前立腺癌 免疫療法ってどうなの? | 泌尿器科のブログ

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ゆく河の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず。

プロベンジ(sipuleucel-T)

前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)抗原を標的とする活性化免疫細胞製剤。
PAPと顆粒球マクロファージ・コロニー刺激因子(GM-CSF)とのfusion蛋白であるPA2024と共に患者血液より分離した樹状細胞を培養した後、患者に戻す。

INMPACT試験でプラセボ群21.7ヵ月に対して 25.8ヵ月と予後の改善が報告された。
PSAの変化はない(time to progressionに差がない)ので、患者も医師も効果を直接確認することはできない。

2010年に米国FDAで「無症状またはminimally symptomatic(少し症状がある)再燃前立腺癌」に対して認可を受けている。


PROSTVAC

Phase3試験が進行中。
前立腺特異的抗原(PSA)を標的として、2種類(牛痘と鶏痘)のポックス(水疱瘡)ウイルスを用いて作られたワクチン。
Vaccinia‐PSA-TRICOME(牛痘)とFowlpox‐PSA‐TRICOME(鶏痘)を月1回ペースで順次皮下投与(プライム・ブースト)することにより免疫反応を誘発。
転移性前立腺癌患者125人を登録して実施されたフェーズ2試験では、PROSTVAC群ではプラセボに比べ、生存期間中央値が8.5カ月改善した(P=0.006)



Ipilimumab
Phase3試験(NCT00861614)が進行中。
細胞傷害性Tリンパ球抗原-4(CTLA-4)を標的とする完全ヒト型モノクローナル抗体。
2011年5月にメラノーマに対して米国FDAに承認されている。



プロベンジは米国で使えるが、ドクターフィーを含めると相当高額になるらしい(数万ドル)。
PROSTVAC、Ipilimumabも効果は有望であるが、phase3の結果が待たれる。


現在日本各地で行われているクリニックや一部施設での免疫療法はどうなのだろうか?

しっかりと臨床研究のプロトコールがあればデータが出せて効果と副作用を検証できるため問題ない。
前向き試験である必要もなく、後ろ向き試験でも、単なるデータの集積でも構わない。
ぜひ研究プロトコールを作成し、成績を報告していただきたい。

研究プロトコールもなく、効果副作用の開示もなく、「理論的には効く」「効く人もいる」「副作用が少ない」という理由だけで高額な治療が行われていることはないのだろうか?

患者側からすると「理論的には効果がありそう」「わらをもつかむ思い」「効かなくても仕方がない」「副作用も少ないし、だめ元で」という想いがあるだろうが、医療者側がその点に甘えて、いつまでも成績を発表しないでいるのは問題だろう。

実施している医療者側の医師はどのような思いで治療を続けているのか?
まさか金儲けの道具にしているとは思えないが、もし治療成績の開示もなく「高尚な治療を行っている」と思っていらっしゃるのなら大きな勘違いであり、是非しっかりとしたプロトコールに基づいて、どの査読付き論文に出しても恥ずかしくないデータを報告し、免疫療法をもっと確立した治療となるように尽力していただきたい。

癌患者を家族にもつものとして、切に願います。