Masterの1から10シリーズのように長い記事となるが、アメリカPhD留学に興味のある人へできるだけ具体的で役立つ情報を提供できるように努めていく。
PhD(博士課程)は教育者、研究者、そして科学者になる為の学位。つまり、目的は明確である。この1から10シリーズでは、筆者自身の経験、率直な意見のみならず、実際に取る側(大学院側)の都合や選考基準等も書いていく。
研究者とは何か新しいことを発見して、それを科学的知識として世の中に提供していく。その科学的知識は、治療ガイドライン、医療方針決定等の根幹となる。研究をして科学的な根拠を示す作業はとても責任があり、影響力のある仕事である。そして、とてもやりがいのある仕事である。
応じて、研究を行うためにはとてつもない量と質の研究知識と技術の獲得が求められる。ずばり、日本は臨床研究ではるかに遅れている。科学がどんどん進んでいる今日、高い質の博士課程による訓練が求められていることは明らかである。
研究者としてのPhDとMasterの違い
科学は研究結果のみならず、研究手法や技術、知識も進化しているので、一生研究者として訓練していかなければならない。世界的に影響力のある研究者も、常に自分を訓練して、より質の高い研究をしようと毎日奮闘している。さて、
PhDでは、その基礎となることを一通り、自分の研究を通じて勉強できる。めちゃくちゃ大切なステップだ。察しの良い人はもう何が言いたいかわっかているかもしれないが、研究者としての訓練は、PhDから始まる。Masterは本当の研究レベルで見るとまだまだ真似事レベル(とても大切な第一歩ではあるが)。現実的な話をするとPhDをとって初めて、自分の研究ができる。つまり研究者(科学者)になりたい人はこのPhDは避けては通れない!
それでは早速筆者のPhD留学の道のりを時系列で、鍵となるイベントをまず列挙する。*x*マークがあるものは、時系列の後に詳細説明やおススメする情報を提供する。
時系列
- 2014年8月~9月*A*:イリノイ大学シカゴ校でMaster2年目の夏から秋に本格的に自分の進みたい大学院の研究室を探し、それを元にPhDプログラム絞り込む:University of Kansas Medical Center、University of Oklahoma、University of Pittsburgh。
- 2014年9月:この3校の事務にコンタクトを取り、アメリカでMasterを取るのでと、PhD受験の為のTOEFLとGREの免除を交渉して、了承を取る。
- 2014年10月*B*:自分のPhDアドバイザーとなってほしいProncipal Inventigator (PI: 研究室のボス)に直接コンタクトを取って、実際にどのような研究を現在行っているか、学生を取る予定はあるのか聞く。
- 2014年10月~11月:3人のPIから返信があり、CVを送ってくれと言われる。
- 2014年12月:電話、あるいは直接会ってUniversity of OklahomaとUniversity of PittsburghのPIからインタビューを受ける。
- 2015年1月~2月*C*:3校のPhDアプリケーションをする。Masterと同じでPersonal Statement、と3通の推薦文、Masterと日本の学士の成績証明書の送付、そしてオンラインアプリケーション。ここでもやはり学位授与機構についての説明を求められる。※アプリケーション自体はMasterとほぼ同じ。詳細は以下の記事を参照
- 2015年4月*D*:3校から合格通知が届く。University of Kansas Medical Centerは学費免除とGraduate Teaching/Research Assistantとしての仕事のオファー付き。University of OklahomaのPIからは直接取りたいと連絡があり、グラントが取れ次第、学費免除とResearch Assistantをオファーすると言われる。
- 2015年5~6月: 悩んだ結果、University of Kansas Medical Centerに決める。そして、秋までにMasterの論文を終わらせて卒業すると大口をたたいていたので、この時期に死ぬ気でMasterの論文、Thesis、そしてディフェンスをなんとかクリアして卒業
- 2015年8月:晴れて、PhD開始!!
- 自分のその後のキャリアに「直接」役立つ;研究一つを始めて、きちんとした論文になるまで3年はかかるので、そのアドバンテージはデカい
- アメリカの場合、PhD学生を事実上とるのは学部ではなく研究室のボス(PI)。PIが「この学生を自分の研究室に入れたい」と言えばほぼ間違いなく受かる。つまり、研究目的が具体的であればあるほど自分が行いたい研究を行っているPIを探しやすいのと同時に、マッチすればそのPIも取りたいと思う確率があがる。この際、MasterでThesisを取りすでにその分野に役立つ研究スキルを身に着けていればより一層「欲しい学生」となれる確率が上がる(論文があればなお一層良い)。
最後に
PhD過程で学べることは測りきれない。研究者、教育者、そして科学者としての礎を築くことができると同時に、人間としても大きく成長できる。PhD卒業試験であるDissertationをクリアした瞬間に呼ばれた「ドクター」という響きはそれまでやって来た全てが報われた感覚となる。科学者としての不可欠な1歩、そしてその後の人生にとってとてつもなく意味のある時間を与えてくれるPhD過程。興味のある人達、真剣に考えている人達へ、アメリカPhDは最高に学べて、未知のことを経験できる場所です。この記事を通じて少しでもそのような人に有益な情報を与えることができるのなら幸いです。
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US Central Sensitization Research
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