你好!

日本は、東京は、まだ残暑が残っているようですね。
北京では一足早い秋が訪れています。
これが北京なの?という軽井沢級に爽快な秋晴れにびっくりすることもあるくらいです。
北京の秋は短いらしいので、とにかく満喫したいものです。

往復書簡では、いろんな質問が寄せられました。
まだ正式に赴任できて2ヶ月、出張期間含めて4ヶ月の身の上では、実は大した返答ができないというのが本当のところです。
そこで、いままで我が身に起きたいくつかのエピソードを紹介したいと思います。
このエピソードが、今の自分をとりまく環境をもっとも表現しているように思うからです。

赴任してから、とにかく中国のいろんな都市に行ってきた。
もちろん出張。
寧波、成都、上海、蘇州、鄭州、大連、香港、、あとどこだっけという感じで動いてきた。
どこに行っても中国は中国なのだけど、
思い出深いのは、成都で食べた豚の脳みそ。
これを火鍋の中に入れるのだけど、味は白子みたいで美味しい。
しかし原因はわからないけど、この後から猛烈な腹下しにしばらく苦しんだ。
駐在員仲間に言わせると、日本人には食べてよいものと、できればさけた方がよいものとがあるらしく、豚の脳みそはできればやめた方が良かったのではとのこと。
A型肝炎が結構な確率でおきるからだとか。
そんなの行く前に言ってよ・・・。

それから、我が社の中国人のアテンドで鄭州に行くときのこと。
朝、7時過ぎのフライトで北京首都空港で待ち合わせ。
しかし、彼女の姿が見えない。
嫌な予感がしたとき、
電話が鳴った。
「おはようございます。びっくりしないでね。私、今、起きた。多分、全然間に合わないから、先に行ってて」
ちょっと待て。君の日本語は、おそらく、中国に来て一番流暢だと思っているが、今の発言、多分翻訳ミスだよね。だって、オレ、一人で何するの?現地に行って、インタビューしたりするんじゃなかったっけ?中国語、ブーホイシュオ(話せない)なことはあんたが一番知ってるでしょ。
「大丈夫。私が現地に電話して何とかするから。だから、とにかく先に行ってください」
何だかもうドキドキで、とにかく飛行機で鄭州まで行くと、ガオジョンガオジョン(中国読みのオレの名字)言ってるお兄さんに出会った。
身振り手振りで挨拶すると、彼のエスコートで現地まで連れて行ってくれた。
着いてみると、隣町からシンガポールに留学したことがあるというこれまた気の良いあんちゃんが来てくれて、なんとかブロークンなEnglishで業務を凌いだ。
聞いてみると、寝過ごしてしまった例の彼女が、頑張って手配したとのこと。
仕事がうまくいって、ランチなのにみんなで大宴会になった鄭州も忘れがたい。
そして、その大宴会中に到着した、我が社の女性社員が一番歓待されていたのも、これまた、をかし。

中国出張で一番困るのは、日曜日の現場業務が終わって北京に帰ろうとすると、どうしてもフライトが20時とか21時になってしまうこと。
そしてこの国の国内線は、ディレイするのが当たり前というくらい、遅れる。
20時大連発北京行きの飛行機が実際に飛ぶのは24時だったりする。
そうすると、北京に着くのが午前2時とかになる。
そうでなくてもタクシー事情の悪いこの地で、大雨だったりすると、どうにもならない。
今年の夏は、特に雨が多かった。
タクシー待ちに長蛇の列。
こんなのに並んでいたら、帰宅が何時になるかわかりゃしない。
とっとと白タク狙いに行くが、異常なふっかけ。
普段70元で帰れるのに、500元などと言う。
ー冗談じゃない、200元だ、
ーじゃあお前は乗せない、
ーちょっとまて300元ならどうだ、
ーうーん他のお客さんと乗り合わせならいいぞ、
みたいな会話をこれまた身振り手振りで交わして、
気づくと、見も知らない中国人たちがガーガー騒ぐタクシーの中で、
一人、このまま本当に家に帰れるのかと、とってもちっちゃく、不安になりながら白んだ空を眺めていた。もちろん、道を間違えながらも、ちゃんと連れて行ってくれたけどね。

そしてもっとも忘れられないのが、香港出張から帰ってきた日のこと。
北京で残業しておなかがすいたから、同僚たちとご飯をたべることに。
タクシーに乗って、出張鞄をトランクに入れたのだけど、目的地にて降りたとき、一瞬出張帰りだったことを忘れてしまった。
つまり、トランクを開けてと言わなかった。
でもそれはほんの一瞬のこと。
あれ、何かない。
あーっっ!と思ってタクシーに振り向いたときは、もう発車していた。
全速力で北京の夜空を走ったけど、
アタマの中では太陽に吠えろが鳴る余裕もなかったけど、
全然タクシーに追いつかない。
振り切られてしまった。
こういうときに限って、領収書をもらってない。
どうしよう・・・。
奇跡的に、金目のものとか、身分証明書とかは別に携帯していたのだけど、
香港で買った日本の本(これは北京ではとっても貴重)や
ギブソンのギターの弦(北京でどこに売ってるか知らない)など、
ウィークエンドの自分への栄養源として買ってきたものが詰まっていたのだ。
これが紛失するということは、お前にはウィークデイしかない、ということとイコールなのか。
そんなこんなで心も上の空で、持ち去られてしまった鞄のことを考えながらの残業メシ。
同僚たちにもどんよりした空気が漂う中、店のマスターから妙案が。
FM103.9に広告を出してみたら、とのこと。
タクシーの運転手が結構な割合で聞いているとのこと。
ホントにそんなので意味あるのかなあ・・・。

翌日、会社では、中国人スタッフが、今は日本と中国の世情が不安定だから、日本人の荷物とわかると出てこないかもね。でもファーピアオ(发票)もらなわいからいけないのよ・・・などとさらに不安にさせるコメントをちょうだいしつつ、警察に届け出てみるも、もちろん効果なし。
そして、そのFMのことも調べてみたが、16時までの受け付けで、業務都合でその日は行けず。
翌朝行ってみると、結構な人が並んでいる。
必要書類に記入すると、1回の出稿で400元だとか。
えー高くない、タイグイラ(太贵了)!(←こういう時だけ中国語で言うから、交渉がまとまらない典型。それ以外は、一緒に行ってくれた我が社の中国人社員に訳してもらった)
受付のおばちゃんはちょっとムッとしながら、あんたの無くした鞄が400元以下の価値ならそもそも公共の電波を使って広告なんか出さないこと。
そんな風にピシャッと言われると、そりゃそうだな・・と納得。
結局、16:30と20:30の2回出稿することに。
2回で800元、成功報酬で届け出たドライバーに500元という条件で、人生初の広告スポンサーになったのでした。

ソワソワしながら、出稿の時間を待ち構えつつも、タクシー運転手からはノーレス。
まあ、そりゃそうだわな。
そんなFMラジオに出稿したからといって、そのタイミングで運ちゃんが聞いているとは限らないしな。なんとか自分をあきらめさせてから二日後の朝、
なんと運ちゃんらしき人から電話が。
律儀にも、会社まで届けてくれた。
FMラジオの広告効果にびっくりだし、
広告屋のくせに、広告の本来的な意味合いを再発見。
こうやって人助けできるじゃないか。
昔、広告は3回流さないと効果的な到達ができないという3ヒット理論なるものがあったけど、2回でも大丈夫でしたよ、スポンサーさん。
広告効果も!だけど、やっぱり一番は、この件でいろんな北京の人の情けに触れたこと。
みんな真剣に取り合ってくれて、善後策を協議してくれた。
タカがオレの出張鞄ごときなのだが、ありがたい。
そしてその結晶として、運ちゃんがちゃんと届けてくれるという大団円。
この一件で、仕事含めていろいろ苦境に陥っているけど、何とか、この地でやっていけそうな気になった。

みなさん、北京のタクシー事情は、最悪です。
そもそも少ないし、うまくつかまえられても汚いし、運ちゃんずーっとぶすっとしてるし。
でもね、意外に、良い人かもしれません。
ほら、昔の日本でも、男は黙ってサッポロビールだったじゃないですか。
北の男はサービスとか、おべんちゃらとかダメなんじゃないかな。
あと、みんなFMラジオを聞いているようですよ。
だから、タクシー運ちゃんターゲットの商品を扱っているみなさん、例えば安くておいしい餃子屋の旦那、意外にFM広告に効果ありです。
お困りの際は仲介しますので、一言ご連絡を。

でも何より大切なのは、タクシーに乗ったら、必ず領収書をもらいましょう!

再见!




Chizuko Fukuda
http://ameblo.jp/urukat/
↑往復書簡をしている友人が北京勤務となりました。今後の現地レポートが楽しみです。

困りました。書くことがありません。
でも「往復書簡」という名目なので、何か返さないとやりとりが続かないんですよね。
うーん、弱ったなぁ。
今回は質問でもいいですか?

北京で働くって、どんな感じなのでしょう? 
会社に日本人は何人ぐらいいるんですか? 
中国人スタッフは現地では相当なエリートなの? 
日本語は通じる? 
もしかして社内の公用語は英語? 
まさか大事な交渉も中国語でやっているとか? 
その場合でも、もちろん、通訳はつくんだよね? 
海外赴任には言葉の壁が立ちはだかりますが、例えば、スポーツ選手ならそのスポーツができれば、ミュージシャンなら演奏を通じて、料理人なら実際に作り方を見せることで、それなりの成果は出せそうです。
でも、一般企業での仕事の場合、大半の業務が言葉のキャッチボールにより成立しているので、「話せない」「聞き取れない」では、それこそ「お話にならない」のではないでしょうか。メジャーリーグに挑戦中のダルビッシュ選手よりも、ドイツ・ドルトムントで大活躍している香川選手よりも、その国の言語がよく分からないまま、日々の任務を遂行している海外勤務のサラリーマンを私は尊敬します。
どうですか? 
実際、現地語を使いこなせなくても、片言&身振り手振り&筆談等で、何とかなるもんなのでしょうか? 
相手の言っていることが理解できないのと、自分が言いたいことをうまく伝えられないのでは、どっちの方がより辛いですか? 
確かに、言葉が通じないこと以外にもいろいろ苦労はあると思います。
秩序なく一目散に電車に乗り込む人たちに圧倒されたり、猛スピードで突っ込んでくる右折車に轢かれそうになったり、やっと捕まえたタクシーを横取りされたり・・。中国人ならではの「シンプルで自分本位」な行動原理、かなり手強そうですもんね。
でも、言葉という武器を持っていれば、人のよさそうな中国人を捕まえて「もう、あなたたちの国の人って、どうしてそんなに自分本位なの?」と闘う(不満をぶつける)こともできるはず。
場合によっては「すみませんねぇ、なんせ大陸には人が多いので、毎日、置いてきぼりにされないように必死なんです。実は、ここだけの話、中国人もみんな、家に戻るとグッタリしているんですよ。そりゃ、連日あんな戦闘態勢とっていたら疲れますって! だから、中国人の平均寿命ってあまり長くないんですよ。日々を生き抜くために、結果として生き急いでいるんです」(←全部、私の創作です、念の為)とか弁明されて、怒りが同情に変わることもある・・かもしれません。
会話能力さえあれば、異文化が引き起こすストレスも大幅に軽減できそうに思えるのですが、海外生活をサバイブするのに言葉以上に有効な武器ってあるのでしょうか? 
それでは、これからも北京滞在記、楽しみにしています。
どうぞお元気で。
再見!
http://ameblo.jp/urukat/

To Queen,

お詫び

往復書簡でありながら、まったく更新もせず、ごめんなさい。
2月から保育園の卒園用動画アルバムの編集作業に膨大な時間を取られたとか、
4月から北京に転勤になってしまって、夜な夜な開催された送別会に全力投球し過ぎたとか、
中国ではネット環境が安定しない上に、FacebookなどのSNSが禁じられていてまともにはアクセスできないとか、
理由を挙げればキリがない。
この3ヶ月間に我が身に起きた変化は、今まで経験してきた以上の激震だったけれど、
そんなことはクイーンに対して正当化できる理由になどなるはずもない。
自らの怠慢を、まずはお詫びします。

こういう時、「対不起」という言葉を使うのだと、
中国語の入門書にはある。
中国語でごめんなさいのこと。
音は、ドゥイブチ。
女性が発すると何だかかわいらしい語感なのだが、
男性から聞くと、デブちーんと聞こえるこの言葉、
その語源は、「あなたと顔を会わすことができないほど、申し訳なく思う」という意味だとか。
よほどでないと謝らないと言われる中国人からはなかなか聞くことは無いという解説があったが、
北京モーターショーの会場で思いっきり足を踏まれたとき、幸運にも、
「対不起」・「対不起」・「対不起」の3連発に出くわすことができた。
相手は若い男性だったが、デブちーんには聞こえず、なんだかかわいらしい語感だったので、
ちょっとクスっとしてしまい、没有(メイヨウ;何でもないよ)と数少ない知っていた中国語で即答したのを覚えている。
謝るとき、可愛らしく感じられるかどうかはとても大切だ。
「対不起」ドゥイブチは、謝罪時にふさわしい音を持っている。
だからこそ、ごめんなさいを表現する言葉として長く定着してきたのかもしれない。

しかし、この時を除けば確かに「対不起」を耳にするチャンスはなかった。
まだ1ヶ月ほどの滞在なのだから、自分が気づいてないだけかもしれない。
でも、日本に居たときの感覚で生活していると、
「おいおいちょっと待て!」と
言いたくなる瞬間は至る所に転がっている。

例えば、地下鉄で。
乗車ポジションを間違えると一目散に乗り込んでくる人の群れに飲み込まれ、
降りられなくなってしまう。

例えば交差点で信号待ちのとき。
右折の車はいつ何時でも侵入OKなので、
歩行者用の信号が青になっても、猛スピードで突っ込んでくる右折車に面食らうことは日常茶飯事。

例えば、タクシーを捕まえるとき。
やっとの思いで捕まえたタクシーを、
横からさっと割って入ってきた人に取られてしまうことも、一度や二度ではなかった。

中国で生きる人たちの多くは、人の立場を考えるより、まずは自分のやるべきことに忠実である。
そしてそれは時に強引だったりする。
人の目などは気にしない。
中国の人たちの行動原理は、シンプルで自分本位なのだ。
この地では、生き抜くことにタフさが求められる。

そんな中国での生活にびっくりしていたら、
日本のプロ野球界からもサプライズニュースが舞い込んできた。
いろんなびっくりがあるようだが、自分としては、
やはり、日本ハムファイターズの斎藤佑樹の活躍だろう。
既にもう4勝している。

ハーラーダービートップ?
あの、佑ちゃんが?
昨年まで、今や大リーグのエースになりつつあるダルビッシュの陰に隠れ、
高校時代のライバル楽天の田中将大には雲泥の実力差をつけられ、
元甲子園優勝投手という過去の栄光にすがりがちな
ルックス優先の、ひ弱な若者。
彼には過度な期待はしてはならないと軽い失望を感じつつ自らを説得していたのだが、
それがどうだ。
開幕戦で勝利すると、首位に立つチームの原動力になっている。
ダルビッシュが去った後のチームの柱、エースとして自らの立場を転換した。

おそらく、球速はさほどでもないが、
イキの良い球をコーナーギリギリに投げ分け
緩急を利かせながら、打たせて捕ることに専念する。
そんなピッチングなのだろう。
自分がエースだ、自分しか居ないという自分本位な責任感が、
好結果を産んでいる要因と推察する。
シンプルに、自分ができることを追求し、
勝つことにタフであること。
シンプルで自分本位で、タフ。
そう。今の佑ちゃんなら、きっと中国でもしっかり生き抜くに違いない。

異国に住むことは、日本の良さを再認識することだと思っていた。
元々、日本の大和言葉を美しいと感じていたから、
中国で、中国語と格闘することは、きっと、
日本の言葉のすばらしさを再認識することになるだろうと予測していた。
大和の言葉ほどきれいな音の言葉は、他にはおそらく無いだろうと自分本位に考えていた。

例えば、「さよなら」。
オフコースの歌のことではなく、この語感が好きだった。
語源は「左様ならば」…から来ているという説がある。
それではこの辺で失礼します、を略して、「さようなら」。
これに対して、中国語でもっとも一般的なのは、「再見」。
また会おうという意味。
同じ別れの言葉でも、随分意味が違う。
それなら、拙者はこれで失礼する、と自分の行為をもって別れを告げる日本語に対して、
また会おうと次回の再会を約して分かれるのが中国語。
自分本位な「さようなら」に対し、
未来に向けてふたりの関係を結んでいく「再見」。
確かに、「さよなら」の音は美しいが、
「再見」の意味合いにも、ぐっと来るものがある。

さて、中国でこれからどんな関係を結ぶことができるのか、
ちょっとドキドキしながら、
シンプルで自分本位でタフになった、
次の佑ちゃんの吉報を待つことにしよう。

再見!