ハンガーを生贄に恩返しを待つ。 | ヨシオカハルカの話。

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V6/GLAY/ハロプロ/ヒプマイ/ドラァグ・レースのヲタク。

人に口は出さない、出させない。
私は入間銃兎の女。

4月のある日、洗濯物を半分ほど干した時点でハンガーが足りなくなった。

「えっ?ハンガー減ってない?」

物干し竿に引っ掛けていたハンガーが何故かごっそりなくなっているのだ。

「えっ?風…?風、いや、そんな強風吹いた?」

ベランダでひとり問いかけても答えは返ってこない。

洗濯機の中に残った洗濯物を前にしばし立ち尽くし、仕方がないので物干し竿に直接洗濯物をかけてやり過ごした。

不思議な現象に首を傾げながらも、まあ何かの拍子に落ちたのだろうと納得し、翌日新たに購入したハンガーをまた同じように物干し竿に引っ掛けておいた。

 

数日後、部屋で本を読んでいると「カンッ」だとか「コンッ」だとかいうような窓に何か硬いものがぶつかる音がした。

「石?嫌がらせ…?泥棒だったらどうしよう…」と恐怖を感じながらもゆっくりとカーテンの端から窓の外を覗く。

 

そこには今まさにハンガーをくわえて飛び立とうとしているカラスがいた。

 

どうやら先ほどの音は物干し竿から取る際に勢い余ってハンガーが窓にぶつかった音らしい。

唖然とする私を尻目に新品のハンガーとカラスは大空へと羽ばたいて行った。

 

「カラスの仕業だったの…?」

調べると、3〜5月はカラスが巣作りのため針金ハンガーを盗んでいくことがあるらしい。

なるほどそんなことがあるとは。

 
その日から私とカラスの攻防が始まった。
 
早速対策として使わないハンガーを部屋の中に入れ、持ち帰れないようにした。
ベランダ周辺をうらめしそうに飛び回るカラスを見て、私は部屋の中でほくそ笑んだ。
 
しかし、カラスは賢い。
 
翌日から家の近所を歩くと高確率でカラスからの襲撃に遭うようになった。
頭のギリギリを狙ってフンを落とされるのだ。
上を見ると電線に止まったカラスが私を嘲笑っていた。
 
私はカラスに完全認知された。
 
このままでは近いうち頭にフンを落とされる。
そう危惧した私は和解策を練った。
 
翌日。
生贄のハンガーを捧げることにした。
曲がったり古くなったりしたハンガーをカラスの取りやすい位置に2、3本引っ掛けておくのだ。
これなら新品のハンガーを根こそぎ持って行かれるよりマシである。
 
しばらくするとハンガーは無くなっていた。
私はこの生贄を4回ほど捧げた。
すると外を歩いても襲撃されなくなった。
 
そしてある日を境に生贄が回収されなくなった。
それによりカラスの巣作りが終わったであろうことを知った。
 
そして月日は流れ今に至る。
7月はカラスの幼鳥の巣立ちの季節らしい。
私が生贄に捧げたハンガーで育ったカラスが巣立つのだ。
なんだか少しサウダージを感じている自分がいる。
 
私はカラスに完全認知されている。
そして、カラスは賢い。
 
以上を踏まえてカラスはきっと私に恩返しにくるだろう。
「カンッ」だか「コンッ」だか音を鳴らしてくちばしで窓をノックするその日を私は今日も待っている。