COURRiER Japonは世界中の1500超のメディアの中から厳選された記事を翻訳、編集した月刊誌(毎月10日発売)。
今月号はR+(レビュープラス)様から献本いただきました。感謝申し上げます。

 毎月多様なソースと独自の視点で世界の現状を伝えてくれるCOURRiER Japon。
ブログでは雑誌に掲載されなかった記事が読めたりするので、こちらも合わせて読むことをお勧めします!
今月号の記事も特集も実に多彩で読み応えがありました。

 例えば、ミシュランの覆面調査員の実態に関する記事では
評価する調査員側と評価される料理人、レストラン側の難しさや葛藤が書かれていて、
双方の姿勢に恐れ入った。
美味しさという主観的なものをどこまで客観的に評価することができるのかという点に
若干疑問は残りますが、それでもミシュランの覆面調査員の審美眼は
筆舌に尽くしがたいものであることが伝わってくる。

 料理つながりで、フランスのボルドーとトゥールーズを取り上げた記事も興味深い。
日本料理との相違とか伝統と新しいニーズの融合とか・・・そして写真が目においしい。
眺めているだけで幸せな気分になってくるくらいに。

 ジャーナリスト堤未果氏責任編集による、アメリカに焦点を当てた「『貧困大国』の真実」では
食料、医療、教育など人間が生きていく上で欠かせない分野において、貧困層がさらなる最貧困層へと、そして中流層が貧困層へと追いつめられていくメカニズムがよく分かる。
オバマ大統領の劇的な大統領就任から1年・・・現在のアメリカの姿に至るまでの布石はすでに大統領選挙の時から存在していたのかもしれない。

 オバマ大統領の公約の中でも目玉であった、医療改革。
アメリカの医療保険制度の悪評は耳にしていたので、個人的にもこの改革に期待していたのだが・・・随分違った形で、以前の悪い部分は変わらないままの改革になりそうである。
民間企業の既得権益への執着、それによる貧困の連鎖。
これがアメリカ資本主義社会の作りだしたものなら悲しすぎる。

 学生を借金漬けにするという教育システムに関しては、日本との類似性が気になった。
日本でも奨学金の未返還が多いと言われているが、その主な原因はモラルの低下などではなく低所得によるものだと言う。
このような問題の解決には、景気を回復し雇用状況の改善とデフレの脱出が必要条件と言える。
デフレ状況での返還期間の延長や猶予など問題を先送りにするような一時しのぎの解決策では頼りない。
・・・デフレの脱出も難しそうですが。
記事中の、教育の現場で苦しむ学生や教育ローンに苦しむ人々の現状を、オバマ大統領や国会議員らは知っているのかという問いかけが印象的だった。
社会の実情と立法者の感覚のズレは日本でもしばしば感じるので。
一方で、無学であることもまた貧困の連鎖に結び付く。
このような教育と貧困の関係は、教育の意義を根幹から揺るがすような問題であり、
国家にとっても、ひいては人類にとっても重大な損失になりかねない。

 受刑者の更生に関しても、日本とアメリカで類似している点が見られる。
日本ではアメリカのように服役中に金銭的な困難を負わされるようなことはないが
出所後の就職の困難さやそれに由来する経済的困難が見られ、
再犯率の高さは更生の難しさを示している。
ここにも貧困への悪循環が存在しているのである。
 
フードスタンプによって得られる、明日の食料の心配をしなくて良いという「安心感」。
中流階級までもが食料に困るという状況の中で、人々がフードスタンプに見出した「安心感」こそが
今アメリカ社会に求められているのだろう。

 アメリカは超大国である。
その影響力は全世界に波及するといっても過言ではない。
サブプライムローン然り、リーマンショック然り。
そんな超大国がこのように不安定であることに不安になる。
日本が同じ道を辿りつつあると思うとより一層不安になる。
市場の原理をライフラインとも言える食料、医療、教育などの分野に持ち込むことの限界がうかがえる特集だった。
 
 オバマ大統領の選挙資金の出処やアメリカ社会に根付いた意識など、現在の社会の布石はすでに存在していた。
あとはそれに気付いた有権者がどのように行動するか、である。
「『チェンジ』は待つものではなく起こすもの。」
堤氏のこの言葉は、政権交代を経た日本社会にも向けられているように思う。