高級ブランドやファーストフードが建ち並んだ
アーケードを抜けて広場に出ると・・・・
そこには、天まで届きそうな白いドゥオーモの佳景
600年の歳月が流れる大聖堂
その大きさに圧倒され思わず息を呑む・・・
YH「・・・でっかい・・・・」
CM「写真で見るのと・・・・実物は迫力が違いますね」
YH「うん・・・」
飛行機で広げたガイドブックに載っていた写真と
まるで印象が違う・・・・
淡いピンクを帯びた白いドゥオーモ
見事な彫刻や大理石の色の美しさに足を止め
ふたりで並んで時間を忘れた様に見上げた。
CM「塔の細工がまるでレースみたいだ」
YH「天辺まで昇れるのかな・・・?」
尖塔の天辺に飾られた聖人をヒョンが指差す
「屋上まで上がれるらしいぞ~」
僕等のすれ違いざまにスタッフが答える
YH「へぇ~昇れるんだ」
「ああ、今エレベーターのチケット買ってくるから」
YH「エレベーター?なんだ・・・階段じゃないの?」
「階段で昇ったらオレが死んじまう」
撮影機材を肩に担いだスタッフがしかめっ面の
表情になるからふたりで見合って笑った。
団体観光客がここを移動した後らしく、
屋上に上がったら人はまばら
林立した聖人の塔を見上げながら石のアーチをくぐる
聴こえるのは僕等の足音とシャッター音
時折カメラマンが教えてくれる、
このドゥオーモの歴史に耳を傾けて
尖塔の数が135本あること・・・・
一番高い塔の上にマリア像があると教えられた。
ここで欲しい「画」が撮れていたけれど、どうせなら
一番上の塔まで行こうとヒョンが言うから
呆れ顏のスタッフ達を置いて
2人だけで階段を昇る事にした。
夏の日にスーツで身を包んだ僕には
正直、きつい苦行でしかなかったけれど・・・・
駆け上がるヒョンの背中が楽しそうだから
額から流れる汗をぬぐいながら追いかけた。
YH「ついたーーーっ!!!」
青空に両手を突き上げて叫ぶと、
ヒョンが満面の笑みで僕に振り向く
YH「気持ちいい~っ」
傾斜になった屋根の上を風を受けながら走る
CM「思ったよりも高い・・・・」
YH「みんなも昇ったら良かったのになぁ~」
CM「確かに・・・・眺めがいい」
YH「あっ・・」
ちいさく声をあげたヒョンの視線の先には
「マドンニーナ」と呼ばれる黄金の聖母マリア像
太陽を浴びたその像がキラキラと輝くその美しさに
信仰心の薄い僕でも感動して拝みたくなる・・・
CM「素晴らしい像ですね・・・」
YH「・・・うん」
ヒョンはマリア像を乗せた主尖塔を見つめ
胸の前で小さく手を組むと瞼を閉じて祈り始めた。
・・・・・いつもならヒョンが祈り終わるのを待つんだけれど
うつむいて静かに祈る姿があまりに綺麗で
祈るヒョンの身体を僕の腕の中に包み込んだ。
「チャンミン」と呼ばれる声に、2人で振り向いた。
そこ居たのはショルダータイプの鞄にメイク用品を
いっぱいに詰め込んでいたユミさんの姿
チャンミンへ降り注ぐ日差しを遮る様に立つと、
ユミさんは額に吹き出た汗をタオルでそっと押さえた。
瞼を伏せたチャンミンが小さく「冷たい」と呟く。
「冷たすぎた?」
CM「あ、いえ・・・」
「背中に汗シミが出てる・・・暑いわよね」
気持ちよさそうに息を吐き出したチャンミンに
ユミさんの口元が安心した様に緩んだ。
「首筋にも当てて冷やした方が良いわね」
CM「・・・・ありがとうございます」
こんなのは・・・撮影現場で見かける
ごく自然な行動な筈なのに
ユミさんの触れる指と・・・・
チャンミンへと向ける視線を
・・・・追ってしまう自分が居る。
「ユノ」
とスタッフに肩を叩かれ、
オレは慌てて2人から視線を外した
「この後の動きなんだけど、場所を広場に移動して」
YH「えっ?・・・あ、はい」
・・・・仕事中だ、しっかりと集中しなきゃ・・・・・
そう自分自身に言い聞かせ、
2人を見ない様にチャンミンから背を向ける。
つらつらと続けられるスタッフの説明の言葉も
街を行き交う人々の話し声も。
・・・・・オレの耳にまるで届かない
聴こえるのはユミさんが話しかける言葉に
相槌をするチャンミンの声だけ。
オレは後ろを振り向くことも出来ずに、
石畳みの階段から腰を上げた。




