岩手県陸前高田市で
2年半前にも宿泊した
「ペンション福田」

オーナー 吉田弥津子さん(78歳)

オーナーと呼ぶより
女将さん、という呼び方が
似合っています

 



2011年3月11日
当時のご経験を伺いました

大地震が発生した際
自宅にいた吉田さん
外に出ると町内会の人たちが

道路に出ていました

 

町内会の会長だったため
寒かったのでストーブを炊いて
皆さんを公民館に集めようと
カギを家に取りに行き
再び道路に出たとき
津波がジワジワ来たのが見え
海のそばで育った子供の頃
父親の言葉を思い出しました

「津波は普通の波の流れと違う。
あれに足を取られたら
引っ張られて死んでしまうから。
あっ…これなんだ。
高い所に逃げて、裸足で、必死だった。
公民館も何も無くなったの…」

皆さんを公民館に集めていたら…
カギを取りに行くのが
遅れたことが幸いしました

高台にご主人の姿は

ありませんでした


近所の高齢のおばあさんを
避難させようとして
津波に巻き込まれてしまいました

建設会社の社長を務めていた
吉田さんのご主人は
先代が51歳で病死したため
24歳で跡を継がれたそうです

その1年後にご主人と結婚

従業員がたくさんいて
若い夫婦が会社を任され

「主人の苦労をずっと見てきた…」

会社と自宅が同じ敷地内にあり
鉄骨の建物の一部は残りましたが
津波で流されてしまい
息子さんが同じ場所に会社を再建しました

ご主人が発見されたのは

震災から4日目
3月15日の朝でした

瓦礫の山でしたが
多分この辺にいて流されたから
この辺りにいるかもしれないと
息子さんが重機を頼み
瓦礫を取り除くと、その真下に…

「立派なまんま、どこも傷つかないで。
免許証も財布も時計もついたまんま。
本人って、はっきり…。
やっぱり親子だったんだべな。
あれだけの瓦礫の山でさ
本当に運命を感じたね。
こんなにガレキが重なってたら
泳ぎが上手でも浮き上がれない。
なんでその前に逃げられなかったのか」

発見された際
メディアが沢山いましたが
町内会の人たちが
映さないで下さい、って
手を繋いで囲ってくれました

「あれで良かったのかな。
こういう状態では浮き上がれない
津波って恐ろしいんだよって
伝えたい部分も…あった。
とにかく逃げる、という事を。
でも町内会の人たちは
みんなで守ってくれたのかなって」

ご主人は体育館に運ばれました

どこに運ばれたか分からず
毎日探し歩いてる人も
多くいたそうです

「みんながそうだったから
泣くに泣けないんだよね。
体育館、足の踏み場も無いんだもの。どこも…」

3月19日
一関の火葬場に向かいました

「その時、何も無いのね。
お花買ってやりたいけど。
従業員の人たちがスミレを
いっぱい摘んできてくれて
それを棺の上に…。
別の従業員のお母さんは
おにぎりいっぱい作ってくれて。
だからあの時のスミレの花と
おにぎりいっぱい
あれは忘れられない。感謝だ…」




 

今年の母の日

「息子からのプレゼントなの!」

コチョウランと微笑む吉田さん


なぜ震災後

「ペンション福田」の
経営者になったのでしょうか

こちらは震災遺構の一つ
「下宿定住促進住宅」で
4階まで津波で浸水しました

 

 

この建物の前にあったのが
「民宿福田荘」

吉田さんの姉夫婦が
長年経営されていましたが
津波で流失しました

その後、高台に再建するため

ペンション福田建設中に
お姉さんのご主人が病死
お姉さんは「やりたくない」と言い
誰かがやらざるを得なくなり
吉田さんが経営者になりました

 

2014年6月オープン
70歳の時でした

手伝ってもいいよ、と
軽く言ってたものの
全てがのしかかってくるとは
思わなかったそうです

「だから夢中。
失敗したくないから夢中。
人が相手でしょう。
どんな人がくるか
全然分からないんだものね。
開業当時は常に10人以上
その対応がね…」

このペンションで寝泊まりし
夜遅くまで宿泊客に気を配り
ほぼ1人で切り盛りされています

「休む暇ないのね、頭が。
ホントに私にとっては
大変な商売してるんだなって。
こんな1人づつさ
気を使う商売なんて初めてだもの」

 

でも、吉田さん
「良いお客さんに恵まれて
感謝しています!」
何度も仰っていました

 



今年6月
オープンから8年になりました

仕事の関係で
約半年の長期滞在の人がいたり
自身のお孫さんのような
年代の人が多く
家族・家庭の悩みを
抱えている人たちからの
お話を聞くこともあったり

「少しでも役に立ってるかな」

吉田さんと話していると
やさしく包み込んでくれる
そんな温かさがあり

心が落ち着きます

前回、宿泊時は時間がなく
お話出来なかったのですが
私の母は51歳で他界
初めて吉田さんに会った時
母親を思い出しました
また泊まるんだったら
ペンション福田と決めていました



2階の廊下です

 

撮り忘れましたが

1階の廊下とロビーが広く
木の温もりが感じられる空間

 



この達筆な筆文字!
吉田さん、こんな才能が
ホント素晴らしい!

竹駒町滝の里という高台にあり
部屋は15室(和室・洋室)

 

私は素泊まり(5500円)
洋室で目覚めて窓を開けると
木々の緑に癒されて
鳥たちのさえずりが

心地良く響きました

 



お風呂とトイレは共同です
お風呂の湯加減が抜群です!

駐車場40台


HPはありません
予約は電話のみ
電話番号 0192-55-4078

東日本大震災から

10年を迎えた昨年
吉田さんが書かれた

手記の一部をご紹介します

 

「ペンションのお客様にも

ようやく自分の口で

当時の津波の状況を伝えることが

出来るようになりました。

私の心の復興が進んできたことの

実感だと思っています」


(6/20 ON AIR LIST)
M1.佐野仁美/希望のカケラ
M2.プレイヤー/BABY COME BACK
M3.*はなおと*/命の根
M4.芦田愛菜/雨に願いを(リクエスト)
M5.石田裕之/KOBE♡アイノウタ(リクエスト)