漆器の魅力 ~山中温泉・山中漆器で飲み物を飲む
■漆器の生む食のドラマ
冷たいビールや麦茶、スムージーなどをいただく時の美味しさは、暑い夏の楽しみの一つ。冷蔵庫でグラスをキンキンに冷やすと、また格別だ。
レストランでは、冷たいお料理や飲み物は、器を冷たくして冷たいまま出し、逆に温かいお料理や飲み物は器を温め、アツアツを維持する。お料理の温度は、美味しくいただくための大きな要素となる。だからこそ、作る側は、この点に関して様々な工夫をしている。一流のフレンチでは、ギャルソンがテーブルまでの歩数を計算し、温かいお料理をだせるように考えており、ホールに女性が少ないのも歩幅では男性に比べて不利だからともいわれていた。食べる側は作り手のその様々な心遣を感じると、嬉しいものだ。キレイにいただいて、厨房にお皿を返そうと思う。
お料理の温度と器の関係でいうと、真逆の関係にあるのが漆器だ。漆器のコップで冷たいお茶を飲む。コップを持った手には、ほとんど冷たい温度感はない。そのかわりに木の優しいぬくもりが手に残る。そして、コップを口に運び、唇と喉に冷たいお茶が触れる時の感覚は、ガラス食器では味わえない独特のものがある。
石川県加賀市山中温泉 にある山中漆器の木地師で、人間国宝の川北良造さんが、「器は、ただお料理を入れるものではない。良い漆器は、汁物、煮物、温かいお料理ならば熱を逃がさないように考えられている。木のことを良く知って、素材を選び、木地をつくるべき。」とおっしゃっていた。そのために川北さんは、若い頃に木の勉強をたくさんしたとのことだった。貴重な食べもの、調理をして、もっと美味しく食べたいと願う昔からの人間の願いと、智恵の積み重ねを伝統工芸に感じた。
漆器は、陶磁器に比べ、暖かいお料理が盛られていようと、冷たいお料理が盛られていようと、手に持った時に感じる温度という意味では、ほぼ”無”を演出すると言っていい。しかし、器の中のお料理や飲み物を口すると、その温度が楽しめる。そのドラマに、漆器の魅力があると思った。
温度に関しては”無”を演じて、盛られるお料理の縁の下の力持ちとなる漆器だが、見た目に関しては、華やかさ、木目の美しさなど、お料理を存分に引き立ててくれる。さらには、その滑らかで柔らかい人手に吸いつくような手触りが、食事に向き合う気持ちを高揚させてくれると感じる。
普段、自宅で木の器で飲み物を飲む人はどれくらいいるのだろう
。
まずは、 自宅で、普段使いに、漆器で冷たい飲み物を楽しんみては? 身近に感じる漆器の魅力に、思わずうなってしまうにかも。
薄めのアイス緑茶にペパーミントをいれると清涼感がバツグン。
山中商工会上口会長がオーダーした試作品というコップ。
指がすっぽりはいり、木の手触りを楽しめる。
手が器にすいつくよう・・・
山中温泉「かよう亭」
での食事。
冷たいお料理が漆黒の器の中で際立つ。
朝食のアツアツの卵焼きも。
先輩の木地師が使わなくなったものを譲り受け、
大切に使われている。若手木地師中島さんの工房にて。


