画像検査
骨盤臓器脱という病気は骨盤内の臓器が腟から出てくる病気なので、何がどの程度下がって脱出しているのかを知っておく必要があります。そのために種々の画像検査を行って、できるだけ多くの情報を基に手術を行ったほうがより安全、確実な手術が可能になります。
(1)超音波検査 体に負担をかけずに行える検査で、会陰部からコンベックスという形のプローブを用いて行ったり、腟の中に経膣プローブを入れて行ったりします。
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(2)鎖膀胱造影検査 尿道から細い金属製のチェーンを入れて、造影剤を用いて膀胱の形と尿道の位置、動きなどを調べる検査です。膀胱瘤の程度が良くわかります(図参照)。
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(3)MRI検査 核磁気共鳴という原理を用いた検査で、骨盤内臓器の形や質、位置だけでなく、骨盤底の筋肉の状態もわかります。シネMRIとして骨盤内臓器の下垂の動きをとらえることもできます。

 膀胱機能検査
 骨盤臓器脱の中で最も多いのが膀胱が下がる膀胱瘤ですが、膀胱が下がると尿道の向きが変わったり、圧迫されたりして、尿を排出するのが妨げられルヨウになります。そうすると膀胱が頑張って高い圧で押し出そうとするのです(高圧排尿)。長期間そのような状態が続くと膀胱の機能が障害され、残尿が残るようになります。長期に排尿障害が続くと腎臓の機能にも影響してきます。
 TVM手術の前に膀胱の機能をチェックしておくことで、手術後の排尿状態がある程度は予測できます。
 膀胱の機能としては、膀胱にどれだけ尿を貯められるかという蓄尿機能と、膀胱に貯まった尿を排出できるかという排尿機能があります。
(1)ウロフローメトリー(尿流量検査):200ml以上の尿が貯まった状態で検査装置に排尿してもらうと平均尿流率(一秒間に排出される尿量ccの平均値)と最大尿流量(一秒間に排出される尿量ccの最大値)がグラフ化され計算されて数値化されます。超音波ではかる残尿量と組み合わせるとおおよその膀胱機能が推定できます。
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(2) ウロダイナミックス検査(膀胱水力学検査):

蓄尿相:膀胱に圧を測るセンサ-と水を注入する細いカテーテル(チューブ)を挿入し、膀胱内の圧をモニターしながら、少しずつ(一分間に50cc程度)生理的食塩水を注入して行く。膀胱にどれだけの液が入ると最初の尿意(尿を出したい欲求)があるか(初期尿意)、どこまで我慢して液を貯めることができるか(最大尿意)を調べます。これを蓄尿相の検査と言います。
蓄尿相で膀胱の収縮が観測されることがあり無抑制収縮と呼び、排尿筋過活動を暗示します。

排尿相:膀胱が貯まった尿を排出するときには蓄尿相では尿がもれないように尿道を締めている括約筋が緩みます。それと同時に膀胱を収縮させる排尿筋が働いて尿を押し出します。この2つの作用が協調して行われることでスムースに尿が排出されるのです。尿の流出路に狭い所があると排尿時に膀胱の圧が高くなります。膀胱の排尿筋の機能が悪くても尿はスムースに排尿できません。
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 膀胱瘤などで膀胱が下がっていると尿の排出路に狭い所できるので尿が出にくいのです。TVM手術で狭い所が無くなって多くの症例で尿がスムースに出るようになります。
 それでもTVM手術後に排尿がうまく行かず残尿が残ることがありますが、多くはもともと膀胱の排尿筋の働きが悪いことが多いのです。