乳がんのホルモン療法と陰部粘膜(腟や尿道周囲)
との関係性はあまり取り上げられることがありません。
乳がんでホルモン療法を行うと、女性ホルモンの低下状態が継続するため、腟や尿道粘膜の萎縮が起こります。
このため、特にホルモン開始時に膀胱炎で受診される事が多いのはこのためだと思います。
また、ホルモン療法により、腟の萎縮、乾燥が進むと、「婦人科検診が痛い!」「性交痛で!」などの症状を訴える方は少なくありません。
ホルモン療法される方は、より陰部ケアについて知って頂くと良いかと思います。
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乳がんと萎縮性腟炎の関連については、特に乳がん治療に関連するホルモン療法が重要な役割を果たしています。以下に詳細を説明します:
1.ホルモン療法とエストロゲン
乳がんの一部はエストロゲン依存性であり、エストロゲンが乳がん細胞の成長を促進することがあります。そのため、エストロゲンの作用を抑制するホルモン療法が用いられます。この治療には以下のような薬剤が含まれます:
- タモキシフェン
- アロマターゼ阻害薬(例:アナストロゾール、レトロゾール)
### エストロゲンの低下と萎縮性腟炎###
ホルモン療法によってエストロゲンのレベルが低下すると、以下のような影響が生じ得ます。
1. 腟の萎縮: エストロゲンの減少は、腟の粘膜の薄化と乾燥を引き起こし、これが萎縮性腟炎の原因となります。
2. 腟の潤滑の低下: 自然な潤滑が減少し、性交時の痛みや不快感が増加することがあります。
3. 腟のpHバランスの変化: エストロゲンの低下により、マイクロバイオーム(乳酸菌など)に変化が生じます。乳酸菌類の減少は、乳酸の酸性が減少し、腟内の酸性度が変わり、細菌や酵母の感染リスクが増加します。
### 症状
萎縮性腟炎の症状には以下のようなものです:
- 腟の乾燥感
- かゆみや灼熱感
- 性交時の痛み(性交痛)
- 尿意の頻度や緊急性の増加
- 陰部粘膜の萎縮のため、潤いが無くなり、乳酸菌の活性が低下するため、酸性がキープできず、腟が細菌の温床となるため、膀胱炎を繰り返すリスクが増大
### 対策と治療
乳がん治療中の萎縮性腟炎に対する対策にはいくつかの方法があります:
1. **腟保湿剤や潤滑剤**: 腟の乾燥を緩和するために使用されます。
2. **低用量の腟エストロゲン療法**: 一部の方には局所的に使用する低用量のエストロゲンクリーム、錠剤、リングが推奨されることがあります。これにより全身へのエストロゲンの影響を最小限に抑えながら、局所的な症状を緩和します。
3. **ライフスタイルの変更**: 喫煙を控える、水分摂取を増やす、適切な下着を選ぶなど、生活習慣の見直しも有効です。
乳がん治療中に萎縮性腟炎の症状が現れた場合は、医療専門家に相談して適切な治療法を検討することが大事だと思います。
化学療法導入の際は、口腔ケアがルーチン化しておりますし
乳がんのホルモン療法導入時に、
「陰部ケア(フェムケア)指導」
が入ると良いとつくづく思っております^ ^