早期前立腺癌に対するPSA監視療法 | 泌尿器科のブログ

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NCCNガイドライン ver4. 2013

超低リスクとは

・癌ステージ:T1c
・癌悪性度:グリーソンスコア≦6
・PSA値<10 ng/mL
・生検陽性コア<3か所、各コアの癌細胞≦50%
・PSA density < 0.15

超低リスクのうち期待される余命20年以下であれば
PSA監視療法
のみが治療法として記載されています。

PSA監視療法で必要な検査
・6か月に一回PSA検査
・12か月に一回直腸診と前立腺生検


超低リスクのうち期待される余命20年以上なら低リスクと同じ治療

低リスクとは
・癌ステージ:T1-T2a
・癌悪性度:グリーソンスコア 2-6
・PSA値:<10 ng/mL

低リスクの治療法は
期待される余命10年以下であれば
PSA監視療法
のみが治療法として記載されています。

低リスクで
期待される余命10年以上なら
PSA監視療法、放射線治療(IMRT,小線源)、手術

個人的見解
香川大学の筧教授が推進しているPSA監視療法。
NCCNガイドライン通り、超低リスクで期待余命が20年未満の場合に
PSA監視療法を行うことの正当性について色々データが揃ってきている。

スカンジナビアからの報告(NEJM)しかり、PIVOT試験、PRIAS試験しかり。

しかし、今までの報告では前立腺癌の超低リスクでPSA監視療法を行った場合、
数パーセントとりこぼしがある。
すなわち、進行、癌死している。
これは統計的には微々たる問題であり、集団(マス)として考えた場合には無視できる。
(患者の家族としては賛成できない、納得できない考えだが)

さらに、超低リスクで進行してしまうような癌は、発見された段階で根治的治療を行ったとしても
完治できない可能性はあると思う。

しかしながら、「治療したが進行してしまった」場合と「治療しないで進行した」場合とでは
患者側の受けとり方が全くちがってくる。

根治療法後であっても再発のリスクを説明するのと同じように、
PSA監視療法であっても、というか、監視療法であるからなおさら、
後々の進行リスクについて十二分に説明すべきである。

「先生が治療しなくて大丈夫といったからほっておいたら、進行して死んでしまった」
などと言われないように不足の事態について医師は十分に説明すべきである。

また、小線源や手術、IMRTはすべて低侵襲化してきている。
PSA監視療法も年に1回生検が必要であり、無侵襲ではない。

PSA監視療法の適応についてはこれらの点を十分に踏まえて適応すべきだろう。