<ストーリー>
異母兄が奈良で消息を絶った。
二度しか会ったことがない兄の彼女に誘われて、
私は奈良へと兄を捜す旅に出る。
早春の橿原神宮、藤原京跡、今井、明日香…。
旅が進むにつれ、次々と明らかになる事実。
それは真実なのか嘘なのか。
旅と物語の行き着く先は―。
ミステリーというよりはほのかなサスペンスという展開の小説だと思う。
先が読めてしまうことがあるのは否めませんが・・・。
でも、ずぶずぶと水の底(しかも、沼とか濁った感じの水)へと潜っていく感じの文章が心地よく、良いものであれ悪しきものであれ人間の性が垣間見える感じが興味深いなぁ、と思いながら読めました。
奈良は修学旅行で、鹿におせんべいを奪われたという経験のおかげでやや原始的な印象をもっていたのだけど、このお話の中に出てくる奈良は幻想的。
挿入されているお話も幻想的。
タイトルの「まひるの月」は見えそうで見えないものを表しているそうで。
作中では、登場人物それぞれがそれぞれに「あるもの」を追求しています。
私は「まひるの月」は人の心だと思いました。
分かりそうで分からない。
形は円でも、見える部分はいつも異なる。
まったく見えないときもある。でも、確かに存在する。
上手い比喩だなぁと思った。的を射てない部分もあるけど。
愛ゆえに、すべてを知りたいと思う。
何にも知らないのは、知ろうとしなかったからだと思い知る。
生きながらに、愛を手放したいと思う。
ひたすらに自分の愛に従おうと思う。
そんなエゴのような想いが交差して、それぞれの「まひるの月」が空に浮かんだ小説だと思いました。
