2022年12月31日です。

今年はWEBでの講演会や学会発表、依頼原稿や論文など間質性膀胱炎に関するアウトプットをたくさんした1年でした。

 

なので今年の締めくくりとして、私が今年書いた雑誌(依頼原稿)と論文をまとめます。

 

①間質性膀胱炎と膀胱痛症候群の定義と診断の違い

臨床泌尿器科 第76巻 第3号 3月発行

この原稿にはポイントとして

・間質性膀胱炎・膀胱痛症候群(IC/BPS)とは「ICまたはBPSと呼ばれている状態の総称」であり保険病名の「間質性膀胱炎」と同義になる。

・間質性膀胱炎(ハンナ型)とBPSでは症状は似ているが病態が異なるため、膀胱鏡による病型分類が重要である。

ということを書きました。

 

定義が複雑で分かりにくいのは、もともとアメリカを中心とした国々がIC/BPSという用語を用いて論文や研究を行っているので、日本もこれに合わせざるを得ないためだと思います。欧米に合わせないと病気の原因解明も新しい治療薬も開発できないからです。

 

定義がややこしいことは患者さんや治療する医師(泌尿器科医)の混乱の原因になっています。

例えば、自分は間質性膀胱炎だと認識しているハンナ病変がない「膀胱痛症候群」の患者さんが、間質性膀胱炎の診療を引き受けると明言している病院に行ったときに、医師から「あなたは間質性膀胱炎ではない」と言われてしまい追い返されてしまうケースの原因かもしれません。

 

この原稿(記事)には定義について詳しくまとめました。

 

② 間質性膀胱炎ー新たな展開

クリニックでの診療

排尿障害プラクティス Vol.30 No.1 2022 (6月発行)

これは泌尿器科クリニックにおける間質性膀胱炎・膀胱痛症候群の現状と各地域における病診連携についてまとめました。

これも雑誌の特集記事です。

間質性膀胱炎・膀胱痛症候群の診断においては膀胱鏡が重要であることを強調しました。患者さんが診断と治療を求めて病院を転々としないで済むためには知識の共有と保険制度の改善など課題がまだ残っている、という内容です。

 

③ 一診療所におけるハンナ型間質性膀胱炎に対するジメチルスルホキシド(ジムソ®)膀胱内注入療法の初期経験

日本泌尿器科学会雑誌 第113巻 第4号

これがもっとも苦労した論文です。

正式な論文なので二人の査読(論文の内容をチェックするレフリー)の先生から厳しい指摘をいくつも受け、必死に修正しながら書き上げた論文です。

患者さんの声の中に「ジムソの効果が知りたい」という声が多かったことや泌尿器科医の中には「ジムソは使ったことが無いから」という理由で治療を断る医師がいたので絶対に必要だと思い書きました。

7例の初期経験でしたが、ほぼ全例が痛みの改善を認めたこと、

もともと膀胱容量が少ない患者さんは頻尿の改善が乏しかったこと、治療前後の膀胱鏡所見で明らかにハンナ病変が消失もしくは薄くなることなどを報告しました。

治療効果が良かったのは、対象とした患者さんが全員、明らかなハンナ病変を有する典型的な間質性膀胱炎(ハンナ型)の患者さんだったことだと考えています。

たぶん1年経過したらネットで自由に閲覧できるようになると思います。

 

そして最後が、

④ ハンナ型間質性膀胱炎 診断Atlas

企画・発行:杏林製薬株式会社

編集・制作:メディカルレビュー社

これは泌尿器科医へ製薬メーカーが配布した非売品です。

タイトル通り、ハンナ型間質性膀胱炎の膀胱鏡所見のカラー写真集です。

ハンナ病変の診断が慣れていない泌尿器科医では難しいという声に対して作られた膀胱鏡所見の写真集です。

メインは京都の上田朋宏先生が診断したハンナ病変の写真です。

私はハンナ病変と見間違えたらいけない「上皮内癌」(膀胱がんの一種)の写真を提供し、解説文を書きました。

 

以上が今年の仕事です。

他にも学会発表(日本排尿機能学会、西日本泌尿器科学会)

WEB講演(九州IC研究会、熊本、大分、岡山)と全力で行った1年でした。

 

来年が締め切りの記事を正月休みに完成させながら、1月の日本間質性膀胱炎研究会での一般演題の準備をしています。

来年の日本間質性膀胱炎研究会では、このブログを通して集めた患者さんのアンケート結果で排尿機能学会では言えなかったことを発表する予定です。

 

少しでも患者さんの診断、治療に貢献できるように微力ながら来年も頑張りたいと思います。