それも壊れてたんですけど、なんとか自力で治してとりあえず使えるようにしました。そうしているうちに、水が100軒に入ると聞きました。

(美和さん)3月10日に水がきますよと連絡があって、どこに入るか分からない。みなし仮設にいましたから、金沢から前日に来て、水が出るはずと蛇口をひねったら水が出ました。珠洲で一番早くお水がきました。病院や避難所が近かったから、入りやすい場所だったとはいえ、2軒先は水が出なかったので、ホントすごいタイミングで運良く、数%の確率でした。

 

娘夫婦は道の駅のななめ向かいに「トリトン」を営業していて3月11日に再開。私たちは元日のままになっていた店内の片付けや掃除をして3月12日に再開しました。

 



-再開されていかがでしたか?

(康寛さん)とりあえず営業出来て嬉しかったけど、他の飲食店が全然営業出来ていなかったので、あまり喜べなかったです。

 

-お客さんは大変喜ばれたのでは?

(康寛さん)あったかいのが食べられるって喜んでもらえて、みんなカップラーメン生活でしたから。お水で泣いてた人もいました。

-みなし仮設から通ってらしたんですね。

(美和さん)当時メモったノートに「体調が悪い」って書いてて。舌がしびれて、水もきっとセーブしていたんでしょうね。トイレも通常通り出来ず我慢してたので。みなし仮設から通ってましたけど金沢にいても全然面白くなく、ひたすらネットやテレビで珠洲の情報を見たり聞いたりしているだけの状態で、気分転換にどこかに出かけようといってもなんかね。何もなくても珠洲にいた方が気が楽でした。店が再開してから、家は半壊だったので営業日は店で泊まって、休みは金沢に行って食料調達もあったり、洗濯も、やることがいっぱいあって金沢で分散してやってました。

 



-ところで昨年9月21日に豪雨災害があり1年が過ぎました。豪雨でも被災されたそうですね。

(美和さん)豪雨で氾濫した若山川のすぐそばの川べりに住んでいて。自宅に水は入らず大丈夫でしたけど、資材置き場は1.2m浸水して、こだまのテイクアウトの箱3000枚泥だらけになって、請求書も届いてなかったのに。自宅を再建しようと思ってたのでテレビとか家財を安いのを見つけて買っておいた。それが全部水で浸かって。オープンの時に使っていた移動販売用のピザ窯をなおしたけど、今は用がないので保管していたら半分浸かって。壁も水圧ではがれ、魚が取り残されて…。

-資材置き場はどうなりましたか?

(美和さん)ボランティアがすぐに来て下さって5日間かけて泥出ししてもらって、物資配布場所になって、そのあと手放しました。食品のものとか置きたくないので…。

-これほど度重なる被害に悩まされて、辛かったですね。


(美和さん)そうですね。辛かったですね。でも嬉しいこともありました。震災後の2月10日、大阪のホテルで次女の結婚式に出席しました。このような時期に結婚式をやっていいのかどうかと思っていましたけど、結婚式良かったです。孫が生まれて、かわいくて、辛いことばかりではないです。

 



-昨年の1月から振り返っていかがですか?

(美和さん)長かったようで短かいし、短かったようで長かったし、いろんな方が復旧復興のために来て下さっていて感謝しかないなと思っています。

-伝えたいことはなんですか?

(康寛さん)震災後、空地が増えて見るところも少ない珠洲ですが、また復旧を見に珠洲へ足を運んでくれたら嬉しいです。

(美和さん)珠洲にはいろんな自然が残っているので、来たことがある人はどういう風に変わったのかなと思って見に来ていただきたいし、初めて来る方は、いろいろ酷いところもありますけど、地震てこんなことになるんだな、自然の力ってすごいなって感じていただいたり、お店も営業再開してきているので、美味しいものも食べてほしいなって思います。観光に沢山来てほしいですね。お待ちしてます!

 

(康寛さんのお母様が描かれた見附島。とても素敵です。)

 

***実は放送直前に康寛さんからメッセージが届きました。放送日の前日9/21、イベントに出展され、資材置き場で浸水被害に遭い、自力で修理していた移動販売用の窯が1年ぶりに復活しました!と。写真を送って下さったので掲載させていただきます。

 

 

イベント用のピッツァを焼く窯。復活おめでとうございます!

 



こだまさんはパスタも美味しいです!

 

(1番人気は濃厚カルボナーラ)

 

(いしる海鮮パスタ)

 

(のと115の和風キノコパスタ)

 

(カニのトマトクリームパスタ)

 

(トマトとエビのパスタ)

その他にもグラタンやドリア、サラダ、一品料理もあります。

 

(窯焼きエビグラタン)

 

(コーンエビサラダ)

 

ドリンクも充実しています。

 

(イタリアのオレンジ味のソーダ「アランチャータロッサ」)


お料理を引き立たせてくれる、珠洲焼のお皿や器で提供されているのもおすすめのポイントです。コーヒーカップは今年から。フォルムが可愛くて素敵です。

 



さて兼盛さんご夫妻、能登半島地震で半壊の判定を受けたご自宅は、当初、公費解体をされる予定でしたが、古民家再生の話があり、70年以上の家を壊すより残した方が良いかなと考えが変わり、古民家再生を視野に入れ検討されています。

能登半島地震の3週間前に、ご主人のおじい様が亡くなられ、大地震が発生した際、家の中がグチャグチャでお仏壇も前に倒れたにも関わらず、おじいさまのご遺骨だけ、置いていた場所から動かなかったそうです。「おじいちゃんが家を守ってくれた。この家を再生してほしいのかな」と。

 

 
美味しいものを食べに、美味しい空気を吸いに、綺麗な星空を見に、ぜひ珠洲の旅を計画して下さいね!

 

(9/22 ON AIR LIST)

M1.桑田佳祐/SMAILE~晴れ渡る空のように~
M2.ジャネット・ケイ/Always
M3.DREAMS COME TRUE/何度でも(ゲストリクエスト)

M4.米津玄師/馬と鹿
M5.小田和正/こんど、君と