男らしい顔をしていても一応女の子のうり子に早くも発情期が訪れた。甘い声で鳴き、お尻を高く持ち上げるポーズを頻繁にするようになり、外へ出たいという欲求もMAXだった。
わたしと母は、うり子は絶対室内飼いで育てると決めていたので、もちろん外に出して、ましてやオス猫と交尾などさせるわけにはいかない。
これは人間の身勝手であって、賛否両論あることはわかっているが、我が家はうり子に去勢手術をする予定にしていた。交尾ができないのに発情期がくるのが可哀想だからだ。獣医さんと相談して、だいたいの時期を話し合っていたのだが、思ったより早くうり子の発情期が来てしまった。
そして事件は起こった。
その日わたしは友だちと花金を謳歌して、夜の10過ぎに帰宅した。時期は6月頃で雨の降る夜だった。家にはいり、「うり子は~?」と両親に所在を確認すると知らないと言う。部屋で寝ているかなと思って自室に行ってみると、なんとわたしの部屋の窓が開いており、網戸が破られ明らかにうり子が脱走したことを物語っていた!
そう言えば家の玄関前で狸みたいな動物が横切ったのだが、イタチか何かだと勝手に思っていた。
あれはうり子やったんや!!!
確信したわたしは、半狂乱になって雨の中を傘もささずに飛び出した。もちろん両親も飛び出して、何度もうり子の名前を呼んで探したけれど、暗い雨の夜のこと、全く居場所がわからない。
もし、大通りに出ていたりしたら?
オス猫につかまっていたら?
遠くへ行って帰り道がわからなくなっていたら?
いろんな想像が頭をよぎり、泣きながらうり子をほぼ一晩中探し回った。
そして夜が開け始めた頃、少し明るくなってくると、家のうらの茂みから鳴き声がすると母が気づいた。わたしたちはうり子の好きな、ネズミのオモチャやオヤツやご飯を持って忍び寄り、うり子を呼んでみた。
すると、雨に濡れてすっかり捨て猫のようにささくれ立ったうり子がそっと茂みから顔を出し、オヤツにつられて近づいてきた。しかしちょっとでもこっちが動こうものならすぐにまた逃げてしまうような警戒心の強さで、この頃まだ飼い始めて5ヶ月であったため、うり子の信頼を完全に得られていなかったのかもしれない。とにかくお腹が空いているに違いないと思い、大好きなオヤツのパッケージをカサカサ鳴らしてギリギリ近くまで待ち、ひと思いに捕獲!
もちろん驚いたうり子に顔をや手を引っ掻き回されたが、痛いとかそんなこと言ってられない。兎に角抱きかかえたまま家の中まで猛ダッシュ!玄関も窓も全て閉まっていることを確認してから、やっとうり子を解放した。
このうり子脱走事件は、いま思い出してもヒヤヒヤするほど恐ろしい。あの時、雨が降っていたのでうり子はあまり行動できなかったのと、雌猫は案外遠くへは行かないことと、雨なので他の猫、特にオス猫が徘徊していなかったために、妊娠は避けられたことが幸運であった。
もちろんびしょ濡れのうり子をお風呂に入れ、すぐに獣医さんに診てもらったが外傷もないし、その後すぐに行った去勢手術でも、妊娠はしていなかったことが判明した。
動物なので、本能的に行動してしまうから仕方がないのだが、こんな思いはもう二度としたくないと、我が家ではうり子の脱走対策に万全の体制を取っている。
最近は外を眺めるだけで、外に出たい欲求はないらしいが、油断は禁物だ。
あの日は家族みんな一晩中眠れなかったため、後処理が済んだ午後には爆睡タイムであった。もちろんうり子も、人の気も知らないて呑気に昼寝をしていたのだった。
